- 中山七里さんの小説『アポロンの嘲笑』あらすじと感想
- 守りたいもの
- 原発とタイトルの意味
- 刑事の願い
少しだけネタバレあります。
壮絶で人情あふれる人間ドラマ。
中山七里さんの小説『アポロンの嘲笑』感想です。この物語の背景には 3.11の東日本大震災が描かれています。ドキュメンタリーを見ているかのようでした。
『アポロンの嘲笑』あらすじ
彼はなぜ逃げたのか?
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
東日本大震災から5日後、殺人事件がおきた。被疑者の加瀬邦彦は余震の混乱に乗じて逃げ出す。彼にはある目的があったのだ―。
『アポロンの嘲笑』感想
自然災害の前では人は無力。リアルに描かれていて やりきれなさで胸がいっぱいになりました。壮絶で人情あふれる人間ドラマがあったんです。
守りたいもの

目指すのは福島原発。
親友の純一を刺してしまった加瀬邦彦は 警察の護送中に逃亡します。逃げたことには理由がありました。
大切な人を守るために。
邦彦は大きな使命を抱えていたのです。その理由を刑事が追っていくのですが、邦彦の揺るがない決意があり感動を覚えました。
飢餓や寒さに耐え、何度も死にかけながら危機を脱していきます。尋常じゃない人間の生命力を感じ圧倒されました。
胸が熱くなります。でも最後は やるせなさが残るラストでした。切ないです。
原発とタイトルの意味
東日本大震災と結びつけて考えるもうひとつの重大な要素。福島原発が絡んできます。
必要不可欠だけど身近に潜む恐怖を感じました。つい最近も原発テロをめぐる小説、東野圭吾さんの『天空の蜂』を読みました。
『アポロンの嘲笑』は 原発作業員の実態や理不尽さが細かに描かれています。殺された純一や、邦彦もその作業員でした。危険を伴いながら働く様子に恐怖を感じます。
放射能と隣り合わせということ。
生活に欠かせないものになっている原発ですが、蓋を開けると誰かが危険な任務をしているんですよね。便利なものは誰かの犠牲の上で成り立っている。
タイトルになっている「アポロン」というのは、ギリシャ神話に出てくる神々の一人のことです。
原子力を手に入れてしまった哀れな人間の行く末を太陽神が見下ろしている。だから『アポロンの嘲笑』。
これから原発とどう向き合っていくか、アポロンは今も空から見下ろしているのかもしれません。
刑事の願い
仁科という1人の刑事が邦彦を追っていきます。震災で息子が行方不明になり、犯人を追う中で言った本音にポロっときました。
もう、人が死ぬのを見たくない
人間味あふれる仁科刑事。ホロリと言った本音に切なさと震災の悲惨さが伺えました。
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