生きるために・・・。
薬丸岳さん『神の子』(下) 感想です。なかなか読むのをやめられず、一気に読んでしまいました。けっこうなボリュームがありましたが、人物やひとつひとつの物事が丁寧に深く描かれていました。
前回のレビューはこちら。
『神の子』下巻 あらすじ
IQ161の少年は救われるのか―
過酷な人生を送ってきた町田は大学へ通いながら、会社の設立を手伝う。・・・でも事件の関係者たちは、彼を放っておいてはくれなかった。
『神の子』感想
上巻を読み終わった時に一番気がかりだったのは町田の心でした。
変わりゆく心

IQ161以上の主人公は過酷な人生を送ってきました。戸籍がないので義務教育も受けずに本の知識を頼りにしてきた町田。
周りの人に心を開かず 何が本音なのか分からず終いでした。でも行動などに人を思いやる気持ちが見え隠れしていて・・・。
主人公が周りの人に影響されて、少しずつ変わっていく様子に心が温まりました。
謎の組織
もう一つの気がかり、闇の組織。
少年院の教官だった内藤は、当時 町田の担当教官でした。その時に不可解なことが起こり、闇の組織について調べ始めます。徐々に明らかになる組織の全貌には背筋がヒヤリとしました。
室井は何者なのか。町田の周りに次々と起こる不幸は彼の仕業なのか。
上巻ではその組織を抜け出そうとする雨宮がいて、気になる終わり方をしていました。雨宮がこれからどうなっていくのか。
大切な仲間
もうひとりじゃない。
少年院を出てから町田の周りには彼を案ずる人たちが集まってきます。教官をしていた内藤、町田を引き取ってくれた悦子、そして楓やSTNの仲間たち。
最初はなかなか気の合わなかった町田と為井ですが、徐々に打ち解けていきました。
じわりと涙が浮かびました。信頼関係があって、お互いを思いやる気持ちが温かい。
『神の子』救いのラスト
『神の子』には多くの感情が描かれています。
優しさや悲しさ、怒り、喜び・・・。今回もたくさん感情移入しちゃいました。薬丸さんの本は心に響く。孤独感や絶望を感じたりもしましたが、最後には救いがあってホッとします。良いラストでした。

