学園・ライトノベル

『消失グラデーション』長沢樹【あらすじと感想】揺れ動く心と驚きの結末

先入観に惑わされるな!

長沢樹さん『消失グラデーション』
騙された感が半端ない小説。先入観って恐ろしいですね。

『消失グラデーション』あらすじ

第31回横溝正史ミステリ大賞受賞作

『消失グラデーション』
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク

【あらすじ】
椎名康の目の前から姿を消した少女。彼女は学校の屋上から転落したはずだった・・・。

『消失グラデーション』感想

・・・騙されました。正直、物語になかなか入り込めず読むのに時間がかかってしまいました。でもラストに受ける衝撃は半端ない。

面白かったか?と問われると、ウーンと唸ってしまいます。それよりも隠し方が巧妙で凄い。

先入観の恐ろしさ

最後まで読んでの感想は、先入観って恐ろしい・・・でした。

この小説を評価してしる北村薫さんも「先入観なしにページをめくってほしい」と書いています。これからこの本を読まれる方は、ぜひそうしてほしいです。騙されないためのキーワードです。

なかなか物語に溶け込めなかったのですが、ラストにわかる事実には唖然としました。全くもって思いもよらないことに驚きます。

途中まではなんだか読んでいてイマイチ感がありましたが、それが全部吹き飛んでしまいました。同時にこの小説の深みが一気に見えてきます。それは、タイトルの「グラデーション」の部分にこそあるのではと思います。

成長過程の少年少女

物語の舞台は高校です。

主人公、康を含む登場人物たちはバスケ部員がほとんど。屋上から転落して「消失」する網川緑もバスケ部員です。

部活のこと、友達、恋愛・・・。悩みはつきません。まさに青春。

自分の高校時代のことにも思いがいきました。まだまだ子供なのに、精一杯、背伸びをしていたような気がします。楽しかったけど。

子供でも大人でもない、ある意味「グラデーション」の部分。

目指す色はあってもその中間に漂っている。成長段階です。あるいは何色か定まらない時期。成長過程の少年少女を描いていて、そこに重きを置いているような感じを受けました。

自分の頑張りによっては何にでもなり得る可能性を感じさせてくれます。「グラデーション」部分の深みが描かれていることに気づいた時、この物語は奥が深いかもと思いました。

青春ミステリー

悩める個性的な登場人物たち

暴走しているかのように見える主人公の椎名康。思っていることと真逆の行動を取ってしまう。自分をコントロールできないことも この年齢の頃にはよくあることです。

リストカット、コンプレックス・・・。
彼らは様々な悩みを抱えて、それでも必死に生きています。痛々しくもあり、時には道を誤るけれど心が動かされました。様々なものが組み合わさって、成長過程で感じる歪みや揺れ動く心がリアルに伝わってくる。そんな危うい感じにヒヤリとします。

この物語に絡んでくる性への悩み。ふと以前読んだ帚木蓬生さんの『インターセックス』が思い浮かびました。

こう書くと少しネタバレになってしまうかもしれませんが、その要素にも色の定まりがない「グラデーション」を感じます。「消失」事件が解けたとき明かされる巧妙な作者の意図。思わずもう一度読み返したくなりました。

ただミステリー感には少し欠けていたかな・・・。

「消失」の部分です。
読み始めに物語に入り込めなかったのも最後まで読むと納得はするのですが、もう少しその辺りに深みが欲しいところです。それでも巧妙だったのは事実で、思いがけない展開の青春ミステリーでした。

ABOUT ME
ひだまりさん。
ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

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