- 安東能明さんの小説『撃てない警官』あらすじと感想
- 出世を狙うエリート警察官・柴崎
- 変わりゆく心
- 「随監」の感想
- 謎が残る結末
少しだけネタバレあります。
出世を狙うエリート警察官
安東能明さんの小説『撃てない警官』感想文です。短編集ですが、それぞれがリンクしていて全部繋がっている印象を受けました。
もくじ
『撃てない警官』あらすじ&目次
日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録。
総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録。
- 撃てない警官
- 孤独の帯
- 第3室12号の囁き
- 片識
- 内通者
- 随監
- 抱かれぬ子
『撃てない警官』ネタバレ感想文
7編のうち「随監」は 日本推理作家協会賞受賞作品。
面白かったです。警察小説ですが、今まで読んできたものとは趣が違いました。
出世を狙うエリート警察官・柴崎

警察小説と言えば、今野敏さん『隠蔽捜査』や、佐々木譲さん『笑う警官』などが思い浮かびます。事件を解決するために奔走するお話で、ベテランの刑事さんが出てきますよね。
『撃てない警官』の主人公のエリート警部・柴崎の頭にあるのは第1に「出世」でした。
内輪のドロドロを描いたものと言いたくなる小説。部下が拳銃自殺して、主人公が責任を取らされ左遷される・・・。
いったい誰が? 何のために自分を陥れたのか?
柴崎は疑いを持ちます。割と早い段階で1人の男に到達するんですよね。柴崎の上司である中田課長でした。
柴崎の変わりゆく心と様々な事件
読みどころ
主人公が事件の捜査をしていくうちに変化していく心が面白い。
でも出世は諦めていません。事件慣れしていく柴崎の成長を感じました。助川という良い (?) 上司に恵まれ、次々と事件を解決に導きます。
最初は不慣れな捜査でしたが、読み進めるとその進展にドキドキしました。
綾瀬署では様々な事件が沸き起こります。
- 極秘の警備計画書が盗まれ発覚する留置担当官の便宜供与 (「第312号の囁き」より)
- 警察官のストーカー!? (「片識」より)
- 中田課長の裏金疑惑!! (「内通者」より)
- 被害届の隠匿!? (「随監」より)
- 新生児の行方不明事件。その裏には・・・ (「抱かれぬ子」より)
淡々とお話は進んでいくのですが、以外な人物が関わっていたりと次第に引き込まれました。1番好きなお話は、日本推理作家協会賞受賞作「随監」です。
「随監」の感想|柴崎と広松刑事

「随監」というのは 随時監察の略です。方面本部から抜き打ちの監察が入りました。そこで明らかになる不正・・・。
本書に書かれている「タレ」というのは被害届のこと。傷害の被害届が放置されていました。
「随監」では1人の警官が登場します。広松巡査部長。過去の事件により警察組織に嫌気がさしてしまった彼。でも地域住民から愛されていて組織に染まらない警察官でした。
広松に被害届隠匿の容疑が掛かってしまいます。
彼はなぜ隠匿したのか?
そこには 第一に地域住民のことを考える広松ならではの理由があったのです。・・・間違いを犯しているけど好感を持ちました。
柴崎に向けた最後の言葉には悲しさが感じられました。ろくでもない組織・・・。それでも警察官をやっている広松は 出世なんて考えていません。彼の登場により物語により深みが増しました。
柴崎は出世を諦めてはいません。それぞれの生き方を見せつけられたようなラストでした。
『撃てない警官』謎が残る結末
最後の話「抱かれぬ子」で幕を閉じます。でも 謎は解明されないまま終わってしまいました。この本には続編があるようなんですが、そっちで解決されるのかな。
柴崎にとって ある重要な人物が事件に絡んでくるところは面白かったです。
田辺誠一さん主演でドラマ化
本の主人公・柴崎令司がどうも好きになれませんでした・・・。内容は良かったのですが。
田辺誠一さん主演でドラマ化されました。田辺さんは素敵です。



他にもあります
