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『王国の旗』(箱庭図書館) 乙一 /【感想】子供たちの王国

僕たちの王国にようこそ

乙一さん『箱庭図書館』
『箱庭図書館』というタイトルに惹かれて手にとりました。6つからなる短編集です。集英社の企画「オツイチ小説再生工場」から生まれたようです。読者の方のボツ原稿を乙一さんがリメイクして作られた物語でした。面白い企画ですね!

小説の舞台は文善寺町です。

物語を紡ぐ町。そこでは様々な出来事が起こります。その中から2つに絞って感想を書きたいと思います。長くなりそうなので2回に分けます。まず今日は 「王国の旗」 のレビューです。

『王国の旗』あらすじ

子供たちの王国

『箱庭図書館』
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク

【あらすじ】
車のトランクに忍び込んで昼寝をしていた小野早苗。気がつくと夜になり、知らない場所にいた。そこで出会ったミツ少年に連れていかれた廃墟。真夜中にも関わらず。そこにはたくさんの子供たちがいて・・・。

『箱庭図書館』目次&あらすじ
  • 「小説家のつくり方」・・・少年が小説家になった理由。
  • 「コンビニ日和!」・・・コンビニ強盗との奇妙な共同作業。
  • 「青春絶縁体」・・・ふたりぼっちの文芸部員の青くてイタいやりとり。
  • 「ワンダーランド」・・・謎の鍵にあう鍵穴をさがす冒険。
  • 「王国の旗」・・・ふと迷いこんだ子どもたちだけの夜の王国。
  • 「ホワイト・ステップ」・・・雪の上の靴跡からはじまる不思議な出会い。

「王国の旗」感想

主人公が子供の王国に迷いこむ不思議なお話。独自の世界観が好きです。

心の迷い

主人公の早苗は、ちょっぴり変わった女の子。
車のトランクで昼寝って・・・。彼女には橘敦也という彼氏がいました。でも・・・。

実は、彼のことが全く好きではなかった・・・。

好きではなくても一緒にいるうちに好きになるパターンもありますが、彼女はそうはならなかったようです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
決断するのが怖くて逃げている早苗。嫌なことは先延ばしにするのは私も一緒かも。

そんな彼女ががある場所に迷いこむ。子供たちだけの王国でした。

夢の王国

彼女が迷いこんだ 「子供たちだけの王国」 。ミツ少年に連れていかれた廃墟のボウリング場で、不思議な光景を目にします。

そこにいたのは50人ほどの子供たち。大人は一人もいません。それぞれが好きなことをして過ごしています。まさに夢の王国です。子供には大人には分からない自分たちだけの世界があるのでしょうね。

「王国」 は、自分の居場所が分からなくなった子供たちの拠り所でした。

現実逃避という言葉が思い浮かびました。現実は思い通りにいかなくて辛いから、架空の世界に逃げこむ。でも子供にとっては生きていくためには必要なことなのかな。

ミツ少年は早苗に「王国の人間になってくれるの?」と問いかけます。早苗はどうするのでしょうか・・・?

夢と現実

この物語で描かれているのは、夢と現実です。

早苗にとって子どもの王国が夢で彼氏が現実でしょうか。夢の世界に迷いこんだ早苗はその後、彼氏に別れを告げます。そこでの不思議な体験により彼女の心境は変わっていったのです。

クレヨンで塗りつぶされた黄色の王冠。それが描かれた旗は、夢の王国が実在するという証です。心に迷いができたとき決断できずにいると、もしかしたら子どもの王国に迷いこむかもしれません。・・・ご用心を!!

本を愛する山里潮音

『箱庭図書館』はそれぞれが独立している物語ですが、ある登場人物がリンクしているんです。山里潮音 (しおね) です。

「王国の旗」にもちょこっと登場します。一番最初の「小説家のつくり方」がプロローグ的な一話となっています。

この潮音というキャラがちょっと変わっていて面白いんですよね。いったん本を読み始めると、続きが気になってやめられない。バスの中で降りる場所が近づいてきてもやめられず、終着駅までいってしまったり。雪の降る中、ベンチでずーっと本を読んでいたり・・・。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
これほど本の世界に浸れるのは、ある意味羨ましい。

少し変わっているけれど好感の持てるキャラでした。彼女がそれぞれのストーリーに登場します。どこで登場するのかと、一話一話ワクワクしながら読む楽しみがありました。

こちらもどうぞ。同じく『箱庭図書館』より 「ホワイト・ステップ」 のレビューです。

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