ミステリー・サスペンス

『ラストナイト』薬丸岳【あらすじと感想】執念の復讐劇

彼が犯した最後の『罪』とは?

薬丸岳さん『ラストナイト』
・・・泣けました。彼の本を読むのは『Aではない君と』以来です。薬丸さんと言えば少年法など、わりと重めのテーマを扱った作品が上手い作家さんです。今回は今までとは違った印象でした。言うなれば復讐劇です。

少しだけネタバレあります。

『ラストナイト』あらすじ

魂を震わす衝撃のミステリー

『ラストナイト』
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【あらすじ】
菊池正弘が経営する「菊屋」に、片桐達夫がやってきた。彼は正弘の古くからの友人で、刑務所を出所したばかりだった・・・。

『ラストナイト』感想

やはり薬丸さんの本にハズレはないですね。一気読みでした。全てを捨てた主人公が犯した最後の罪・・・。とても切ないラストに泣けてきました。

5人の視点で描かれる物語

主人公である片桐達夫。

左手は義手で、顔は一面にヒョウ柄模様のイレズミで覆われていました。犯罪を繰り返し刑務所を出たり入ったりを繰り返す男。でもこのお話は、最後まで片桐の視点では語られないんです。本作は5人の視点で描かれていました。

5人の視点
  • 菊池正弘 (居酒屋「菊屋」の主人。片桐とは古い友人)
  • 中村 尚 (弁護士。以前、片桐を弁護していた)
  • 松田ひかり (片桐の娘)
  • 森口絢子 (梶原の妻)
  • 荒木誠二 (「菊屋」の常連客。以前、片桐と接点があったらしいが・・・)

プロローグとエピローグ、そして5人の視点で描かれる5章からなっています。主人公の感情が描かれていない分、最後まで謎があとを引き読むのを止められませんでした。

どの章も心に響くものがある。そして主人公の翳りや優しさが伺えます。

刺青で彼の表情は伺えないけど、本当はどんな人物なんだろう?とひきつけられるんですよね。薬丸さんは人物を描くのが上手いなと思います。重なる場面が度々でてくるのは、どうだろうと思ってしまいましたが、それぞれのドラマが楽しめます。

「菊屋」の焼きそばと友人の絆

菊池正弘の視点で描かれる第1章が好きです。

私も焼きそばが食べたくなってしまいました。ある出来事から諍いをおこしてしまう2人が仲直りをする。男の友情って良いなと思います。

イレズミ顔の主人公ですが、そんなに悪人には思えないんですよね。

彼はどんな人物なんだろう?なぜ犯罪を繰り返すんだろう?刺青をいれた理由は?

疑問が次々とわき上がってきます。森口絢子の章では、片桐の優しさを感じました。

犯罪を繰り返す男の「執念」と「愛」

ヒョウ柄の刺青で覆われた彼の表情からは、周りの人も感情をよめない。彼はいったい何を考えているのか。中盤からある程度は予想がつくのですが、第5章の荒木の視点で彼の目的が明らかになります。

「菊屋」で起こした初めの事件が端緒となり、彼は復讐のために犯罪を繰り返す。

片桐の執念を感じました。・・・と、同時に「愛」も。確かに家族への愛がありました。だから切ない。こんな生き方しか出来なかった彼。その愛を残された娘に注いで欲しかった。

切なさが募る結末

衝撃の結末でした。

確かに「愛」がありました。でも、なかなか彼のようにはできません。彼が犯した最後の罪。顔に刺青を入れた理由と左手を失った理由に胸が締めつけられました。・・・切ない。願わくば、こんな形で終わって欲しくなかったです。

読後にこの本のタイトル『ラストナイト』が本当にしっくりきました。薬丸さんの本、好きです。改めて再認識しました。

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ひだまりさん。
ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

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