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『あにいもうと』唯野未歩子/100万分の1回のねこ/愛を求めて

「100万分の1回のねこ」8話目のレビューは、唯野さんの「あにいもうと」です。

・・・ちょっと残酷なラストに首を傾げてしまいました。でもこれも運命なんでしょうか。何回か読むうちに、何となくこういう事かなと想像しました。それを踏まえてレビューを書きたいと思います。

ネタバレあります。

『あにいもうと』あらすじ

誰からも愛される兄と愛されない妹

『あにいもうと』
おすすめ
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【あらすじ】
何回も猫に生まれ変わる兄と「わたし」。誰にでも愛される兄に対して、愛されない「わたし」。でもある時、妹は初めて人間の女の子に生まれ変わって・・・。

『あにいもうと』感想

誰からも愛される兄と対照的に愛されない妹のお話でした。

生まれ変わる兄妹

何度となく猫に生まれ変わる「わたし」。

輪廻転生です。ブチ猫だったり、しろ猫だったり・・・。もしも生まれ変われたら素敵ですよね。

主人公「わたし」は、何回生まれ変わっても愛されないネコでした。

そしてもう1匹、同じく生まれ変わって必ず出会う兄。毎回トラ猫で誰からも愛されて・・・。佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』の、あのトラ猫を連想します。でも兄は夭折で、毎回1歳ちょっとで死んでしまいます。妹の「わたし」は、それに比べて長生きで10年くらいは生きる。

ところでいつも一緒にいる兄弟姉妹って、何かと比べられると本人はイヤなものでしょうね。この物語のように片方は愛され、でももう片方は愛されないなんて可哀想。

愛に飢えた妹

愛に飢えた主人公の心情が痛いくらいに描かれていました。

居場所がなくて、捨てられないようによく働く「わたし」。愛されなくても飼い主を愛していました。そして、いつも愛を独り占めしてイジワルをする兄を憎む。

愛されたいのに、それが叶わない主人公。・・・切なくなりました。

私には妹がいますが、幸いそんな感情を抱くことはありませんでした。それは私が恵まれた環境で育ったからかもしれません。・・・だから兄弟姉妹に対して「憎い」と思う感情は、実はよくわからないんです。兄弟姉妹は特別な関係です。友達とはわけが違う。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
この物語の主人公のように憎しみを抱いてしまうのを読むと、とても悲しくなります。

運命の出会い

ある時、なぜか人間の女の子に生まれ変わった「わたし」。初めてまともに愛を知りました。いつもなら前世を思い出していた彼女ですが、今回は自分がネコだったことは思い出しません。

そして結婚をする。その時に運命の出会いが訪れます。旦那さんが生まれたばかりのトラ猫を貰ってきたんです!このトラ猫は兄でしょうか? ・・・書いてはいないのですが、私はそう思いました。彼女は兄のことなど思い出さずにトラ猫を可愛がるのですが、次第に旦那さんは不機嫌に・・・。

残酷な結末

残酷な結末でした。

旦那さんの子供を妊娠した彼女。それがきっかけで不機嫌だった彼は元の優しい彼に戻りました。そして、猫を手放そうと・・・。

旦那さんの言葉には絶対服従です。前世で愛に飢えていた彼女は、旦那さんの愛を手放したくなかったんですよね。

私が残酷だなと思ったのは彼女の行動にあります。

彼女は1歳になったトラ猫を誰にあげるのでもなく、湖に捨てたんです。1回読んだだけではよく分かりませんでした。彼女はなぜ、あんなに可愛がっていた猫を殺してしまったのでしょうか?

愛と憎しみ

何回か読むと、なんとなく見えてくるものがありました。彼女の前世の記憶は戻っていませんでしたが、前世では兄に憎しみを抱いていました。それゆえに殺してしまったのではないかと。・・・悲しいですが愛と憎しみは紙一重です。

運命の通りなら、そしてトラ猫があの兄であったなら1歳ちょっとで死んでしまうはずです。彼女が殺さなくても人にあげてたとしても。・・・そう思うと、やっぱり愛憎の末でのことなのかなと。

彼女はまだまだ生きる。いつも猫の年で10年は生きていました。それを人間にたとえたら、普通の人の一生分、生きるんじゃないかな。そして彼女は今、妊娠しています。もしや生まれてくるのは? ・・・と、想像してしまいました。

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ひだまりさん。
ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

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