- 山田詠美さん『100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン』あらすじと感想
- ダーリンが愛した絵本
- 誰をも好きになってしまう彼女
- 彼女の恋愛観
- 切ないラスト
ネタバレあります。
第9話、山田詠美さん『100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン』感想です。
山田さんの本は以前に読んだことがあって、その時に恋愛指数が高い方なんだなと思いました。ちなみに読んだのは『賢者の愛』です。
『100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン』あらすじ
深い恋愛感が描かれた1話
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
彼から『100万回生きたねこ』という絵本をプレゼントされたと喜ぶ主人公。彼女はホステスで、彼はホスト。でも彼の彼女は1人ではないようで・・・。
『100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン』感想
『100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン』というタイトルからも想像できますが、深い恋愛感が描かれていました。
こういうのって女性目線ならではのものなのかもしれません。
実は少し苦手なジャンルの物語でもあります。でもどこか共感できるのも確かで。精一杯、1人の男を愛した主人公が愛おしくなりました。
ダーリンが愛した絵本

主人公の明美が愛した美樹生は誰からも愛されるモテモテのホスト。
『100万回生きたねこ』のトラ猫を連想しましたが、全く正反対の性格をしていました。トラ猫もみんなから愛されていましたよね?
でもトラ猫が愛したのはただ1人 (1匹?)、白ねこだけです。
ここで描かれているダーリン・美樹生もみんなから愛されますが、彼は同じようにみんなを愛していました。ある基準があったんです。
佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』を読んで泣くかどうか。
なんじゃそりゃと思いましたが彼は真剣。明美は泣いて見事にパスしたわけです。
明美が好きになったダーリンは 絵本を読んで泣いたら誰でも好きになるという浮気性の男でした。おまけに暴力もふるいます。
誰をも好きになってしまう彼女
明美は情にあつく涙もろいたち。優しくされるとすぐに人を好きになってしまいます。
明美が佐野さんの絵本を読んで思ったことが可愛いです。愛しすぎてしまう彼女から見たら、誰も愛さないトラ猫が気楽に見えたんですね。
彼女の恋愛観

いちばん興味を惹かれたのが 彼女の恋愛観です。
以前読んだ『賢者の愛』でも同じようなことを思いました。

山田さんの小説は一筋縄ではいかないですね。主人公の愛する気持ちも憎む気持ちもわかってしまうから、短編なのに強烈に記憶に残る。
明美はそれでも彼を愛していました。愛情を感じる文章があります。
はちみつみたいな、私のスウィート ダーリン。
とびきり甘甘。ハチミツってただ甘いだけじゃなくて、風邪をひいたときにもノドの調子を良くしてくれます。彼女にとって彼はそんな存在なんですね。
でも暴力を振るわれても好きっていう気持ちは わかりません。彼女にとってそんなのどうでも良いと思わせる魅力を彼は持っていたのかな。
切ないラスト
ラストは切なかったです。
佳人薄命。明美が愛した彼は死んでしまいました。
やっぱり『100万回生きたねこ』のトリビュート作品集だけありますね。これまで読んできた短編も「死」を織りまぜて描かれていたものが多かったです。
今回もかぁ・・・とため息をついてしまいました。
こちらもオススメ



他のレビューはこちら
絵本『100万回生きたねこ』に捧げるトリビュート作品集 「100万分の1回のねこ」。
