ヒューマン・ラブストーリー

『難民調査官』下村敦史【あらすじと感想】難民問題とクルド人

彼は何故、日本を目指したのか?

下村 敦史さん『難民調査官』
下村さんの本、2冊目のレビューです。タイトルどおりの難民をテーマにした小説でした。下村さんの本は本当に勉強になりますね。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
読まなかったら知ることもなかっただろうな。

『難民調査官』あらすじ

難民問題に鋭く切り込んだ一冊。

『難民調査官』
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク

【あらすじ】
難民調査官の如月玲奈をとおして見る、難民問題に鋭く切り込んだ小説。

『難民調査官』感想

これはミステリーというよりドキュメンタリーに近いです。ミステリー感を求めるならちょっと物足りなさを感じますが、難民調査官という目線から描かれているのは新鮮味があり面白く読めました。

難民問題に鋭く切り込んだ小説

難民調査官

難民調査官、如月玲奈の目線で描かれています。そんな職業があるなんて初めて知りました。ちょっと新鮮です。そもそも難民とはどのような人たちを言うのでしょうか?

恐怖さながら他国へ逃げてきた人々です。日本での難民認定数は外国に比べてかなり少ないと言われています。だからといって、すぐに解決できるものでもないのですが。

本書ではそのような問題も玲奈を通してわかりやすく書かれています。難民の生活の苦しさや、認定まで数年がかかること・・・。そして認定基準の厳しさが浮き彫りにされていました。

難民認定の壁

日本は海外に比べて認定率が低いのはなぜか?

それは日本の厳しい法律にあるようです。本書で描かれていたのは入管難民法61条。迫害や弾圧の証拠を提出しろというものです。

迫害や弾圧の証拠がないと認定して貰えない・・・。ホイホイ認定するのも考えものだけど、ちょっと厳しい基準にびっくりしてしまいました。

ムスタファの狙いとは?

難民申請をしているクルド人、ムスタファの家族たちが登場します。調査官の如月と高杉は、聞き取り調査 (インタビュー) を開始しますがどうも彼は怪しい。

真実を語ろうとしないムスタファの狙いとは・・・?

この当たりから気になり一気読みです。彼はテロに関わっているんじゃないのかと疑惑がわき、そのうち怪しげな公安の二人組も登場して面白い展開になってきます。

私が気になった人物がもう一人。

ムスタファの家族を支援する西嶋です。

彼には好感が持てました。不法滞在者を憎んでいましたが、ムスタファの妻アイシャや子供を支援していくうちに気持ちが変わっていく。自分の家族をムスタファ一家に投影させながら支援する様子は胸が痛みました。本当の家族とやり直せると良いなと思いながら読んでいました。

認定されないクルド人

1番びっくりしたこと

トルコ国籍のクルド人は難民に認定されない!?

クルド人は、トルコ、イラン、イラク、シリアに分布しているため少数民族と言われていますが、人口はすごく多いようです。ムスタファはトルコ国籍のクルド人でした。外交的な要素が絡んでいるんです。これにはビックリしました。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
なんとも複雑な理由・・・。

如月&高杉は、それでもムスタファを公平に取り調べようとしますが・・・。最後は怒涛のごとくいろんな展開が待ち受けていました。

・・・うーん、ちょっと詰め込みすぎ感が否めないラストでした。

弱者と強者

いろいろと勉強になる1冊でしたが、難民問題をこれから考える時、見過ごすことのできないものがあることに気づきました。

弱者が強者に、強者が弱者になり得るということです。

海外の国で多く難民を受け入れたところ、その人々が犯罪を犯してしまう。弱者だった人たちが一転、強者になってしまう場合があります。そんな時、だから難民なんて受け入れなければ良かったんだと思いがちです。

ひつじくん。
ひつじくん。
それは、でも当たり前の感情だよね。

難民全てが”善”ではないし、”悪”でもない。

当たり前のことですが、親切な人もいるだろうし犯罪者もいるかもしれません。そんな彼らを一括りに、”善” だ “悪” だと決めつけてしまうのはちょっと違うのではないか。・・・下村さんの言葉に心がチクリとしました。

難民と一括りにしていますが、彼らも一人一人違うわけで様々な考え方の人がいます。受け入れる側は相応の覚悟のようなものが必要なのかなと思いました。・・・なかなか深いところをついている小説ですね。

ABOUT ME
ひだまりさん。
ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

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