- 広瀬弦さんの短編『博士とねこ』あらすじと感想
- 博士の発明品
- 自己満足の愛
- 愛の形
ネタバレあります。
「100万分の1回のねこ」より、広瀬弦さん『博士とねこ』短編のレビューです。
「100万分の1回のねこ」は、佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』に捧げるトリビュート作品集です。
短編小説、どれもが素晴らしくて面白い。絵本ももう一度よみたくなりました。
『博士とねこ』あらすじ・評価
科学者が大嫌いな猫

あるとき、ねこは博士のねこでした。博士は科学者。とても猫を可愛がっていました。ある日、ねこは足を引きずりながら帰ってきて・・・。
『博士とねこ』ネタバレ感想文
今回は科学者の猫です。
飼い主に可愛がられ、でも猫は飼い主なんか大嫌い・・・。「100万回生きたねこ」のとら猫そっくりですね。
どこにもトラだとは書いてないのだけど。あの猫が科学者の猫だったらきっとこんな感じなんじゃないかなと思わせてくれる一話でした。
博士の発明品
面白いのは、怪我したネコがどんどん新品になっていくところです。
初めは右後ろ足でした。そのうちに目や内蔵まで・・・。
猫が怪我して帰ってくると、博士はおかしくなった内蔵まで作って猫につけていく。・・・まるでロボットですね。
博士の発明は周りの人々に喜ばれたようです。ちょっと変わった科学者だけど人々からはありがたがれ、研究室も大きくなっていきました。
自己満足の愛

一人ぼっちの博士の愛情は、すべて猫に注ぐことになります。右足をつけたり目や内蔵を作ったり・・・。
家族の一員だから可愛がる気持ちもわかるけど、飼い主の自己満足の愛を感じました。
実は、猫は彼が大っ嫌いでした。・・・予想していたけど切ない。佐野さんの絵本ではあまり気にならなかったことが、この短編では胸に刺さりました。
愛の形
ある日、ねこは突然動かなくなってしまいます。
そうです、死んでしまったのです。でも博士は、なぜねこが動かなくなったのか解らないんですよね。
頭を外して中をよく見たり、手足にオイルが流れているか調べたり、内蔵をいくつも新しいものに取り替えてみたり・・・。
一方通行の愛ほど切ないものはありません。それでも愛情を注いでしまうのが人間なんですけどね。
科学者なんか大嫌いなねこ。次は誰の猫に生まれかわるのかな。




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