- 古谷田奈月さんの小説『星の民のクリスマス』あらすじと感想
- あこがれの童話世界
- 残酷な世界観
- サンタクロースがいない町
- キツツキ少年の叫び
- サンタクロースの本当の贈り物
少しだけネタバレあります
サンタクロースがいない世界!?
古谷田奈月さんの小説『星の民のクリスマス』感想です。表紙が可愛くて、読み始めると止まらなくなりました。ファンタジーですが、ちょっぴり残酷なところもあって・・・。
『星の民のクリスマス』あらすじ
クリスマスに読みたい1冊。
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
ズベン・エス・カマリが紛れこんだ不思議な世界―。そこは父が描いた童話の世界だった。
『星の民のクリスマス』感想
もしお話の世界に紛れこんでしまったら?
私はその世界でどんな存在で、どのように生きていくんだろう。・・・そんなことを思いながら読んでいました。
あこがれの童話世界

憧れの童話世界
『星の民のクリスマス』は簡単に言うと、父が書いた童話の世界に娘が入りこんでしまうというものです。
本を読んでいると、その世界に行きたくなることがよくあります。童話やファンタジーなんかは特に。(そういえばドラえもんの道具で確かそんなのがありましたよね? ・・・靴だったかな)
憧れます。『星の民のクリスマス』というタイトルからも想像できますが、入り込むのはサンタクロースやトナカイがいる父親が創った町です。
歴史小説家の父が娘に贈った童話「ことしのおくりもの」
サンタクロースをはじめ、金色と銀色のツノを持つ2匹のトナカイとキツツキが登場するお話でした。
童話の世界に迷いこんでしまうズベン・エス・カマリ。(なんか面白い名前だなと思っていましたが、天秤座の星の名前です) 彼女のキャラクターがまた良いんですよね。素直で可愛くて。
なによりも古谷田さんが描く世界観が斬新で面白い。
でもここで描かれている世界は ちょっと・・・いや、かなり違うんです。
残酷な世界観
フワフワのファンタジーなのかなと思って読み始めると裏切られます。
残酷でキュート、愛に満ちた冒険譚
残酷でキュート。まさにそうなんです。ズベン・エス・カマリは とびきりキュートなんですが、世界観は残酷・・・。でも愛に満ちています。
物語の世界で生きるというのは不思議な感覚です。カマリが童話の世界に紛れ込むという設定ですが、そこにいる登場人物は 物語の登場人物であって、でもそうじゃないんですよね。
彼らにはその世界が全てでそれが現実。
サンタクロースがいない町

サンタさんがいない!?
カマリが紛れこんだ町。父親が書いた「ことしのおくりもの」の世界のはずですが、なんだか様子がかなり違う・・・。
笑っちゃうくらい楽しそうな町のはずが、一年中雲に覆われて星も見えなくて、いつも雪が降り、花も咲かず、おまけに人々は名前を持ってない。そして決定的に欠けているものがありました。
トナカイもいません。彼女が不思議に思うのも当然ですね。かわりにプレゼントを運ぶのは3人の人間でした。
金色配達員と銀色配達員、キツツキと呼ばれている男の子です。
彼らはお父さんの童話「ことしのおくりもの」の金色と銀色のトナカイとキツツキにあたります。
サンタさんがいない理由が残酷なんですよね。この町は極端に『外』の世界 (カマリが住んでいた世界) を恐れていました。ファンタジーだけど残酷。世界観が新鮮で面白いです。
キツツキ少年の叫び
みんな必死に生きています。
カマリの父親代りになる銀色配達員。「おやじさん」と呼ばれている面倒見の良い金色配達員。頭の良いキツツキ少年。
彼ら雪の民がクリスマスに『外』の世界の星の民にプレゼントを運ぶ。サンタクロースといえば無償の愛を感じますが、この世界では少し違っていました。
キツツキ少年の悲痛な叫びにハッとします。創られた世界ですが現実的で人間味を感じました。疑問を持ちながらも必死に生きている。
なぜ、よその世界に贈り物を届けなきゃいけないのか―。
彼の疑問はもっともですね。無償の愛を描いた物語も良いですが、こういう方が共感できます。
残念なのは、多くの謎は答えのないまま終わってしまうところです。
娘を追ってきた父の影はどうなったのか。6年前に創作した物語なのに、この町は2000年以上経過しているのはどうしてか・・・など、あやふやなままでした。
想像で楽しむということなのかもしれませんが、もうちょっと掘り下げてほしかったです。
サンタクロースの本当のおくりもの
朝おきたら枕元にあるプレゼント。クリスマスの朝って、いつもの朝とはちがいますよね。
サンタクロースの本当のおくりものは 枕元に置いてあるプレゼントではないんです。
輝いて見える雪景色だったり、ワクワクする気持ちだったり、いつもと違う特別な自分だったり・・・。想像が広がる素敵な物語でした。
最後にキツツキ少年の「だからなんだ?」ということば。私も使っちゃおうかな。
こちらもオススメ

