- 大門剛明さんの小説『獄の棘』(ヒトヤノトゲ) あらすじと感想
- 塀の中の真実
- 1話目「赤落ち」
- 心を救うイカサマ
- ヒトヤノトゲは誰か?
少しだけネタバレあります。
そこは想像を超える刑務所の世界
大門剛明さんの小説『獄の棘』(ヒトヤノトゲ) 感想です。「獄」と書いて「ひとや」と読みます。「獄の棘」とは刑務所の鉄条網のこと。鉄条網に覆われた刑務所の内部を描いた連作短編集です。
『獄の棘』あらすじ
新米刑務官・武島良太が見た、塀の中の真実。
刑務所の中で起こっている様々な事件―。これは心実なのか?
- 赤落ち
- 脱獄の夜
- プリズン・グルーピー
- 幸せの天秤
- 矯正展の暗号
- 獄の棘
- 銀の桜
『獄の棘』感想
刑務所内部のことなんて伺いしれないから新鮮でした。新米刑務官・武島良太の目線で物語は進んでいきます。
新米刑務官・武島良太が見た塀の中の真実

塀の中の事件
いじめ、脱獄、ギャンブル・・・。起こっていることは 塀の中でもそうでなくても同じなんですね。かなり えげつない。
「赤落ち」は ギャンブルの話。「脱獄の夜」は 脱獄の話。「プリズン・グルーピー」は 偽装結婚の話。「幸せの天秤」は いじめの話。「矯正展の暗号」は 暗号の話。「獄の棘」は 不正の話。「銀の桜」は 良太の後輩指導の話。
塀の中でくり広げられるギャンブル!?
1話目「赤落ち」は 刑務官が行っているギャンブルについてでした。
控訴するかしないかを賭ける刑務官たち。刑務所の統括・名久井の命令で同僚に探りを入れる良太ですが・・・。
悩む主人公の気持ちもわからなくはないです。仲間を裏切って密告をするか、否か。賭けをしている中心人物は 秋村という刑務官です。
心を救うイカサマ

不謹慎だけど 赤落ちをやっている中心人物・秋村のことが嫌いにはなれませんでした。むしろ読み続けていくと、囚人に対する彼の「情」を感じます。
ラーメン店を営んでいた被告人の志田は、控訴する気満々だったのに取りやめました。ただ1人、赤落ちに賭けていた秋村の勝利でした。
警察がたどり着けなかった真実にたどり着く秋村。その上で志田の心を解きほぐし、結果、ギャンブルで1人勝ちをしました。
ヒトヤノトゲは誰か?
第6話、この本のタイトルにもなっている「獄の棘」がターニングポイントとなっています。
「獄の棘」とは刑務所の鉄条網のこと。そして本書ではもう一つ、ある登場人物を指しています。
名久井が言う「ヒトヤノトゲ」とは誰か?
名久井は刺し違える覚悟で刑務所に蔓延る不正を正そうとします。名久井と秋村のやり取りがカッコイイ。
清々しい結末
読み終わって感じたことは、主人公・武島良太の成長でした。
初めは新米だったのに、最後の章では先輩になっています。微笑ましい。秋村と接してきたことを糧に情のある刑務官になります。
最後の方の後輩に言った良太の言葉にニヤリとしてしまいました。
結末は清々しい。仲間っていいですね。




他にもあります
