- 岩木一麻さんの小説『がん消滅の罠 完全寛解の謎』あらすじと感想
- 医療本格ミステリー
- 完全寛解したガン
- 魂の救済
- 神のような全能感
少しだけネタバレあります。
ガンが消えた!?
岩木一麻さんの小説『がん消滅の罠 完全寛解の謎』感想です。『救済のネオプラズム』を改題して加筆した本書。『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作。
『がん消滅の罠 完全寛解の謎』あらすじ
治るはずのないガンが消えた!?
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
生命保険を受け取った直後にガンが消えた!? これは奇跡か、それとも陰謀なのか?
『がん消滅の罠 完全寛解の謎』感想
話に引き込まれました。本作は 治るはずのないガンが消える!?という消失事件を軸に描かれています。
まさに医療本格ミステリー

作者の岩木さんは 国立がん研究センターに勤務されていた経歴をお持ちの方。専門分野であり、詳細に描かれています。難しくなくて全くの無知である私も理解ができました。
主人公・夏目は がんセンターで働く医師。
友人の研究者・羽島とともに謎の解明に挑みます。医学知識ゼロの私には、こういうことが実際に起こり得ることなのかよく分かりませんが、リアル感がありました。
本当にこんな事があったら かなり怖いです。
ガンが消える!?
夏目が余命診断をした患者さんから、がんが綺麗さっぱり消えてしまいました。1人ならまだしも、4人続けてです。普通なら有り得ないこと。
完全寛解した患者さんは4人。それも4人とも保険に入っていて、お金を受けとった後に治っていました。喜ばしいことですが、とても不可解です。
夏目の恩師でもあり湾岸医療センターの理事、西條先生が絡んでいました。
魂の救済

西條先生が医者をやめるときに言った言葉が印象的でした。
頭がこんがらがりそうな言葉です。西條先生が医者をやめてでもやろうとしたこと。魂の救済なるものです。
彼が言う「魂の救済」とは? そこに至るきっかけはなんだったのか?
面白かったのですが、1つ、西條先生と宇垣医師が目指すものが理解できませんでした。謎が残ったままラストを迎えてしまったので、いまいちモヤモヤ感がぬぐえません。
でもそれをチャラにできるくらい、発想が素晴らしかったです。ガンに精通している岩木さんだから書けた小説ですね。
それにしても、これは救済ではない。本人はそのつもりでも、された側はたまったものじゃないです。
神のような全能感
怖いなと思ったことがあります。
本書で描かれている陰謀も恐ろしいですが、それに取り憑かれた人間に怖さを感じました。
まるで神になったかのごとく全能感に支配され、弱いものをコントロールしようとする人間。支配する側とされる側です。
本書では、医師と患者として描かれていました。がんをコントロールする医師と、従わなければ命を脅かされる患者。その関係にゾッとします。私はたぶん患者側だから。
コンピュータと人間の関係が本書のように描かれていました。支配されている側はそうとは知らず、ありがたがっていて・・・。ヒヤリとしたのを覚えています。

ラスト1行の衝撃と思いもよらぬ結末
思いもよらない展開を迎えます。西條先生とあの人の関係が明かされる・・・。ラスト1行が衝撃でした。最後の最後にやられた!という感じです。
医療ミステリーって面白いですね!
こちらもオススメ



