- 貴志祐介さん『ダークゾーン』あらすじと感想文
- 将棋について
- 世にも奇妙な世界
- 地獄のゼロサムゲーム
- 将棋士とシビアな世界
- 強力な「歩兵」
- 無間地獄
少しだけネタバレあります
悪夢のバトルが今、幕をあける!
貴志祐介さんの小説『ダークゾーン』感想です。過酷な将棋界を描いたサバイバルホラー小説。ゲームをやっているような感覚になりました。
『ダークゾーン』あらすじ・評価
生きるか死ぬか―
「戦え。戦い続けろ」プロ将棋棋士の卵・塚田は、赤い異形の戦士と化して、闇の中で目覚めた。突如、謎の廃墟で開始される青い軍団との闘い。敵として生き返る「駒」、戦果に応じた強力化など、奇妙なルールの下で続く七番勝負。頭脳戦、心理戦、そして奇襲戦。“軍艦島”で繰り広げられる地獄のバトル。
『ダークゾーン』ネタバレ感想文
王将、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩兵・・・。
小学生のころ、将棋を少しだけやったことがありました。桂馬や角、飛車の動きが面白くて他の駒よりも好きだった記憶があります。
相手の駒をとったり取られたり。本格的にやっていたわけではなくて、今はルールすらも忘れている状態だけど。
『ダークゾーン』は、将棋を元にしたゼロサムゲームが描かれていました。生きるか死ぬか―。
世にも奇妙な世界

世界観が半端なくすごい。「軍艦島」を舞台に繰り広げられる闘いはハラハラドキドキの展開でした。現実と仮想世界(?)が交互に描かれています。
登場人物が面白い
赤の王将(キング)、火蜥蜴(サラマンドラ)、死の手(リーサル・タッチ)、鬼土偶(ゴーレム)、皮翼猿(レムール)、一つ眼(キュクロプス)・・・。
主人公の塚田(赤の王将)を中心とした異形の17人の仲間たち。現実世界で顔見知りでした。でもここ「ダークゾーン」ではモンスターのような姿になって、奥本率いる青の王将と戦います。
「ダークゾーン」とは何なのか。
上下巻で長編。もともとゲーム好きなので面白く読めました。この小説はゲーム好きの人に向いているかもしれませんね。
地獄のゼロサムゲーム
将棋を模したゼロサムゲーム。
まさに殺し合いです。主人公が死ぬシーンが何回かあって、いたたまれない・・・。先に4勝した方が勝ちの「七番勝負」でした。永遠に続くかのように感じる地獄。
将棋の駒がひっくり返って強くなるように、ゴーレムやレムール、サラマンドラなどもポイント制で昇格するのにはギョっとしました。完全にSFゲームの世界です。
将棋士とシビアな世界

主人公・塚田は三段。奨励会に在籍していた彼はプロを目指すも、後がない状況に追い込まれていきます。彼の心理状態が細かに描かれていてシビアでした。
現実世界でも「ダークゾーン」でも、ひたすら休む間もなく戦い続ける極限状態の塚田。
荒んだ心の闇を感じました。自分を追いつめても叶わないこともある。現実って、ときに残酷です。
実は強力な「歩兵」
赤軍vs青軍
頭脳戦、心理戦、奇襲戦。全てを戦略にして戦い抜きます。
これは将棋にも言えることなのでしょうね。だから面白いのかな。プロってすごいです。
先ほど桂馬や角、飛車の動きが面白くて好きと書きました。たくさん動けるし、強い駒という印象があります。でも「歩」が、実はかなり強力な駒。
「と金」は「歩兵」がひっくり返って強くなったもの・・・だったような気がします。
将棋の始めに真っ先に進める「歩」。1番使い捨て感が否めないコマだけど、「と金攻め」という攻めがあるくらいだから侮れないです。
現実と仮想世界に続く無間地獄
最後の方にいくに連れて現実世界で起こったことが明るみに出てきました。
彼にとっては現実も「ダークゾーン」も、どちらとも地獄なのかもしれません。犯してしまった罪を思うとこの結果はしょうがないのかな・・・と。
塚田の心理状態や夢に執着する描写を読んでいると「心の闇」を感じました。執着しすぎてドツボにハマってしまい抜け出せなくなる。

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