- 恩田陸さんの小説『錆びた太陽』あらすじと感想
- シュールな未来
- 「ウルトラエイト」と財護徳子
- マルピーVSロボット
- 護美箱計画
- 弱い人間と人間のようなロボ
少しだけネタバレあります
ロボットたちの元に、ある日、謎の女が現れた。
恩田陸さんの小説『錆びた太陽』感想文です。恩田さんの描く世界観がシュール。面白く一気に読んでしまいました。
彼女の本をよむのは直木賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』以来。受賞作は文句ナシに面白くて万人受けする作品でした。
『錆びた太陽』は好き嫌いがわかれるかもしれません。キャラにアクがあり、ヒヤリとする怖さがありユーモアもある。
『錆びた太陽』あらすじ・評価
シュールな恩田ワールド
「ウルトラ・エイト」のロボットたちは、人間が立ち入れなくなった地域をパトロールしていた。そんなある日、女性が現れた。国税庁で働く財護徳子である。彼女が現れた理由は、いったい何なのか?
シュールな未来
舞台は未来の日本です。原発が破壊され汚染された制限区域。
「不条理で嘘くさくて、もはや笑い飛ばすしかない世界」でした。青玉とよばれる爆弾がゴロゴロと転がっていたり、しっぽが9つもある巨大な猫がいたり、極めつけはゾンビまでいたりします。
・・・恐ろしい。
でも恩田さんの描き方がうまいから、すんなり物語に入っていけるんです。体感できちゃうんですよね、登場人物たちと一緒にその世界観を。
『錆びた太陽』ネタバレ感想文
恩田さんの本はキャラが面白い。好きになるキャラが必ず1人はいます。今回もおもしろキャラが満載でした。
「ウルトラエイト」と財護徳子

魅力的なキャラクターたちをまとめました。
- ボス・・・角刈り
- マカロニ・・・肩までの長髪
- ジーパン・・・パンチパーマ
- デンカ・・・七三分け
- ヤマ・・・リーゼント
- ゴリ・・・スキンヘッド
- チョー・・・三つ編み
同じ顔をした屈強な7人の男たち、ウルトラエイトのロボットです。髪型で区別しているようですね。リーダーは角刈りのボス。
そして重要なキャラがもう1人。ゾンビも逃げ出す女・財護徳子です。
彼女は国税庁の人間でした。ボスと彼女のやり取りが面白くて、恩田さんのユーモアがあふれています。
彼らはウルトラエイトなのに7人しかいません。実はもう1人いたようなのです、シンコというロボが。
行方不明の彼はどこへ行ってしまったのか? 謎な人物・財護徳子の目的とは?
恩田さんらしく小さな謎がたくさん描かれていました。
マルピー VS ロボット
『錆びた太陽』では、なんとゾンビまで出てきちゃいます。
かつては人であった彼ら。マルピーと呼ばれ、ウルトラエイトたちと対立していました。マルピーの中にも話が通じるゾンビ・九十九生命科学研究所の湯川博士の存在。
この辺り怖くてドキドキしながらも読むのをやめられませんでした。
護美箱計画

人間の上層部の一部が画策している計画がありました。
護美箱計画です。
原発が爆破されて汚染された世界観もシュールだけど、この計画もあ然としてしまうものでした。
人間の一部の人が考える世界を美しく保つために必要なゴミ箱。その箱に入れるものとは?
弱い人間と人間のようなロボ
興味深かったところ
ウルトラエイトのロボットたちが理想の人間のように思えること。心を持つ人間の弱さが浮きぼりにされていることです。
護美箱計画とマルピーの襲撃を知って、ボスは未だかつてないほどの大きな決断に迫られます。人間の上司に判断を委ねるか、否か。
徳子の言葉にドキリとしました。
「ボスさんが、今回のケースの状況判断をあなたの上司に委ねたとします。あなたは、あなたの上司である人間が、正しく判断できると思いますか?」
精神的にも不安定で利己的であり、しばしば過ちを犯す人間に正しい判断ができるのか?
目先のことしか考えない人間の弱さが、護美箱計画なんて無謀でむちゃくちゃなものを実行しようとする。
対して心を持たないロボットは人間の安全を第1に考え、合理的に物事を解決しようと試みる。人間って弱くてダメダメな感じがします。
よっぽど理想とする人間像に近いような・・・。複雑な気分になりました。
最後はたくさんの謎も解決されてスッキリです。ロボットのキャラも面白かったし、財護徳子も良い味だしてました。
でも青玉がゴロゴロ転がっているわ、ゾンビがいるわ、巨大な猫もいるわ・・・。こんな世界は想像しただけで恐ろしいです。
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