- 前川知大さんの小説『散歩する侵略者』あらすじと感想
- 身近な人が別人になってしまったら
- テーマ 「愛」 について
- 概念を奪われた人々
- 絶望感に包まれる結末
- 【考察】真治のその後
ネタバレします。ご注意ください。
ある日突然、夫が別人格になってしまった―。
前川知大さんの小説『散歩する侵略者』感想です。劇団イキウメの舞台 「散歩する侵略者」、前川知大さんによって小説版にしたものを読みました。
WOWOWドラマ原作小説。
『散歩する侵略者』あらすじ
鳴海と真治の夫婦、そして侵略者の物語。
ある日突然、夫が別人格になってしまったら? 鳴海の夫・真治が全く別の人格になってしまった。いったい彼に何が起こったのか?
『散歩する侵略者』感想
ミステリアスな物語でした。宇宙人がでてくるし、SF? 舞台や映像として見たほうが楽しめると思います。会話文に読みづらさを感じてしまったので・・・。
そして結末が謎。
身近な人が別人になってしまったら

ホラー感があるSF小説。
しかもちょっとグロい。簡単に言うと 侵略者 (宇宙人) が人の体を乗っ取って、ある目的のために人々の概念を奪って学習していく・・・というお話です。
宇宙人から概念を奪われた人々は、その概念がすっぽり喪失してしまうという恐ろしい展開になります。「ある目的」 がなんなのか、1度読んだだけでは、よく分からなかったです。
乗っ取られた人たち (3人) は 人格が変わってしまうから、言わば別人と言っても過言ではありません。
自分の身近な人がまるっきり別人になってしまったら・・・?
『散歩する侵略者』テーマは 「愛」

『散歩する侵略者』は 「愛」 をテーマにしています。
宇宙人に乗っ取られた真治が 「愛の概念」 が未だにわからないと言うと、妻の鳴海はそれを差し出そうとします。
結婚生活が破綻していた夫婦。宇宙人に乗っ取られてからの夫の方が優しくて、何かがおかしい・・・と感じる鳴海ですが真治を愛していて。
「愛の概念」 を差し出すということは、鳴海からそれがすっぽり消失することを意味しています。
こんなにも彼のことが好きなのに、肝心の真治は愛する気持ちを知らないまま終わってしまうのはイヤだという彼女の気持ち。・・・これが少しだけわかる。
鳴海は “悲しまなくて済むから” と言っていますが・・・。
概念を奪われた人々
「愛」 がテーマと書きましたが、全体的にはホラー感を感じる物語でした。宇宙人に概念を奪われた人々の、その後にゾッとします。
例えば 「家族の概念」 とか「血の繋がり」 というものを奪われた人。それが理解できなくなるから、自分の父親 → 知らない変態オヤジ・・・となるのにはヒヤリとしました。
散歩しながら概念を奪っていく侵略者たち。彼らがどんどん人間に近づいていくのも怖かったです。
『散歩する侵略者』絶望感に包まれる結末
舞台と映画がここで描かれている結末なのかはわかりませんが、ゾッとしました。
ラスト、真治は鳴海から 「愛の概念」 を奪ってしまうんです。その気持ちを理解した真治に残ったものは・・・。
すれ違いの愛に絶望感を感じました。彼が愛する気持ちを理解したとき、彼女は逆にそれを失ってしまう。とても悲しいラストです。
やっと手に入れた概念ですが、同時に彼に重くのしかかる苦しみ。そして外には警察が・・・。
【考察】真治のその後
小説は余韻をそのまま残した形で終わりますが、真治のその後を想像してしまいます。
より人間らしくなって・・・。



他にもあります
