- 『破滅の王』あらすじと感想文
- 凄まじさにおののく恐怖の世界
- 細菌兵器R2v「キング」
- 「キング」よりも恐ろしいもの
- 素敵な登場人物たち
- 身勝手なのは人間
少しだけネタバレあります。
細菌兵器の恐怖―。
上田早夕里さんの小説『破滅の王』感想です。上田さんの本はSFを中心に何冊か読んでいるけど、今回は特にすさまじかったです。とまらず一気によみました。
もくじ
『破滅の王』あらすじ・評価
細菌兵器キングの脅威
上海自然科学研究所に務める宮本は、日本総領事館の呼び出しに応じた。そこで依頼されたのは、治療法がない「キング」と呼ばれる細菌兵器の治療薬の製造だった・・・。
『破滅の王』ネタバレ感想文
『破滅の王』はひとことで言うなら、凄まじく面白い。
フィクションなのかノンフィクションなのか、わからなくなります。実在する登場人も出てくるし。・・・いや、フィクションなんだろうけどリアルすぎるんですよね。
そう言えば、上田さんの著作『夢みる葦笛』に「上海フランス租界祁斉路320号」というのがありました。

舞台は同じ上海自然科学研究所。ストーリーはそれぞれ独立したものになっているけど、本作品へ繋がっていくのですね。
凄まじさにおののく恐怖の世界

舞台は中国。日本が戦時中のころです。
満州事変や、日本軍・・・。歴史や時代背景に詳しい人が読むとまた違った楽しさがあるのかもしれませんね。
上海が舞台だから、中国人名とかもでてきて少し読みずらい・・・。でも途中から面白くなります。今までの小説とはまた違う1面がみれました。
『夢みる葦笛』『華竜の宮』『深紅の碑文』・・・。本作『破滅の王』も恐怖を感じました。タイトルからして怖そうですよね。
- 細菌兵器「キング」とそれを扱う人間
- 実在の人物・日本軍の石井四郎の元で行われた生体実験
細菌兵器・R2v「キング」
『破滅の王』は「R2v」(キング)とよばれる細菌兵器を指しています。
治療法皆無の細菌。それがもし撒かれたら・・・。恐怖を感じました。
上海自然科学研究所で働く宮本が灰塚少佐から見せられたのは機密文書。新手の細菌「R2v」(キング)についてです。ワクチンがない治療法皆無の細菌兵器の詳細でした。
宮本は治療薬の開発を頼まれるのだけど・・・。
キングの治療薬を作ることは自らが細菌兵器を作ることになってしまう。
治療薬がないままだと、それが撒かれたときに壊滅的な死者がでる・・・。科学者としての宮本の苦悩が描かれていました。
細菌兵器「R2v」(キング)は実在しないようなので一安心。本書で描かれている世界では実在していて、1番最後の「その後・・・」を読むと鳥肌がたちました。
治療薬もワクチンもない細菌兵器をばらまこうとする人間は狂っていますね。
「キング」より恐ろしいもの

「キング」より恐ろしいものは人間ということを思い知りました。
リアル感が半端ないんです。もしやこの人物は実在するのでは?と思い、ネットで検索してみたのですが・・・い、いた!!
検索をかけたのは、石井四郎という人物。
彼の元で働く藤邑(この人は創作?)の告白シーンが恐ろしくて、でも読むのをやめられませんでした。
『破滅の王』を読んでいると、どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのかわからなくなります。
「キング」も恐ろしいけど、もっとも怖いのはそれを扱う人間。戦時中という過酷な中で壊れていく人たちが描かれていました。
イケてる登場人物|灰塚&ヴァントコンビ
上田さんが描く登場人物が素敵です。
灰塚少佐がかっこ良くて、主人公の宮本よりも気になりました。・・・凄まじいだとか怖いだとかばかり書いたけど、彼らを見ていると胸が熱くなるんです。
後半の灰塚&ヴァントコンビがイケてました。彼を主人公とした物語が読みたいです。
『破滅の王』身勝手なのは人間ということを思い知らされた
上田さんの著作を読むと、いつも思い知らされるのが人間の身勝手さです。
1番怖いのは「キング」じゃなくて、それを扱う人間の方だと思い知りました。
でも上海自然科学研究所で働く宮本や、六川、そして灰塚のような良い人もたくさん描かれています。・・・だから読んでいて楽しいんですよね。
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