- 長崎尚志さんの小説『編集長の条件』あらすじと感想
- 作中のマンガ
- 南部は殺されたのか?
- 国鉄総裁の迷宮入り「下山事件」
- ヒット作と雑誌のリニューアル
- 成功の秘訣
- 読む時のポイント
少しだけネタバレあります。
戦後最大の未解決事件が鍵!?
長崎尚志さんの小説『編集長の条件』感想です。醍醐真司の博覧推理ファイルシリーズ。『闇の伴走者』『黄泉眠る森』に続き3冊目なんですね。・・・前2作をすっ飛ばして読んでしまいました。
WOWOWドラマ原作小説。
もくじ
『編集長の条件』あらすじ
醍醐真司&水野優希タッグ再び!!
漫画編集者・醍醐は 編集長に抜擢される。1度は断るが 前任の編集長・南部のことが気にかかり、引き受けることにした。
『編集長の条件』感想
マンガ雑誌の編集者のお話でした。漫画ミステリというのが新鮮。ラストはどんでん返しな結末で楽しめました。
前2作を読まずにいましたが、1冊で完結しているのでこちらだけでも楽しめました。でも途中で前の作品を思わせる記述もあったので、順番通りに読んだ方がより楽しめそうです。
作中のマンガが読みたくなる!?
ひょんなことから 想起社のマンガ雑誌 「ブレイブ」 の編集長に抜擢された醍醐。
彼は主人公ながらクセがあるのですが、キャラが際立って面白い人物でした。まさに編集長!!・・・って感じ。「ブレイブ」 の売上を伸ばすためリニューアルに励みます。
担当編集者 (部下) や漫画家との話し合い、漫画の方向性など細かに打ち合わせをしたりするものなんですね。
『パシリ刑事』『スナイパー卓』『パニック同盟』・・・。
様々なタイトルの漫画作品が出てきました。打ち合わせの様子を読んでいると、そこに出てくるマンガも気になってしまうんです。
南部は殺されたのか?それとも・・・

ミステリ部分も気になりました。
想起社 「ブレイブ」 前任編集長・南部の不可解な死。ビルの屋上から転落死した南部は 自殺か、それとも他殺なのか?
南部がまた酷い人物で、みんなから嫌われていました。彼は “絶対に勝てる大人向けマンガ雑誌のノーハウ”を思いついたらしいのですが・・・
ヒントは “水色”。
そう言い残して死んでしまいました。
南部が 「ブレイブ」 リニューアルのためにとった施策が斬新です。
- 一作以外は全作品を打ち切り。
- 読み切り作品を中心に。
漫画家&担当編集者からはブーイング。それもそうですよね、打ち切りだなんて・・・。
最後の方に明かされるのですが、なるほどなと思いました。そこの部分を読んで感じたことがあるのですが、それについては 後ほど・・・。
国鉄総裁の迷宮入り「下山事件」
この小説は 過去の迷宮入り事件 「下山事件」 が取り上げられていました。
松本清張が取り上げていたりと割と知れ渡っている事件ですね。自殺説、他殺説。真相は誰にもわからない・・・。
迷宮入り事件が題材にされた単行本が 本書に登場していて興味深かったです。マンガだけでなく、ミステリ、下山事件、紙芝居の話まで詳しく掘り下げていました。
ヒット作と雑誌のリニューアル

醍醐がくり返し言っていることがありました。
雑誌の刷新 (リニューアル) は ヒット作を生み出すことじゃない
ひとことでマンガ雑誌と言っても、そのターゲットはさまざま。ファミリーものが好きな読者を想定したものや、アクションもの、世代をターゲットにするのもあります。
でも時代は変わっていくから。マンガ雑誌の部数が落ちたときにどうするのか。
肝心なのは、時代に合わせて色を少し変えても、これまでの読者を捨て去らないことなのだ。
ここで言う 「色」 とは ターゲットでしょうか。リニューアルで 「色」 を変えても既存の読者が離れては元も子もありません。
本を読みながら自分の仕事のことまで考えてしまいました。
大ヒットも大切ですが 顧客も大切。
ここで描かれているのは雑誌社ですが、様々な業界に共通することだとです。私も両方の大切さを日々ひしひしと感じています。
顧客さまだけでは限界があるのも事実。それに好みは変わるものだから、ずっと顧客さまでいてくれるわけではありません。
時代は変わっていくから、それに合わせて変えていかねば存続が危うくなる。でも顧客さまあってのお店なんですよね。
お客さまはみんな神様というわけではありませんが・・・。
成功の秘訣
ラスト、南部の意図を読んだ時に感じたことがありました。
彼は雑誌の部数が落ちた理由を分析して、考えて、その結果、大幅なリニューアルをしようとします。「ブレイブ」 を読み切り中心のマンガ雑誌に。
その謎が解けて なるほどと思うのですが、別のことにも共感しました。
分析、考える、実行することです。
これってとても大事なことですね。・・・何をするにしても。たとえそれでまた失敗しても、くり返すことが成功の秘訣。
南部さん、むちゃくちゃな人だったけど、ちゃんとした考えがあってのことだったんだと思って見直しました。
『編集長の条件』は 働く上で大切なことを改めて認識できた小説でした。
最後まで気がぬけない!一転する結末
結末は一転します。
『編集長の条件』を読むにあたってのポイントをまとめました。
- 幻のマンガ家とは誰?
- 南部が言うところの “絶対に勝てる大人向けマンガ雑誌のノーハウ” とは。
- 果たして彼は 自殺か他殺か。
最後まで気が抜けませんが 素敵なラストです。



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