- 彩坂美月さんの小説『僕らの世界が終わる頃』あらすじと感想
- 引きこもり少年
- 交差するフィクションとリアル
- 終わらない世界
- 小説を読む視点
- 肩透かしのラスト
ネタバレあります!ご注意ください。
ネット小説どおりに起こる事件。それは、この世界への挑戦状。
彩坂美月さんの小説『僕らの世界が終わる頃』感想です。自分が書いた小説どおりに事件が起こったら怖いでしょうね。悪いのは犯人なのに 自分も責任を感じてしまうかもしれません。
『僕らの世界が終わる頃』あらすじ
もしも、ネット小説どおりに事件が起きたら?
ひきこもりを続ける少年・渉。ある日、軽い気持ちで投稿した小説が現実に起こり始める。怖くなった渉は 小説を削除するが、何者かにより続編が公開される。さらなる悲劇が続き・・・。
『僕らの世界が終わる頃』感想
途中までは読むのがしんどかったです。・・・主人公の男の子に全く魅力を感じない。弱っちくてウジウジしていて、少しイライラしちゃいました。
でも中盤は面白さが増してきます。・・・ただ、ラストは深読みしすぎちゃって肩透かしをくらいました。あっ、そう。それで終わり?と。
引きこもり少年

主人公・渉は引きこもりを続けていました。中盤から少しずつ前向きになるのですが、それまでの描写が長い。しかも引きこもりの理由が なかなか明かされません。
彼に何があったんだろう?と気になるも思わせぶりな描写ばかりで・・・。
一年前のあのときのこととは学校で友達が校舎の3階から落ちたことなのですが、なかなかその経緯が明かされません。
それでも中盤からは面白くなります。
渉がネットで公開した小説 「ルール・オブ・ルール」 どおりに事件がおこり始める。
いったい誰が、どうして? 混乱する渉と一緒に、私も不気味さを感じました。
交差するフィクションとリアル
ここが面白い!!
小説の面白さは、物語と現実がリンクしていくところにあります。
渉がノベルサイト・モバイルシティに投稿した 「ルール・オブ・ルール」。一気にランキング1位になり、次々と物語どおりに事件が起きる。
彼は現実の友だちや周りの人をモデルにしながら小説を書いていました。舞台も身近な公園や学校など。事件が起きるのは渉の周辺です。
でも予想は大きく外れることになります。(←それについては後ほど)
1冊の小説で2つの物語か楽しめるのは面白い。渉のいるリアルの世界と『ルール・オブ・ルール』のフィクションの世界です。
もしも自分が書いた小説どおりに事件が起こってしまったら?
終わらない世界

より不気味さがます中盤。混乱した主人公は小説を書くのをやめるのですが・・・。
渉の知らないところで、彼が作った世界の続きが更新されていました。そしてネット小説どおりにまた事件が起こるんです。
現実と物語の世界がリンクしていく。交互に描かれているから、同時進行してるパラレルワールドのような感じがしました。
小説を読む視点
話がそれますが
小説を読むときって、登場人物の視点で読んでいますか? ・・・それとも第三者の視点?
私は 登場人物の視点ではなくて第三者の視点なんだと、最近になって気づきました。この小説を読みながらも、心の片隅で 第三者目線だなと認識。
その物語に 私は登場していないけど、物語を眺めていて 幽霊のように登場人物にぴたっと張りついている自分を想像しちゃいました(笑)
江國香織さんの『なかなか暮れない夏の夕暮れ』が思い浮かびました。

本の世界にひたっている時、唐突に世界がとぎれる瞬間があります。例えば電話が鳴ったり、思いがけぬ来客があったとき。とつぜん現実に引き戻される。その描写がリアルに感じられる小説です。
深読みしすぎました・・・
ミステリー小説を読むとき、犯人を探しながら読んでいます。あの人が怪しい、絶対犯人だ!と目星をつけていたのですが。
結果、ぜんぜん違いました (あの人は最後まで良い人でした)。これは、わざと?
最後にどんでん返しがあるんだろうな、うん、このまま終わるはずがない、と期待 (深読み) しすぎちゃいました。それを見越しての結末だったのかな。
とってつけたような犯人だったし、渉の小説どおりに事件を起こした理由についてもしっくりきません。
そして、結局だれも死んでいなかった・・・。
このラストいらなくね? 一年前の件、死んでないのに主人公は あんなにウジウジと引きこもりになっていたの? と疑問がわいてきます。
肩透かしなラストで、物語の余韻に浸れなかったのが残念でした。



