- 『イヴの時間 another act』ノベライズあらすじと感想・レビュー
- アンドロイドの心
- ピアノを弾かなくなったリクオ
- サミィの気持ち
- ピアノロボット・ケンゴ
- 人間とアンドロイドの調和
少しだけネタバレあります。
人間とアンドロイドを区別しない!?
水市恵さんの小説『イヴの時間 another act』感想です。吉浦康裕監督のアニメ『イヴの時間』のノベライズ版。
アニメから入り、その空気感に魅了されて小説にも手を出しました。アニメの雰囲気を壊すことなく、小説ではオリジナルの1話が追加されています。
もくじ
『イヴの時間 another act』あらすじ・評価
人気アニメのノベライズ版
ピアノの感想を求めると、ハウスロイドのサミィは一言「楽曲です」と言った。・・・わかってた。ロボットに感情はないことを。ある日、サミィの行動記録に不審を抱いたリクオは、親友のマサキとともに確かめにいく。たどり着いたのは、人間とロボットの区別をしない不思議な喫茶店「イヴの時間」だった。
『イヴの時間 another act』感想
アニメ『イヴの時間』小説版。アニメの空気感を壊すことなく描かれていて、とても良かったです。
アニメはこちら

アニメのストーリーをそのままなぞっているけど、マサキとハウスロイドのお話、リナ&コージのお話がカットされていました。その代わり、オリジナルでリクオのピアノの話が追加されています。
『イヴの時間 another act』のメインは、ピアノを弾かなくなったリクオの過去と現在。
リクオの心情と、ピアノに対しての思いが細かく描写されていました。オリジナルの1話が追加されて、アニメの延長線上で繋がっているような感じです。
心を持つアンドロイド

『イヴの時間 another act』テーマは 「アンドロイドの心」 です。
アンドロイドたちは、みんな人間と同じように 「心」 を持っていました。彼らの 「心」 に触れることで、主人公のリクオの気持ちにも変化が訪れる。
人間とアンドロイドが調和できる場所、喫茶店 「イヴの時間」 でのひとときに安らぎを感じます。そして様々な思いが交差してて濃い。
- アンドロイドだったアキコ
- 名前を名乗れない、かとらん
- ハウスロイド・サミィ
- チエの里親・シメイ
- ピアノロボット・ケンゴ
ピアノを弾かなくなったリクオ
高校生のリクオは、かつてジュニアピアノコンクールで優勝した経験を持つ少年。でも彼の心は あることをきっかけに傷ついていました。
「グランプリになっても仕方ないんだよ。僕より巧いアンドロイドがいるんなら、僕が弾く意味なんてない」
コンクール会場で余興として出演・演奏したピアノロボットの方が、優勝したリクオよりもピアノが上手だった。
人間とアンドロイド。人間の生活を豊かにするために作られたロボットですが、いつしか人間を超えてしまう。そうなったとき、人はどうするのか。
前に読んだ逸木裕さんの小説『電気じかけのクジラは歌う』を連想しました。

人工知能が作曲をするアプリが普及し、作曲家が絶滅した社会を描いたお話です。創作に意味はあるのか?と問いかけていました。
作曲もピアノ演奏も、その意味を問うのはダメなんです。大切なのは自分の気持ち。それについては後ほど・・・。
人間がピアノを弾くよりもアンドロイドの方が心に響く演奏をした時から、リクオはピアノを弾くのをやめました。
ハウスロイド・サミィの気持ち

「イヴの時間」 でのサミィは表情豊かでした。リクオの家のハウスロイド。家にいるときは感情を一切出さないから別人のようです。
「イヴの時間」 に寄り道していた彼女は、そのことをリクオには内緒にしていました。リクオを傷つけたくないという気持ちからです。
コンクール以来、ピアノを弾かなくなったリクオ。アンドロイドの方が上手かったけど、サミィにはある思いがありました。
「私……、昔リクオさんが弾いていたのを、その……好きだったんです」
リクオが弾くピアノが好きだったと言うサミィ。アンドロイドだけど気持ちがしっかり描かれていました。
ピアノを弾けなくなったアンドロイド・ケンゴ
オリジナルの章では、ピアノロボット・ケンゴが 「イヴの時間」 に訪れます。コンクールで人間よりも上手くピアノを弾いたアンドロイド。
でもケンゴもリクオと同じで、ピアノを弾けなくなっていたのです。
私はピアノを弾くとき、何も考えていなかったのです。演奏が誰かを悲しませることになるなんて思いもしなかった。誰かを悲しませるのがこんなにも辛いことだったなんて、考えもしなかった。
ケンゴは コンクールでピアノを弾いて、リクオを悲しませたことを後悔していました。だからケンゴもそれ以来、ピアノを弾けなくなっていた。
相手を思い、悩むこと。
「心」 があって、相手を思いやる気持ちもあって。「イヴの時間」 では 人間もアンドロイドも変わらないんですね。
ケンゴの気持ちにふれたリクオは、彼を励まして仲直りしようとします。「イヴの時間」 を訪れる前は アンドロイドに心はないと思っていたけど、彼らにも心があるとわかりました。
人間とアンドロイドの調和
ピアノの演奏が 「好き」 という気持ち。・・・たとえ、アンドロイドの方が上手くても。そして人間とアンドロイドが調和すること。
『電気じかけのクジラは歌う』も、本作『イヴの時間』でも、人間よりも優れたアンドロイドが出てきました。
人間よりもアンドロイドの方が優れているなら、人間が演奏する意味はあるのか?
でも、なぜ演奏をするのか。・・・そう考えると自ずと答えは見えてきます。
演奏するのが好きだから。
リクオがピアノロボット・ケンゴに自分の気持ちをうち明けたこと、ケンゴがリクオに話したこと。『イヴの時間』では アンドロイドも人間と同じように感じました。
人間とアンドロイドが調和することで、お互い吹っ切れる思いもあるんですね。
『イヴの時間 another act』アニメも小説もオススメ!
小説版『イヴの時間 another act』は、リクオの心と、アンドロイドの心が詳細に描かれていました。では、アニメでは描かれていないのか?というと、そうではありません。
アニメにはアニメの、小説には小説の良さがそれぞれ出ていました。どちらもオススメです。
アニメのレビュー
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