- 恒川光太郎さんの小説『白昼夢の森の少女』より「銀の船」あらすじと感想文
- 空飛ぶ巨大な船・時空船ブリガドーン
- 3つの選択肢
- 永遠という牢獄
- 【考察】まっさんは乗船したのか
少しだけネタバレあります。
もしもブリガドーンが現れたら?
恒川光太郎さん『白昼夢の森の少女』より「銀の船」の感想です。『白昼夢の森の少女』はダークファンタジー10の短編集。その中のひとつ、「銀の船」は一番ファンタジー感が強い物語でした。
怖くも魅力あふれる世界に行ってみたくなる。
一度、試しに乗ってみたい気はします。時空船ってところが良いですね。

「銀の船」あらすじ・評価
時空を旅する「銀の船」
空を飛ぶ巨大な船がこの世界に存在すると、ずっと信じていた。青少年の自立支援プログラムで知り合ったまっさんもその船を見たことがあるらしい。ある日、短大生になったナナコの元に時空船ブリガドーンが現れて・・・。
- 古入道きたりて
- 焼け野原コンティニュー
- 白昼夢の森の少女
- 銀の船
- 海辺の別荘で
- オレンジボール
- 傀儡の路地
- 平成最後のおとしあな
- 布団窟
- 夕闇地蔵
「銀の船」ネタバレ感想文
子どものころ信じていたものがあります。例えばサンタクロース。いつしか歳をとり、サンタクロースはいないんだと自然に理解する。
恒川さんの小説は、大人になって信じなくなったことや目に見えないものが、もしかしたら存在しているのではないか?という感覚になるんです。
「銀の船」は、まさにそんな感覚になる短編でした。
空飛ぶ巨大な船・時空船ブリガドーン

なっちゃんが信じていたもの
空を飛ぶ巨大な船がこの世界に存在すると、ずっと信じていた。大きさは小さな島ぐらい。その船は世界を巡っており、時折どこかで停泊する。
時空船・ブリガドーンです。きっと存在すると小さな頃に信じていたなっちゃん。彼女は19歳になったとき、1枚の張り紙を目にします。
搭乗者募集
時空船・BRIGADOON
7・20~7・25
永遠の旅に参加するもの。
19歳までの選ばれし方に限り、20万円で乗船できます。詳細は乗り場にて。
もしも目の前にブリガドーンが現れたら、乗ってしまうだろうか。
乗ったら最後、永遠に時空を旅する船です。今の生活を何もかも捨てて永遠に生きる。・・・魅力的にも怖くも感じました。
なっちゃんは乗船します。
3つの選択肢
ブリガドーンの中は街になっていました。そこでは食欲、性欲がなくなってしまうようです。色んな国の人、色んな時代の人がいました。
お金は必要なくて、モノは落ちていたり、ゲームの懸賞として出されていたりします。
なっちゃんは船で出会った人に「この先の人生の選択肢」について教わります。
「乗客はあるとき、ふとこの先の人生には三つの選択肢しかないことに気がつくんだよ」
- 永遠に船に乗り続ける
- どこかの時代で、肉体もしくは精神に変異があることを覚悟して下船する
- 船から飛び降りる(自殺行為)
もし船から降りたら、記憶が完全に消えて廃人になったり、犬や猫といった動物になったり・・・。今のままの自分ではいられなくなってしまうようです。
そして船から飛び降りるのは自殺行為。それなのに笑いながら飛び降りる人たちも描かれていました。
永遠こそ牢獄
なっちゃんの言葉が印象に残りました。
牢獄のように感じていた下界は、少しも牢獄ではなかった。
下界で生きることに息がつまっていたなっちゃん。彼女にとって逃げた先(銀の船)もまた牢獄だったのですね。永遠という名の牢獄です。
時間は有限だから尊い。有限だから生きることに喜びを感じる。
愛おしい家族を捨てて、ひとり「銀の船」で旅立った彼女に残ったのは後悔でした。やがて、なっちゃんは船から降りる決意をします。
船を降りたなっちゃんがどうなったのかは、ぜひ本を読んでみて下さい。
ちなみに
恒川さんの小説で「牢獄」をテーマにした短編集があります。こちらも面白かったのでおすすめ。

【考察】まっさんはブリガドーンに乗船したのか
青少年の自立支援プログラムで、なっちゃんと出会ったまっさん(松沢祥子)。彼女は亡くなってしまうけど疑問がひとつ残りました。
まっさんはブリガドーンに乗船したのか?
きっと乗船していたんじゃないかな。・・・そうだったら良いな(←願望)。乗船したのかしなかったのかは書かれていないんですよね。
なっちゃんの前に乗船していたのか、それともなっちゃんが船から降りた後に乗船したのか(何しろ時空を旅する船なので)。どちらにしても、なっちゃんとは船で出会わなかったのが残念です。
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