- 『竜が最後に帰る場所』より「ゴロンド」あらすじと感想文
- 自由を謳歌するゴロンド
- 食物連鎖の過酷な世界
- 成長するものと、そこで終わるもの
ネタバレあります。ご注意ください。
翼の生えたものはね、飛びたたなくてはいけないの。
恒川光太郎さんの小説『竜が最後に帰る場所』より「ゴロンド」の感想です。本のタイトル『竜が最後に帰る場所』を思わせる1話でした。
〈竜が最後に帰る場所〉を目指して旅立つゴロンドは竜なのかな。人生(竜生?)を謳歌する爽快さと、何世代にも渡り帰る場所を目指す習性に壮大さを感じました。
もくじ
『竜が最後に帰る場所』あらすじ・評価
5つの短編集
しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになった― (夜行の冬)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する5つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける短編集。
- 風を放つ
- 迷走のオルネラ
- 夜行の冬
- 鸚鵡幻想曲
- ゴロンド

「ゴロンド」ネタバレ感想|『竜が最後に帰る場所』
「ゴロンド」は、架空の生物(竜)が〈最後に帰る場所〉を目指しながら成長していく物語です。
主人公はゴロンドと後に名付けられる1匹の竜。水中で生まれて陸に上がり、翼が生え、故郷を目指して旅立つ。
自由を謳歌するゴロンド|冒険の始まり

架空の生物目線で描かれている「ゴロンド」。何にも縛られることなく自由に旅をする姿が清々しい。
もっと強く、もっと大きく、もっと自由に。もっとわくわくしたい。まだ始まったばかり。
ゴロンドを通して自由を謳歌する爽快さとワクワクする気持ちが伝わってきます。私もゴロンドになった気分を味わえました。
全ては自己責任だけど、何にも縛られないのはある意味うらやましい。人生(竜生)はこれからって感じがしますね。
過酷な世界を生き抜くにはゴロンドも強くならなければいけません。生まれてから大きくなるまでは、それなりの危機を乗り越えてきました。
食物連鎖の過酷な世界|宮沢賢治『やまなし』を連想
水中で生まれた頃の、まだ何者にもなれていないゴロンドを見ていると宮沢賢治『やまなし』を連想しました。
ゴロンドは共食いに若干の後ろめたさを感じていたが、仕方のないことだった。弱いものは喰われるのがこの池の掟だ
「ゴロンド」で描かれている共食いや〈宴〉のシーン。それが『やまなし』で描かれている「クラムボン」が魚に食べられ、魚がカワセミに食べられるといった食物連鎖を思いおこします。

ゴロンドなどの生物にとって身近にある「死」。それを乗り越えて必死に生きてきた後にある自由は、より魅力的なものに思えました。
成長するものと、そこで終わるもの

陸に上がったゴロンドは、やがてシンと出会います。
シンは首は長く、足は太く、爪は鋭く、耳は垂れていて背中には大きな翼を持っている巨大な竜。
彼女の周りにはゴロンドのような子竜がたくさんいて、子供たち全ての母親的な存在でした。真夜中に池に卵を産んだのは彼女だったのです。
シンから名前をつけてもらったゴロンド。ゴロンドは〈考えるもの〉という意味です。
言葉を覚えたり、知能が発達している不思議な生物。シンに出会って、ゴロンドは自分たちの種族について考えをめぐらせます。
自分たちがどのような種族なのかゴロンドは悟った。どうも時折二つの道が現れるらしい。成長するものの道と、そこで終わるものの道だ
ゴロンドのように成長したものと、今いる場所に留まり成長しなかったものが描かれていました。
何かをやってみる。新しい世界に飛び込むことで成長に繋がる。
新しい世界に飛び込むことはそれなりのリスクがあることだから、どちらが良いとは一概には言えません。でもチャレンジは成長に繋がると、ゴロンドを見ていて感じました。
〈竜が最後に帰る場所〉を求めて
翼が生えたゴロンドは〈竜が最後に帰る場所〉を求めて旅立ちます。
翼の生えたものはね、飛びたたなくてはいけないの。ここを離れて、それぞれが旅をしてすむ場所を決めるの
シンが言うには、遠い昔、ゴロンドたちの祖先は〈竜が最後に帰る場所〉からやってきた。そして何世代もかけてその土地を目指すのだと。
竜の寿命が何歳なのかわからないけど、何世代もかけての故郷への旅は気の遠くなるような月日。・・・帰る場所があると落ち着きますね。
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