SF・ファンタジー

『火星ダーク・バラード』あらすじ・感想|上田早夕里|遺伝子改変とプログレッシヴ計画

この記事に書かれていること
  • 『火星ダーク・バラード』あらすじと感想
  • 神月璃奈を殺したのは誰か
  • プログレッシヴ計画
  • アデリーンの思い
  • 「小鳥の墓」
  • 『火星ダーク・バラード』の魅力

少しだけネタバレあります。



彼女を殺したのは誰か。

上田早夕里さんの小説『火星ダーク・バラード』感想です。面白すぎて止まらなくなりました。デビュー作にして この完璧な世界観。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
さすがです。

上田さんのSF小説を何冊か読みましたが、どれもハズレがなく圧倒されます。『火星ダーク・バラード』も めちゃくちゃ良かったです。

『火星ダーク・バラード』あらすじ

ハードボイルドなSF小説

本の評価

おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク

【あらすじ】
火星治安管理局の水島は 神月璃奈とともに、凶悪犯ジョエル・タニを列車で護送中、奇妙な現象に巻き込まれて意識を失った。その間にジョエルは逃亡、璃奈は射殺されていた。疑いをかけられた水島は個人捜査を開始するが、その矢先、アデリーンという名の少女と出会う。第4回小松左京賞受賞作。

ひつじくん。
ひつじくん。
文庫版 (Kindle) は 単行本を大幅に改稿したようだよ。

『火星ダーク・バラード』感想

もっと早くに読めば良かった。そう、「小鳥の墓」 を読んだ直後に。

上田さんの小説 「小鳥の墓」 に、本作『火星ダーク・バラード』の登場人物がでてくるんです。それは後ほど・・・。

『火星ダーク・バラード』の舞台は火星。人類の一部は火星に住んでいます。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
ちょっぴり怖い世界観が魅力。

火星に住むのが日常化している未来。そこでも犯罪は起こり、”ミニ地球” のような社会でした。そして 人間の改変・・・。

ひつじくん。
ひつじくん。
デビュー作から 「人間の改変」 は健在だったんだね。

神月璃奈を殺したのは誰か

火星治安管理局に勤める水島 (地球で言うところの刑事) は 凶悪犯・ジョエルを護送中に、奇妙な現象に巻き込まれ 意識を失います。

ジョエルに逃げられ、相棒の神月璃奈が銃弾を受けて死んでいた。水島は 独自に調べ始めます。

神月璃奈を殺したのは誰か。 ジョエルなのか、それとも自分なのか、あるいは自分の知らない第三者なのか。

神月璃奈を殺したのはジョエルでしたが、最後まで彼を追いかける水島さんの執念を感じました。

ジョエルを追う水島もまた璃奈を殺した容疑者として追われる身に・・・。ハードボイルドなハラハラの展開です。

遺伝子改変!? 「プログレッシヴ計画」

ある計画の元、遺伝子を操作して生まれた人々が描かれていました。人間改変です。

以前にに『華竜の宮』『深紅の碑文』を読んでいたので、驚くことなく読めました。こちらは人間を改変した海上民が描かれています。

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ひつじくん。
ひつじくん。
上田さんの小説は 人間改変とかがよく出てくるね。

全ては「プログレッシヴ計画」のために。

プログレッシヴ計画とは

人間の肉体を宇宙の過酷な環境などに適応させるために遺伝子改変を行うことを目指した計画。

低重力や無重量状態、宇宙放射線、極端な温度差・気圧差、酸素濃度の低い環境に対応できる人間を作る―。

「プログレッシヴ計画」の目的は 木星などの宇宙開発に、優れた能力を発揮できる人類 (プログレッシヴ) を作り出すことです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
そのために 人間を改変しちゃうなんて・・・。

もはや神の領域。そうやって作られたプログレッシヴ世代に 1人の少女が登場します。アデリーンという優れた共感性を持った女の子です。

アデリーンの恋と苦悩

相棒の死の真相を調べていくうちに、水島さんが出会った少女・アデリーン。彼女は遺伝子操作で作られた新人類でした。

アデリーンには 超共感性と呼ばれる受容能力がありました。それは相手の感情を読むというものです。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
自分の心の中が覗かれているようで あまり良い気分ではないかも。

自分が思っていること、嬉しいや悲しいといった感情が筒抜けに伝わってしまうんです。でもアデリーンの立場だったらと思うと、切なくなりました。

私は普通とは違う。でも、望んで、こんな人間に生まれてきたわけじゃない

ひつじくん。
ひつじくん。
遺伝子操作とか、普通に描かれているけど怖くなる。

人間の欲望は果てしないですね。宇宙開発は夢があるけど、そのために人類を改変してしまうとは・・・。

自分を1人の人間として見てくれる水島と出会い、アデリーンは彼に心を開きます。やがてそれは恋心へと変わっていく。

水島さんは魅力的な人でした。私も好感度大です。

「小鳥の墓」 ジョエル・タニと水島の繋がり

ジョエル・タニ。『火星ダーク・バラード』に脇役として登場する殺人犯です。脇役なのに圧倒的な存在感がありました。

彼は 短編集『魚舟・獣舟』の中の1話 「小鳥の墓」 にも登場します。主人公として。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
「小鳥の墓」 はジョエルの子供時代のお話。
ひつじくん。
ひつじくん。
『火星ダーク・バラード』が上田さんのデビュー作だから 後から書いたんだね。
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先に 「小鳥の墓」 を読んでいました。読んだのは だいぶ前だったので再読。

それぞれ独立しているから 片方だけ読んでも違和感はありません。でもジョエルと水島さんの繋がりが見えてきて楽しめました。

「小鳥の墓」 を読むと分かること
  • 幼少期のジョエルが信頼していた刑事が水島さんのお父さんだった
  • ジョエルは水島刑事の息子だと気づいていた

最後、ジョエルは水島さんに撃たれますが、ジョエルにとって本望だったのではないかと思いました。

SF小説『火星ダーク・バラード』の魅力

読むと止まらなくなる『火星ダーク・バラード』の魅力をまとめました。

ここが面白い
  • ピリッと怖くて圧倒される世界観
  • 脇役なのに存在感あるジョエル
  • 意図的に作られた新人類
ひつじくん。
ひつじくん。
ジョエルが気になる。

脇役なのにこの存在感はなに? 気になる登場人物です。

水島さんに思いをよせるアデリーンの気持ちにも共感がもてました。ハードボイルドでSFで恋愛要素あり。

『火星ダーク・バラード』、「小鳥の墓」 と合わせてオススメです。

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ひだまりさん。
ゆるりと本をよんでいます。ミステリー、ホラー、SF、ファンタジー、何でもよみます。ほとんど小説、ときどき絵本。→ 詳しいプロフィールはこちら

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