- 『火星ダーク・バラード』あらすじと感想文
- 神月璃奈を殺したのは誰か
- プログレッシヴ計画
- アデリーンの思い
- 「小鳥の墓」
- 『火星ダーク・バラード』の魅力
少しだけネタバレあります。
彼女を殺したのは誰か。
上田早夕里さんの小説『火星ダーク・バラード』感想です。面白すぎて止まらなくなりました。デビュー作にしてこの完璧な世界観。
上田さんのSF小説を何冊か読んだけど、どれもハズレがなく圧倒されるんですよね。『火星ダーク・バラード』もめちゃくちゃ良かったです。
もくじ
『火星ダーク・バラード』あらすじ・評価
ハードボイルド・SF
火星治安管理局の水島は 神月璃奈とともに、凶悪犯ジョエル・タニを列車で護送中、奇妙な現象に巻き込まれて意識を失った。その間にジョエルは逃亡、璃奈は射殺されていた。疑いをかけられた水島は個人捜査を開始するが、その矢先、アデリーンという名の少女と出会う。
『火星ダーク・バラード』ネタバレ感想文
もっと早くに読めば良かった。そう、「小鳥の墓」を読んだ直後に。
上田さんの小説「小鳥の墓」に、本作『火星ダーク・バラード』の登場人物がでてくるんです。それは後ほど・・・。
『火星ダーク・バラード』舞台は火星。人類の一部は火星に住んでいます。
火星に住むのが日常化している未来。そこでも犯罪は起こり、”ミニ地球”のような社会でした。そして 人間の改変・・・。
神月璃奈を殺したのは誰か
火星治安管理局に勤める水島(地球で言うところの刑事)は、凶悪犯・ジョエルを護送中に奇妙な現象に巻き込まれて意識を失います。
ジョエルに逃げられ、相棒の神月璃奈は銃弾を受けて死んでいました。独自に調べ始める水島。
神月璃奈を殺したのは誰か。 ジョエルなのか、それとも自分なのか、あるいは自分の知らない第三者なのか。
神月璃奈を殺したのはジョエルてす。
最後まで彼を追いかける水島の執念を感じました。ジョエルを追う水島も、なぜか璃奈を殺した容疑者として追われる身に・・・。
遺伝子改変!?「プログレッシヴ計画」
ある計画の元、遺伝子を操作して生まれた人々が描かれていました。人間改変です。ある計画とは、「プログレッシヴ計画」。
人間の肉体を宇宙の過酷な環境などに適応させるために遺伝子改変を行うことを目指した計画。
低重力や無重量状態、宇宙放射線、極端な温度差・気圧差、酸素濃度の低い環境に対応できる人間を作る―。
「プログレッシヴ計画」の目的は、木星などの宇宙開発に優れた能力を発揮できる人類(プログレッシヴ)を作り出すことです。
もはや神の領域。そうやって作られたプログレッシヴ世代に1人の少女が登場します。アデリーンという優れた共感性を持った女の子です。
上田さんの小説は、人間改変とかがよく出てくるんですよね。以前に『華竜の宮』『深紅の碑文』を読んでいたので驚くことなく読めました。


アデリーンの恋と苦悩
相棒の死の真相を調べていくうちに、水島が出会った少女・アデリーン。彼女は遺伝子操作で作られた新人類です。
アデリーンには超共感性と呼ばれる受容(相手の感情を読む)能力がありました。自分が思っていること、嬉しいや悲しいといった感情が筒抜けに伝わってしまうんです。
私は普通とは違う。でも、望んで、こんな人間に生まれてきたわけじゃない
遺伝子操作が普通に描かれているから怖くなります。人間の欲望は果てしないですね。宇宙開発は夢があるけど、そのために人類を改変してしまうとは・・・。
自分を1人の人間として見てくれる水島と出会い、アデリーンは彼に心を開く。やがてそれは恋心へと変わっていくのです。
「小鳥の墓」ジョエル・タニと水島の繋がり
『火星ダーク・バラード』に脇役として登場する殺人犯ジョエル・タニ。
脇役なのに圧倒的な存在感があるんですよね。彼は短編集『魚舟・獣舟』の中の1話「小鳥の墓」にも登場します。主人公として。

先に「小鳥の墓」を読んでいました。読んだのはだいぶ前だったので再読。
それぞれ独立しているから、片方だけ読んでも違和感はありません。ジョエルと水島の繋がりが見えてきて楽しめました。
- 幼少期のジョエルが信頼していた刑事が水島の父だった
- ジョエルは水島刑事の息子だと気づいていた
最後にジョエルは水島に撃たれるけど、ジョエルにとって本望だったのではないかな。
SF小説『火星ダーク・バラード』魅力
読むと止まらなくなる『火星ダーク・バラード』の魅力をまとめました。
- ピリッと怖くて圧倒される世界観
- 脇役なのに存在感あるジョエル
- 意図的に作られた新人類
水島に思いをよせるアデリーンの気持ちにも共感がもてました。ハードボイルドでSFで恋愛要素あり。『火星ダーク・バラード』、「小鳥の墓」と合わせてオススメです。
Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)もおすすめ。Amazonが提供している書籍読み放題サービスです。
私も愛用しているKindle端末はこちら→Kindle Paperwhiteレビュー・メリットとデメリット|読書が快適になるアイテム



