- 『木曜組曲』あらすじと感想文
- 本が身近に感じられる恩田陸の小説
- 登場人物の魅力
- 次々と明らかになる真実
- トマトと茄子のスパゲッティ
- 時子は自殺か他殺か
少しだけネタバレあります。
木曜日が好き。大人の時間が流れているから。
恩田陸さんの小説『木曜組曲』感想文です。昔から好きな1冊を再読しました。登場人物が魅力的。
恩田陸さんの良い意味での 「アク」 が出ている作品です。
もくじ
恩田陸『木曜組曲』あらすじ&評価
重松時子は自殺か、それとも・・・
小説家・重松時子が薬物死を遂げてから4年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。なごやかな会話は 謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれて・・・。
本が身近に感じられる恩田陸の小説
恩田陸さんの小説を何冊か読んでいるけど、その中でも好きなのが『三月は深き紅の淵を』と『木曜組曲』です。

本屋大賞受賞作『蜜蜂と遠雷』(こちらは直木賞も) と『夜のピクニック』をあげる人が多い中で、あえての『三月は深き紅の淵を』と『木曜組曲』。
5、6人の登場人物が集まり、同じ空間でおのおの好きな本を読んでいるとか。自分の時間があって、それが読書なのだから共感せずにはいられません。
まったりとした空気感を感じられる小説が『三月は深き紅の淵を』と『木曜組曲』なんです。
『木曜組曲』ネタバレ感想文
好きだなぁ・・・。一転も二転もする展開や心理描写、登場人物たちが。えい子さんが作る料理も美味しそうだし、雰囲気が良いんですよね。
なんて言うんだろう。一筋縄ではいかないキャラと独特の心理描写がツボにハマるんです。
ずっと前に見たきりだったけど、映画も良くて。和やかな食卓の風景が一転、告白の嵐になったのは今でも忘れられません。
【登場人物の魅力】物書きを生業とした女たち

『木曜組曲』は小説家・重松時子の縁の深い者たちが、毎年、彼女を偲ぶために集う宴の模様を描いた物語です。
時子が好きだった木曜日をはさんでの3日間。登場するのは5人の女たちです。
- 絵里子・・・ノンフィクション・ライター
- 尚美・・・流行作家
- つかさ・・・純文学作家
- えい子・・・編集者
- 静子・・・出版プロダクション経営者
みんな物書きや編集者など本に関係している仕事についているのが興味深い。絵里子とえい子以外は時子と血の繋がりがある人たちでした。
彼女たちが味があって魅力的なんです。推理を繰り広げる絵里子、強い思いを秘めた尚美、サバサバしたつかさ、面倒見がよいえい子、鋭い静子。
重松時子を偲ぶ彼女たちが繰りひろげる心理戦。時子は毒を飲んでの自殺だと思われていたけど、次々と思いもよらぬことが明らかになります。
興味深かったのは物書きの視点です。事実 (?) が明らかになってきたころの絵里子の心理描写。
あたしはこのことを書くだろうか
発表するかは別として、書くことで気持ちを落ち着かせたりケジメをつけたりする。「書く」 という視点で物事を捉えている絵里子の描写が新鮮でした。
次々と明らかになる真実
木曜日の前日、夜の宴は時子の妹・静子の告白から幕を開けます。
あたしが時子姉さんを殺した
ここからドキドキで面白い展開になります。静子犯人説、次は尚美、次はえい子・・・と、順に思わぬことが明らかになっていく。
よくここまでみんな黙っていたものですね。腹を割って話してみると次々とでてくる、でてくる。
それにしても、話の中心にいるのは亡くなっている重松時子なんです。存在感がすごい。時子という天体の周りを、5人の女たちがくるくる回っているようでした。
【印象的なシーン】トマトと茄子のスパゲッティ
トマト系のパスタを食べる時、決まって思い出すシーンがあります。つかさ嬢の見合いの話。
あたしの経験によると、得意料理にトマト系の料理を挙げる男は危いの。特に、トマトと茄子のスパゲッティはいけないね。危険度ナンバーワンだわね
お見合いをした時に、相手の男性に得意料理をきいたら彼はトマトと茄子のスパゲッティと答えました。
なぜトマトと茄子のスパゲッティを得意とする男性は、危険度ナンバーワンなのかと言うと・・・
得意料理にトマトと茄子のスパゲッティを挙げる人は自分を過大評価する人が多いから。
- なんとなく料理が得意そうな気がするけど、実はそれしかできない奴が多い
- 満足感あるからすごく料理したような気分になる
なるほど。こういう小話が恩田さんの小説の魅力でもあるんですよね。
時子は自殺?それとも・・・
最後は一応の決着がつきます。一応としたのは、時子がいなくなった今、本当の真実は彼女以外にわからないから。
時子の服毒死は事故。
自殺でも他殺でもなく事故・・・という結末に落ち着きます。
その時その場にいたってことは不幸な偶然だけれども、もしかして必然だったのかもしれない。そんなふうに考えたことはない? あたしたちがあの日この家にいなかったら、時子さんは死ななかったのかもしれない。
↑これが全てでした。
あの日、5人の女たちが「うぐいす館」に集まらなければ時子は死ななかった。
ラストはえい子の思惑が明らかになります。・・・さすが敏腕編集者。みんなの重松時子を見つめ直した小説も読みたくなりました。
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