ミステリー・サスペンス

『坂の途中の家』あらすじ・ネタバレ感想と解説|家族愛と恐怖、気になる結末|角田光代

家
この記事に書かれていること
  • 角田光代さんの小説『坂の途中の家』あらすじと感想 (少しだけ解説)
  • WOWOWドラマのキャスト
  • 虐待事件の裁判員裁判と立場が変わるかもしれない恐怖
  • テーマ・家族愛について
  • 家族が脆くて尊く思えた結末

少しだけネタバレあります。

彼女はもう1人の自分かもしれない―。

角田光代さんの小説『坂の途中の家』感想です。重い・・・。なかなかガツンとくる心理サスペンスでした。

Amazonのレビューを読むと、子育てしている方の意見は割れていました。共感できる人と共感できない人とで。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
角田さんの本は以前に短編を読んだことがある。

佐野洋子さんの絵本のトリビュート作品『100万分の1回のねこ』の中の1話、「おかあさんのところにやってきた猫」 です。

『おかあさんのところにやってきた猫』角田光代/100万分の1回のねこ角田光代さん『おかあさんのところにやってきた猫』あらすじと感想です。少しだけネタバレあります。好きな言葉、家出したおちびちゃんについて書いています。...

とても温かなふわふわの物語だったので、そのイメージのまま読んでいたら180度雰囲気が違ってびっくりしました。

『坂の途中の家』あらすじ・評価

心理サスペンス

著:角田光代
あらすじ

子どもの虐待事件の補充裁判員に選ばれた里沙子。自分も幼い子どもを育てる母親だった。裁判で証言を聞くうちに、いつしか被告と自分を重ねて見ていることに気づくのだが・・・。

WOWOWドラマのキャスト

WOWOWドラマのキャストをまとめました。

主なキャスト
  • 山咲里沙子 (柴咲コウ)
  • 山咲陽一郎 (田辺誠一)
  • 芳賀六実 (伊藤歩)
  • 安藤寿士 (眞島秀和)

主演は柴崎コウさん、田辺誠一さん。山崎夫妻を演じます。小説は心にかかる負担が大きいけど、ドラマになるとどうなんだろう。

『坂の途中の家』ネタバレ感想文

心がささくれる・・・。心理サスペンスと謳っているだけあって本当にズシリときます。面白くて気づくと夢中になって読んでいました。

気になったのは3つ

  • 主人公の被害妄想ぶりが凄まじい
  • 裁判員裁判、大変そう
  • この家族、これからどうなるんだろう

最初から最後まで主人公・里沙子の心の闇が描かれていて共感ができなかったです。

危うい精神バランス

里沙子が可哀想に思いました。

夫がいて愛娘がいて、一見すると穏やかで幸せな家族。でも里沙子の心の中はボロボロなんです。夫に怯えてビクビクしながら子育てをする毎日。終いには本当に娘を愛せているのかわからなくなる・・・。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
彼女の精神バランスが危うい。

お子さんを持つ人が読んだら共感する部分もあるのかな。危うい状態のまま物語は進んでいきます。

虐待事件と立場が変わるかもしれない恐怖

虐待事件の補充裁判員に選ばれた里沙子。被告の水穂が娘を浴槽に沈めて死なせてしまった事件です。

ひつじくん。
ひつじくん。
彼女は裁かれている水穂の境遇に似ていたんだ。

幼い子どもがいて、夫にビクビクしていて、自分の母親とも折り合いが悪くて・・・。

証言を聞くうちに被告と自分を重ね合わせてしまうのもムリはないかもしれません。その描写が痛々しい。いつか精神が壊れてしまうのではないかとハラハラしました。

彼女はもう1人の自分かもしれない―。

想像しました。もしも私が裁判員に選ばれて裁かれている人が私と似た境遇だったら・・・。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
里沙子のように私も被告に肩入れしてしまうのかな。自分を庇うように。

少しボタンをかけ違えただけで立場が変わるかもしれない恐怖。ひとつ間違えば、向こうに立っているのは私かもしれません・・・。


ここで裁かれているのは被告

裁判

水穂に自分を投影させて彼女を庇う発言をする主人公を見て連想した作品があります。三谷幸喜さんの舞台『12人の優しい日本人』です。

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裁判員制度を描いた作品。裁判員に選ばれた12人が有罪・無罪を話し合う。陪審員2号の役を生瀬勝久さんが演じておられます。

『12人の優しい日本人』では、生瀬勝久さんが被告に自分の妻を投影させていました。でも最後に気づくんですよね。

ここで裁かれているのは自分の妻ではなく被告だということに。

その瞬間の生瀬さんの悟った表情。本書『坂の途中の家』の里沙子を重ねて見ていました。理性ではわかっているはずなのに、自分の妻や自分自身が裁かれているような感じになってしまう。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
裁判員に選ばれるなんて思いもしない。非日常だから、こういうのも理解ができる。

しかも被告の量刑を決めなければいけないという重圧・・・。なかなかハードです。

裁かれているのは被告。自分じゃありません。

いくら自分を重ねて見ていたからって、被告と里沙子は違いますよね。

実際のところ本当の心の内なんて本人にしか分からないわけで。裁判で量刑を決めなければならない難しさを感じました。

テーマは家族愛

私は、果たして文香を愛しているのか?

裁判員になって被告と自分を重ねてみている主人公。もしかしたら私も愛娘を・・・と考えたりするところに危うさを感じました。

里沙子の愛娘・文香(あーちゃん)は2歳10ヶ月。仕事で忙しく帰りが遅い夫・陽一郎との3人暮らしです。

子育てに奮闘する里沙子。帰り道、ぐずったあーちゃんから離れていたところを陽一郎に見られてギクシャクしたり・・・。

裁判員裁判、子育て、夫とのやりとりを通して最後に見えてくるのは、確かに存在する「家族愛」でした。

子どもは可愛いもの。自分の分身です。最後は愛を感じてほっとしたけど、それまでが長い・・・。

子育ての描写、あーちゃんのワガママぶりが目立ちます。子どもに愛しさを感じている描写が少ないので違和感を感じたり。

ひつじくん。
ひつじくん。
陽一郎がちょっと威圧的。

なんでも否定されるとヘコむかもしれませんね。里沙子の気持ちが離れていく・・・。

家族は修復不可能? 気になる結末

ラストは、もやもやしたまま終わりました。

裁判員を引き受ける前と裁判が終わったあとでは変わってしまった里沙子の気持ち。・・・前のようには もう戻れないと思う彼女が切ない。

ひだまりさん。
ひだまりさん。
この家族、これからどうなるんだろう? 修復不可能なんじゃないかな。

家族って空気のような存在のように感じるけど、決してそうではないのですね。些細なことで壊れてしまう脆いもの。

・・・だから尊く思えました。

著:角田光代
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