- 成田名璃子さんの小説『東京すみっこごはん 楓の味噌汁』あらすじと感想
- 安らぎのクリームコロッケ
- SUKIYAKI
- 楓の味噌汁
- 程よい苦味
少しだけネタバレあります。
すみっこごはんに集うワケありなひとたち。
成田名璃子さんの小説『東京すみっこごはん 楓の味噌汁』感想です。シリーズ4作目、連作短編集。ラストは温かな気持ちになりました。
でも、人生良いことばかりじゃない。自分の思い通りにならなくて悩みがつきません。
『東京すみっこごはん 楓の味噌汁』あらすじ
楓のお父さんが初登場!?
ひっそりと東京の一角にある共同台所 「すみっこごはん」 。今日も様々な人たちが訪れる。SNS映えを気にする読者モデル、普通の生活すら困難な中学生、修行中の料理人、そして思いがけなかった人・・・。天井の雨漏りをきっかけに、すみっこごはんの2階に足を踏み入れた常連たち。そこで見つけたノートの中身とは!?
- 安らぎのクリームコロッケ
- SUKIYAKI
- 楓の味噌汁
『東京すみっこごはん 楓の味噌汁』感想
『東京すみっこごはん 楓の味噌汁』3話の連作短編集です。どのお話も良かった。
- 「安らぎのクリームコロッケ」・・・SNS映えを気にする読者モデル・瑠衣の話
- 「SUKIYAKI」・・・貧乏な中学生・瑛太の話
- 「楓の味噌汁」・・・修行中の料理人・晴彦&楓の実の父親が初登場
3話ともちょっぴり切なくて苦味がありました。瑠衣と瑛太と晴彦さん、そして楓の父親。
この苦味はすぐに解決できるものでもなくて時間が必要ですね。
安らぎのクリームコロッケ

「安らぎのクリームコロッケ」 は SNSが普及してる今に通じる物語でした。
スポットが当たっているのは 読者モデル・瑠衣。「インスタ映え」 を気にする女の子です。
お金がなくてもあるように見せかけて、幸せに感じてないのに見せかけの幸せ顔で写真をアップする毎日。
充実しているように見えて、実はしていなかった。SNSの中ではよくあることです。でも、見ている読者はそんなに楽しみにしていないのが現実。
瑠衣の言葉が心に刺さりました。
無価値な人生だけど、写真の中の私はキラキラしてて、何者かになれてるの
リアルでは何者にもなれない自分。何をやっても中途半端。でも本当は何者かになりたくてたまらない。
瑠衣には見せかけじゃない、リアルな心の豊かさを手に入れて欲しいです。
SUKIYAKI
「SUKIYAKI」 は 中学生の瑛太にスポットを当てたお話です。
みんなが普通に手にしている幸せを彼は手に入れられない・・・。可哀想になりました。
誰かと囲む温かな食卓、新しいスニーカー、修学旅行、高校進学・・・。
みんなが普通に受け取れるものを受け取れないで育つと、怖くなるんですよ。差し伸べられる手とか、うまい話とか、自分なんかにそんなこと起こるわけないって。
「普通」 って当たり前にあることと思いがちだけど、当たり前ではないことに直面した1話です。
私が今まで過ごしてきた 「普通」 が 恵まれていたことに気づきました。
すみっこごはんで瑛太とみんなで囲む 「すき焼き」 のシーンが心温まりました。心残りは瑛太のその後です。

楓の味噌汁
すみっこごはん常連・金子さんと愛弟子・晴彦さんのお話です。そして楓の父親が登場しました。
表題作だけど、「安らぎのクリームコロッケ」 と 「SUKIYAKI」 の方が印象に残っちゃっいました。
「楓の味噌汁」 は だし巻き玉子が美味しそうでした。常連客で料理人・金子さんが作るたまご焼き。
居酒屋に行くと 必ずだし巻き玉子を頼みます。ほっとするんですよね。
最後の方に 瑠衣も登場。物語が繋がっていて嬉しくなりました。
切なくも心温まる『東京すみっこごはん 楓の味噌汁』
瑠衣と瑛太をみていると心がチクチクします。『東京すみっこごはん』4作目は 苦味があとを引きました。
キレイごとばかりじゃないから人間味を感じます。次に会うときは ひと回り成長した彼らを見れると良いな。



