- 江國香織さんの小説『きらきらひかる』あらすじと感想
- 奇妙な結婚生活から浮かびあがる愛について
- 銀のライオンについて
少しだけネタバレあります
まじりけのない恋愛小説。
江國香織さんの小説『きらきらひかる』感想です。江國さんの小説は学生のころにいくつか読みました。その中でも『きらきらひかる』はとても好きなお話です。
『きらきらひかる』あらすじ・評価
愛するということを全力で描いた1冊。
私たちは10日前に結婚した。しかし、私たちの結婚について説明するのは、おそろしくやっかいである―。笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな2人は全てを許し合って結婚した、筈だったのだが・・・。ちょっとかわった夫婦の日常を描いた物語。
『きらきらひかる』ネタバレ感想
アル中の妻とホモの夫。なかなか凄い設定だなと思うのですが、痛々しいくらいに愛情あふれた物語です。
まじりけのない恋愛小説

『きらきらひかる』は人を愛するということを全力で描いた小説です。
愛するということは綺麗なだけではありません。みっともないことや恥ずかしいことなどもあったりするし、時には自己嫌悪に陥ったりもします。それでも止められない。
アル中の妻・笑子と ホモの夫・睦月。奇妙な結婚生活から浮かびあがるものがありました。確かな「愛」です。
傷つけあう2人
些細なことで泣いてしまったり、イライラしたりと情緒不安定な笑子。壁に掛けてある水彩画のセザンヌにむかって歌をうたったり、「紺くんの木」に紅茶をあげたり。
・・・ちょっと変わっていますよね。
夫の睦月には 紺くんという恋人がいました。2人の結婚生活は傍から見るととても奇妙で、あやうくみえます。何度もお互いを傷つけあってしまう。
でも好きだから一緒にいるんですよね。お互いにその気持ちを持っていながら、うまく噛みあわない様子がたくさん描かれていました。
好きだから喧嘩もして気持ちをぶつけ合って・・・。切なさを感じる分、確かな愛情も感じます。
銀のライオン

睦月とその恋人の紺くん。同性愛者の彼らは 銀のライオンのようだと笑子は言います。とても印象的でした。
「睦月、銀のライオンの話を知ってる?」
色素の弱い銀のライオンは みんなと違うから仲間はずれ。自分たちだけの共同体をつくって生活しています。
銀のライオンは弱くて草食ですぐ死んでしまうそうです。実際にいるのかわかりませんが、とても貴重なライオンですね。
世間から外れているかのように見える彼ら。私から見れば 笑子も睦月も紺くんも3人とも銀のライオンに思えます。
いつまでもこのままで
笑子と睦月が結婚するとき、お互いの両親と友達には情緒不安定なことや同性愛者のことは伏せていました。それが今になって少しずつ生活を崩していく・・・。
どうして、このままじゃいけないんだろう。
妻と夫とその恋人。傍から見ると普通じゃないようですが、彼女にとっては自然な関係です。3人のやりとりは微笑ましいものがありました。彼の恋人・紺くんも面白くて好きです。
やがてお互いの両親にバレてしまいます。そして紺くんは2人の前から姿を消してしまう。なんとも不条理に思えました。
いつまでもこのままではいられないのですね・・・。
『きらきらひかる』感想まとめ
私はどうしてこんなにこの物語が好きなんだろう?
こんなに2人が傷つけ合っている姿が描かれているのに愛情を感じるからです。
いままで何度も読んだ『きらきらひかる』。痛々しいけれど切なさと温かさが同時に感じられます。結末が素敵なんですよね。



