『盗まれた顔』あらすじ・ネタバレ感想文|ミアタリ捜査の結末は?|羽田圭介
- 『盗まれた顔』あらすじと感想
- 見当たり捜査員
- 存在しないはずの顔
- 忘れられないという不適性
少しだけネタバレあります。
地道なミアタリ捜査。
羽田圭介さんの小説『盗まれた顔』感想です。羽田さんの本は『スクラップ・アンド・ビルド』を読んで以来。警察小説も書かれるとは意外でした。
『盗まれた顔』は、WOWOWドラマ原作小説です。
見当たり捜査官のお話だよ。
『盗まれた顔』あらすじ
アナログ捜査はどこまで通じる?
警視庁捜査共助課の白戸は、新宿で見当たり捜査をしていた。いつ現れるとも知れない手配犯を探し出す 「見当たり捜査」。見つける側の白戸が見つけられる側になったのは、中国人マフィアを逮捕した時だった―。
『盗まれた顔』ネタバレ感想文
見当たり捜査を題材にした小説は初めてで、新鮮でした。
特に盛り上がりがあるわけでもなく淡々と進んでいきます。ラストの展開が少し分かりづらかったかな。
全く関係がないのだけど、ドラマ『相棒』の陣川さんを連想しました。自分の部屋に指名手配犯の写真をズラーっと貼り付けている陣川さんです。
彼がやっていることもプチ見当たり捜査?
見当たり捜査員
指名手配犯の顔や特徴を覚えて、雑踏の中から捜し出す捜査員。
この捜査方法で実際に犯人を検挙しているのだからすごいですよね。ひとりで500人以上の顔を記憶している人もいるようです。
こういう捜査も大切なんだ。
主人公・白戸、谷、安藤の3人の見当たり捜査員が描かれていました。
手配犯の顔をひたすら頭に叩き込んで、どこかにいるはずの犯人を探し回る。そんなに簡単にヒットするハズないと思うけど、意外と検挙できてるのがビックリです。
顔全体のパーツの配置などを覚えるようですね。整形したりもするから、それでも見分けがつくように。
確かに耳の形は変わらないかも。
記憶力に自信がない私は、ここで描かれている捜査員を見ると職人技!?・・・と感嘆です。
存在しないはずの顔
淡々と進んでいく中で、中盤の展開にドキッとしました。存在しないはずの顔を白戸が見つけたときです。
須波刑事、かつての見当たり捜査員でした。でも彼は死んだはず・・・。
白戸が見たのは本当に須波なのか?
白戸が見当たりをしていて、対象が視界に入ったときのピンとくる様子が印象的でした。感覚が大事なんですね。
犯人を見つけるはずの白戸が見つけられる側に転じます。Nシステムや防犯カメラ・・・。
世界にはたくさんの誰かの目があって、少しだけ恐怖を感じた。
過酷な世界
『盗まれた顔』はミステリー仕立ての警察小説だけど、それより興味深かったものがあります。
手配犯を見つけて捕えない限りは評価してもらえない過酷な世界。そして彼らのメンタル面について。
無逮捕○○日目。こんな文章がたびたび書かれているんです。・・・それもそうか。そうそう簡単に、頻繁に犯人が見つかるワケがないですからね。
日々プレッシャーと戦いながら、無逮捕が続くとメンタルがやられていく。
逮捕して初めて評価されるという・・・。メンタル、間違いなくやられる。
忘れられないという不適性
3000人以上の顔を覚えている白戸。見当たり捜査員恐るべし・・・だけど、彼ならではの悩みがありました。忘れられないことです。
覚えた顔が手配犯なのか、かつての手配犯なのか、知人や有名人の類なのかわからなくなる。
犯人か知人なのか、わからなくなるのってもどかしくてイヤかも。・・・こういう悩みもあるんですね。
忘れられないのも辛いね。
アナログ捜査はどこまで通じるのか?
『盗まれた顔』は、見当たり捜査員にスポットを当てていたのが新鮮でした。
見当たり捜査って超アナログですよね。でも人の目や感覚はあなどれないもので・・・。実際それで犯人を逮捕しているのだから頭が下がります。
ただ、白戸の恋人・千春が絡んでるのかと想像していたのだけど期待しすぎました。ミステリーとして読むと少しだけ肩透かしです。
見当たりという捜査方法と、彼らの強靭なメンタルに感嘆した一冊。