- 東野圭吾さんの小説『人魚の眠る家』あらすじと感想
- 残酷な現実
- 脳死と臓器提供
- 母の愛と狂気
- 救われた命
少しだけネタバレあります。
母の狂気と愛。その先にあるのは―。
東野圭吾さん『人魚の眠る家』感想です。とつぜん家族をおそった悲劇。前半はあまりにも悲しくて目が潤んでしまいました。でも読み進めるにつれてだんだんと寒気がしてきます。
『人魚の眠る家』あらすじ
母の狂気と愛を感じた小説
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
仮面夫婦の播磨和昌と薫子の娘・瑞穂が、プールでおぼれて病院に運ばれた。彼らは急いでかけつけるが、待ちうけていたいたのは・・・。
『人魚の眠る家』感想
テーマは脳死と臓器提供。そして母の愛と狂気です。
一種のホラーにも思えてしまう。娘の死という受けいれ難い現実が全てのはじまりでした。
残酷な現実

悲劇は とつぜん訪れます。
仮面夫婦である播磨和昌と薫子の娘・瑞穂は、プールでおぼれて病院に運ばれます。播磨夫妻は急いでかけつけるのですが、そこで待ちうけていたいたのは・・・
―娘の脳死
その可能性が極めて高いという事実。あまりにも残酷な現実でした。
医師・進藤先生から告げられた言葉に言葉を失いました。回復の見込みはないのですね・・・。
このような状態に陥った場合に出てくるのが臓器提供です。それも娘の状態を知らされた直後にその話が出てきてびっくりしました。
脳死と臓器提供
脳死を考えるとき 人の死は何をもってそう判断するのか。
脳なのか、心臓なのか。
脳が死んでも心臓は動いています。魂がどこに宿っているかという考え方一つでかわってきますよね。
以前よんだ中山七里さんの『切り裂きジャックの告白』でも扱っていたテーマでした。

海外の国では ほとんどがそれは人の死だとされています。そして移植が行われている。
でも日本では違います。日本の法律では臓器提供する意思があった場合に限り「脳死を人の死」としています。・・・それによって生じる問題もあるのですが 後ほど。
播磨夫妻は臓器提供を拒み娘の延命を望みます。その決断は誰にも否定できるものではないですね。
臓器提供を決断すれば誰かの命が助かるのかもしれません。でもまだ温かい我が子が死んでいるなんて思えない・・・。
母の愛と狂気

最初は瑞穂の母・薫子に感情移入していました。
延命を望んだ彼女は 眠ったままの瑞穂を家で介護します。夫の和昌の部下・星野祐也とともにあることを施すのですが・・・。少し行きすぎていて狂気のような怖さを感じました。
星野はBMIの研究をしていました。
BMI(ブレイン・マシン・インター・フェース)とは、脳と機械とを信号によって繋ぐプログラムや機器の総称。
東野さんの得意分野・科学の登場です。コントロールをすれば瑞穂の手足が動くようになる。これが徐々に薫子を狂わせていくんです。
祖父に反対されても延命措置を続ける夫妻。そこにあるのは娘への愛情でした。だから余計に切なくなるんですよね。でも強さも感じました。
守るべきものがあると人は強くなれる。そう感じた小説でもありました。
臓器移植の壁
先ほど臓器移植における日本の法律について書きました。それによって起こりえる問題も描かれています。子供の場合です。
あるひとりの少女・雪乃ちゃんは心臓移植を望んでいました。でも国内ではドナーが限りなくゼロに近いため、莫大なお金を払って海外に行くしかないということ。
日本では臓器提供をする意思があって初めて脳死判定がされるのです。そのためにドナーの申し出がないという現状がある。
でもこの問題は簡単にクリアーできるものではないですね。命の定義に関わってきます。
東野さんの小説は今回も深く重い問を投げかけてきました。
救われた命
重いテーマが続いていましたが 結末は良かったです。播磨夫妻の決断が人の命を救いました。
救われた気持ちになりました。眠ったままの女の子は、それでも幸せな時を過ごしたんだろうと思います。
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