- 東野圭吾さんの小説『片想い』あらすじと感想
- ジェンダーについて
- 美月の告白と苦しみ
- メビウスの帯
- 『片想い』に込められた意味
少しだけネタバレあります。
オレは男だったんだ。ずっと前から。
東野圭吾さんの小説『片想い』感想です。WOWOWドラマ化されました。読んだのかなり昔だったから記憶が曖昧。
『片想い』あらすじ
ジェンダーを描いた長編ミステリー。
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
哲朗は10年ぶりに、かつての仲間と再開した。でも女性であるはずの彼女は男の姿だった・・・。
『片想い』感想
東野圭吾さん、社会テーマを扱うと逸品ですね。さすがです。ミステリーだけど、それよりもそっちの方に重きを置いた作品。
本作のテーマはズバリ、ジェンダーです。
そもそもジェンダーって何?

ジェンダーって?
昔に比べると最近では耳にするようになったジェンダーという言葉。
簡単に言うと、男らしさや女らしさを指しています。昔は男女差別が当たり前でしたが、最近では徐々にそれも無くなっていますよね。
本書を読んでいるとそれは曖昧で、境界線などないんだなということに気づきます。
美月の告白と苦しみ
物語は 帝都大アメリカンフットボール部 出身だった仲間たちを主軸に進んでいきます。
- 主人公の哲朗。
- 哲朗の妻であり、元女子マネージャーの理沙子。
- 同じく女子マネの日浦美月。
- 大学時代の美月の恋人、中尾功輔。
- 新聞記者の早田。
- ちょいちょい登場する須貝。
6人とも同じ大学のアメフト仲間です。
飲み会の帰りに哲朗は10年ぶりに美月と再会するのですが・・・、彼女は男の姿をしていました。
美月は 性同一性障害だったんです。
自分の生まれ持っている性に違和感を抱く。彼女は女として生まれてきましたが心は男。心と体の性別が一致しないことです。
ドラマ『ラストフレンズ』を思い出しました。性同一性障害で悩むルカと本書の美月がダブります。体は女でも、心は男。
美月の痛々しいまでの心理描写が描かれていました。
QB (哲朗のこと、クォーターバックの略) に憧れる美月。その苦しみは本人じゃないと理解できないものですよね。
想像することしかできませんが胸がキリキリと痛みました。彼女を演じるのは女優の中谷美紀さんです。
美月の告白はまだ続きます。人を殺してしまったと・・・。
メビウスの帯にいる私たち

深く共感したこと。
物語のテーマでもある “ジェンダー” に関することです。東野圭吾さんは、本書の登場人物を介して男と女の関係をこう書いています。
男と女はメビウスの裏と表の関係にある
馴染みがあるのはメビウスの輪ですかね。岡嶋二人さんの『クラインの壺』のレビューでも書きました。表だと思っていたら裏になっていたりするやつです。

この世のすべての人はこのメビウスの帯の上にいるということ。
男だからこうとか、女だからこうでなければならないとか。そんな境界線を引くこと自体がナンセンス。・・・人って様々だから境界線など引けないですね。
ただ単に男や女と一括りにしても、彼らの中には異性の部分もあったりする。ちょうど真ん中にいる美月は 男心と女心を持ち合わせています。
『片想い』に込められた意味
タイトルに込められた意味は 深く重いものでした。
受け入れられたいという我々の思いは、たぶんこれからも伝わらない。
ジェンダー、性同一性障害、半陰陽・・・。彼らの思いを受けて 少しでも苦しみが軽減される社会になれば良いなと思います。まずは知ることから。
他にも 「片想い」 が描かれていました。
美月の理沙子への切ない恋心、殺された戸倉の一方的な想い。人って、さまざまな片想いをしているんですね。
このタイトルしっくりくるなと、しみじみしました。
『片想い』悲しき結末
ラストは殺人事件の真相が明らかになります。犯人は彼。
まさか、あの人が・・・!?
彼とは誰のことか。やっぱりミステリーも上手い東野さん。背後には驚くべき組織が・・・。
ミステリーのポイントは2つです。
- 美月は本当に殺人を犯したのか
- 性同一性障害のウラにひそむ事件の真相
切ない結末でした。読んだ後に悲しさがジワジワときます。彼らを通して友情も感じる。何ともほろ苦い物語です。
本書にでてくる『サンタのおばさん』。
劇団金童の芝居として登場するのですが、実はこれ、絵本になっているんですよね。東野圭吾さん初の絵本・・・ということで、以前このブログでも紹介しました。

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