- 石川智健さんの小説『60 誤判対策室』(文庫版) あらすじと感想
- 刑事と弁護士と検事の異色タッグ
- 有馬の贖罪と冤罪の証明
- 60の意味
- tとfの境界線
少しだけネタバレあります。
急げ!タイムリミットまで、あと60分!?
石川智健さんの小説『60 誤判対策室』(文庫版) 感想です。単行本で刊行されていた『60 tとfの境界線』が改題されたもののようですね。
主演は舘ひろしさんです。老刑事・有馬を演じます。有馬刑事、カッコ良いなと思っていたので、舘ひろしさんで良かった。
『60 誤判対策室』あらすじ
刑事と弁護士と検事の異色タッグ!!
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
「誤判対策室」に配属されたのは、刑事・有馬、女性検事・春名、弁護士・世良だった。そこは冤罪の可能性を探る組織。刑事と検事と弁護士、異色のタッグで冤罪を証明できるのか!?
『60 誤判対策室』感想
面白かったです。早見和真さん『イノセント・デイズ』を連想しましたが、死刑囚の刑を止めようとする意図は同じでも全く別ものですね。

後半の展開にド肝をぬかれました。第五章 「六十分」 のところです。この展開は予想できませんでした。・・・有馬刑事、すごい。
本書は 60という数字に重きを置いています。
- 第一章 「六十年」
- 第二章 「六十の壁」
- 第三章 「刑事訴訟法第六〇条」
- 第四章 「六十兆個の細胞」
- 第五章 「六十分」
- 終章 「刑法第六〇条」
目次を見て、どんな意味があるのかと不思議に思いました。
改題されましたが、単行本でのタイトル “tとfの境界線” が意図するものが最後の方で明かされます。鳥肌がたちました。(・・・なだけに、改題は少し残念ではありましたが)
「60」 と 「tとfの境界線」 について感じたことは後ほど。
刑事と弁護士と検事の異色タッグ

ゴハンタイサクシツ。
カタカナで書くと 「ご飯対策室」 と漢字をあててしまいそうになりますが違います。(←ならない?)
「誤判対策室」 です。
表向きは 無罪を訴える死刑囚を再調査し、冤罪の可能性を探る組織。・・・でも設立の裏には 上層部の思惑が渦巻いていました。
主人公の老刑事・有馬、若手弁護士・世良、女性検事・春名の3名で構成されています。このキャラクターがまた良い味だしていて面白いんですよね。
有馬刑事がカッコ良い。彼には暗い過去がありました。それを引きずって冤罪かもしれない事件を調べはじめます。ある人への罪滅ぼしのために・・・。
有馬の贖罪と冤罪の証明
発端は有馬が通う小料理屋 「夕月」 の中倉綾子のひとことでした。2人組の客が殺人の犯行を仄めかしていたと。それを聞いた彼は事件を調べはじめるのですが・・・。
有馬刑事には暗い過去があるようです。彼の過去、そして綾子への贖罪がどういうことなのか気になりました。
事件も風化しているし、しかも刑が確定していて、いつ執行されるかもわからない状態。まさに時間との戦いです。
気になったところをまとめました。
- 古内博文は冤罪なのか。だとしたらなぜ罪を認めているのか。
- 有馬刑事の過去の過ち。
- 60の意味。
有馬さんの過去も気になりますが、タイトルにもなっている60という数字に この本の魅力がつまっています。
60の意味

本のタイトル 「60」 には様々な意味があります。有馬刑事の60だったり、刑法を指していたり・・・。
60にまつわるものを集めて、1つの物語が成り立っています。1つ1つの章で何を指しているのか気にしながら読むのも 本書の楽しさです。
感動したのは 「六十兆個の細胞」 でした。
人は六十兆個もの細胞からなっているそうです。しかもその細胞は それぞれが記憶を持っている。
六十兆の口がついているようなもので、私のような法医学者が、その声を聞くんだよ。
私はたくさんの細胞が集まってできている・・・って、普段はあまり意識しないのですが、手のひらをマジマジと見つめてしまいました。
この手のひらも 腕も足も、私を作っているもの1つ1つが記憶を持っている。人体の不思議とともに、その声を丁寧に聞く解剖医に敬意を表したくなってきます。
ここで登場する解剖医・税所さんも味があって面白い人物でした。頭蓋骨のポテトチップスは悪趣味だけど (笑)
tとfの境界線
単行本の方のタイトル 「tとfの境界線」 の意味を匂わせる終章を読んだ時に鳥肌がたちました。
trueとfalseの tとf 。真実と嘘の境界線です。
誤判対策室の3人が調べを進めるうちに浮上してくる人物がいました。矢野高虎と矢野琴乃。琴乃の父親が死刑囚・古内博文です。
古内が犯人なのか、高虎なのか、それとも琴乃なのか・・・。
どの証言が真実なのか嘘なのか、情報が少ない中では判断が難しいです。真実と嘘の境界線は曖昧にならざるをえない。結果、冤罪を引き起こしてしまう。
一応の決着はつきますが、裏があることを匂わせる結末でした。
ラスト2章の衝撃
ラスト2章の展開に衝撃を受けました。
第五章 「六十分」 と、終章 「刑法第六〇条」 です。有馬さんの行動にア然としました。そして、「誤判対策室」 設立の本当の目的は・・・。
ぜひシリーズ化してほしい小説です。
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