- 『まほり』あらすじと感想・レビュー
- 残酷無惨な歴史
- 順序が入れ違う恐怖
- 和んだシーン
- 蛇の目紋 (二重丸) と 「まほり」 の意味に戦慄
少しだけネタバレあります。
蛇の目紋に秘められた忌まわしき因習とは
高田大介さんの小説『まほり』感想・レビューです。『図書館の魔女』シリーズを書かれている高田さんの待望のミステリー小説。
少しずつ読み始めました。読み終わるのが勿体ないような感覚。でもラストだけは一気読みでした。止まらなかったです。
『まほり』あらすじ・評価
長篇民俗学ミステリ
大学院で研究を続けている大学生の勝山裕。飲み会ででた都市伝説に興味をひかれる。上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。この蛇の目紋は何を意味するのか?夏休みに飯山香織とともに調査を始めた裕。調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されているというのだ。代々伝わる恐るべき因習とは?そして「まほり」の意味とは?
『まほり』感想・レビュー
めちゃくちゃ面白かったです。さすがですね。本作『まほり』はミステリー。『図書館の魔女』とはまた違った雰囲気を味わえました。
始終ブキミな感じが拭えません。読み終わった後に表紙を見返してみると、ゾッとするんです。
「まほり」 の意味と、そのイラストが意図するものが明らかになった今、衝撃を受けました。
史料から見える残酷無惨な歴史

著者の高田大介さんは言語学者。
『図書館の魔女』を読んでいれば 濃密な言葉と重厚な雰囲気を持った小説だと推測がつきます。・・・期待を裏切りません。ミステリーでも、高田さんならではの小説だと実感しました。
史料を読み解くのは 大変ですね。難しく 全てを理解できないまま読んでいましたが、徐々に明らかになる歴史に背筋がヒヤリとしました。
歴史は遡ればきっと何らかの……残酷無惨に行き当たるもんですよ。
主人公の裕と香織は史料から村の歴史を遡っていきます。そこに見つけたのは思いもよらない残酷な歴史でした。
飢饉が起きて、子間引きが生じる。
今じゃ 子間引きなんて考えられないけど、昔は普通にあったことなんですよね。その出来事を史料から読み解く過程に『図書館の魔女』のマツリカを感じました。
マツリカは 語られなかった言葉からも推理を繰り広げる人です。
『まほり』は 子間引きの史実を突き止めるために、子間引きと検索をかけるのではなく、「子間引きを禁止するためのお触れが何度も出ていること」 に注目していました。
言葉には言葉以上の意味や背景があって、面白いと同時に圧倒されました。・・・残酷無惨な歴史です。
順序が入れ違う恐怖
『まほり』を読みながら 順序が入れ違う恐怖を味わいました。少しだけ本の内容に触れます。
飢饉が繰り返し起こるとどうなるのか。歴史は本来ならこの順です。
- 飢饉が起こる
- 子間引きが生じる
- 返り子の不始末が起こる
- 巫女となる
これを繰り返します。・・・とすると、いつしか 1番初めが分からなくなってしまう。その結果 こういうことが起こりえます。
飢饉を起こさないために巫女を作る。飢饉を起こさないために作る巫女は 言わば生贄も同然。
繰り返されることで生じてしまう忌まわしい歴史。1度でも狂ってしまうと そのまま根付いてしまう。
これだけでも怖いのに、さらに 「まほり」 という忌まわしき因習が、上州の村で行われていたのです。
和んだシーン
『まほり』は 怖いだけじゃなくて ほのぼのと和むシーンもありました。裕と香織の仲が進展していきます。
関係各所と折衝の上、追ってお返事申し上げます
裕の言葉には 私も吹き出してしまいました。高田さんが描く登場人物が好きです。裕に香織に淳くん。
メシヤマ (香織) の大きなおにぎり、美味しそうでした。ラストのハッタリを効かせた裕は かっこよかったです。淳くん、こんな弟が欲しいと思いながら ほのぼのしてました。
・・・これはもう、しょうがないですよね。
蛇の目紋 (二重丸) と 「まほり」 の意味に戦慄
二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られている上州の村。この蛇の目紋は何を意味するのか。
後半に全て明かされます。蛇の目紋が何を表しているのかと、「まほり」 の意味も・・・。
「まほり」 は ある儀式を指しています。忌まわしき因習です。
「まほり」 に漢字をあてると壮大なネタバレになってしまうので、ここでは書きません。言語学者の高田さんらしいタイトルです。
読み終わった後に本の表紙を見るとヒヤリとしました。そこに描かれているのは たくさんの蛇の目紋。今まで犠牲となった人々 (市子) の目紋なのかと思うと恐ろしくなりました。
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