『坂の上の赤い屋根』ネタバレ感想文・あらすじ|衝撃のイヤミス結末|真梨幸子
- 『坂の上の赤い屋根』あらすじと感想文
- ストーリーの簡単な解説
- 事件の主犯格はどちらか
- 「小椋沙奈=青田彩也子」説
- 死刑囚と獄中結婚したイヤミスキャラ
- 衝撃の結末と黒幕の存在
ネタバレあります。ご注意ください。
許せない、許せない、許せない!この私が化けの皮を剝がしてやる!
真梨幸子さんの小説『坂の上の赤い屋根』読書感想です。真梨さんの小説、久しぶりに読みました。
イヤミス小説だけど、思ってたよりドロドロ感がなくて読みやすかった
ドロドロ感を期待して読むと肩透かしかもしれません。でも私にはこれくらいがちょうど良かったです。
面白くて止まらなくなったよ。
真梨さんの小説で以前に読んだのは、『5人のジュンコ』と『6月31日の同窓会』の2冊です(←2冊とも、めちゃめちゃドロドロで精神がやられる読書体験でした)
そういえば最後の方に出てくる弁護士の松川凛子、『6月31日の同窓会』にも登場してましたね。
『坂の上の赤い屋根』あらすじ
イヤミス長篇小説
わたしが人殺しになったのは、この街のせい―。人格者と評判も高かった夫婦が、身体中を切り刻まれコンクリート詰めされて埋められた。血を分けた娘と、その恋人によって・・・。その残虐性から世間を激震させた『文京区両親強盗殺人事件』から18年後。事件をモチーフにした小説が週刊誌で連載されることになる。そこで明らかになる衝撃の真実とは!?
『坂の上の赤い屋根』はどんなストーリー?簡単に解説|イヤミス長篇小説
『坂の上の赤い屋根』は過去に起きた事件の真相に迫ったことで、衝撃の真実が明かされていくイヤミス小説です
小椋沙奈(作家)や橋本涼(編集者)、鈴木礼子(法廷画家)、大渕秀行(事件の犯人で死刑囚)など、様々な人の視点で描かれていました。
作家の小椋沙奈が小説のモチーフにしたのは、坂の上の赤い屋根の家で起きた「文京区両親強盗殺人事件」です。
裁判の判決は彩也子が無期懲役、秀行は死刑でした。ふたりの犯行とはいえ、主犯格は恋人の秀行とされたのですね。
沙奈が書く小説が犯人のふたりに迫る一方で、新たな波紋を引き起こす・・・。
イヤミス展開になっていくのが怖かった。ラストに、ある人物の思惑が明らかになるんだ。
『坂の上の赤い屋根』ネタバレ感想文|ここが面白かった!
『坂の上の赤い屋根』面白かったところは主に3つありました。
- 続きが気になるストーリー|青田彩也子と大渕秀行、どちらが主犯か
- ミスリードを誘う描き方|小椋沙奈と青田彩也子
- 強烈なイヤミス人物|法廷画家・鈴木礼子
主犯は大渕秀行と判決がでていたのだけど、真実は違うんじゃないかと思わせるんですよね。あと、小椋沙奈と青田彩也子のミスリードを誘う描き方とか。
この辺りが絶品。結末が気になり一気読みだった。
イヤミス感が薄い・・・と言っても、イヤーな人物は出てきました(←これが真梨さんの小説の醍醐味でもある)
法廷画家・鈴木礼子がヤバかった
彼女に関しては、イヤミス感というよりもホラー感を感じたくらいです。礼子が最強に怖い。そのことについては後ほど・・・。
続きが気になるストーリー|青田彩也子と大渕秀行、主犯格はどっち?
「文京区両親強盗殺人事件」の裁判で主犯は大渕秀行とされ、死刑が確定しました。青田彩也子は無期懲役です。
裁判では、あの二人の証言はことごとく食い違っていました。結局、どちらが主犯なのかあやふやなままです
これは事件をモチーフとした小説を書く小椋沙奈の言葉なんだけど、本を読んでいる私も気になったところです。
実は主犯は青田彩也子なんじゃないか
両親を殺めた彩也子の人物像が、なかなか見えてこないんです。秀行や彼女の周りの人々の視点では描かれているのだけど、彩也子自身の心理描写は描かれることはなく・・・。
真相は闇の中ということか。
謎は残されたままだけど、それはそれで楽しめました。彼女が何を考えて行動したのかは、彼女にしかわからない。そういうものなんですよね・・・と、妙に納得しました。
でも相手の気持ちを知ろうとすることは大切なことだと思うよ。
彩也子については、事件の真相よりももっと気になる描写があります。「小椋沙奈=青田彩也子」説です。
作家・小椋沙奈は青田彩也子なのか!?
「小椋沙奈=青田彩也子」説が浮上します。この展開に目が離せなくなりました。
あの人は、青田彩也子に間違いない。刑務所で記憶喪失になり、どこぞのボランティアに引き取られた。そして、噓の記憶を刷り込まれて、自分が青田彩也子であることも知らずに、この家を相続。さらには、この家で起きた事件をネタにした本で、ヒットを狙っている
無期懲役で服役していた彩也子は、実は出所していたのです。刑務所で記憶喪失になり、異例ではあるのだけど。
記憶喪失に陥った彩也子が、自分が起こした事件だとわからずに小説にしている・・・という恐ろしい図
なかなかすごい展開になってきたな。
これが真実なら、沙奈(彩也子?)の心理描写が気になるところですね。彼女はほんとうに記憶を失ったままなのか・・・とか。
ミステリーを読み慣れていれば、薄々「小椋沙奈=青田彩也子」と見せかけたミスリードなんじゃないかと気づくのだけど。それでも気になってしまう面白さがあります。
そ、そうだよね。でもこのミスリードをそのまま信じ込んじゃうイヤミスキャラがいるんだ。
法廷画家・鈴木(大渕)礼子|死刑囚と獄中結婚した最強イヤミスキャラ
『坂の上の赤い屋根』で一番印象強いキャラが法廷画家・鈴木礼子でした。後に死刑囚・大渕秀行と獄中結婚し、大渕礼子となります。
礼子は秀行が主犯格ではなく、青田彩也子が全て悪いのだと主張。
あの事件は、青田彩也子が主導して引き起こされたものです。大渕秀行は、青田彩也子に引き摺られる形で、共犯者になったに過ぎません
事件当時、秀行と彩也子は恋人関係にありました。彩也子に対する嫉妬心もあってイヤミスキャラ全開です。
礼子のキャラがイヤミスすぎて、やばい
最初はごく普通のキャラで、法廷画家という視点にも面白さを感じたのだけど。後半は、ヤバさMAXになります。秀行に利用されているのが痛々しいんですよね。
礼子の中では「小椋沙奈=青田彩也子」説が成り立っている
秀行と獄中結婚したものの、礼子は彼に利用されていただけに過ぎず、全ての怒りは小椋沙奈に向けられることになります。沙奈は青田彩也子ではないのに・・・。
青田彩也子の皮をかぶり、大渕秀行を誘惑し、そして犯罪に巻き込んだ。挙句、死刑判決。許せない、許せない、許せない!この私が化けの皮を剝がしてやる!
暴走した礼子は沙奈を刺してしまう。このシーンは怖すぎて言葉を失った。
しかも礼子は妄想癖のある人物でした。礼子視点で描かれた章って、どれが真実でどれが妄想なのか曖昧に描かれているんです。
事実だと思いながら読んでいたら、実は礼子の妄想(?)だったり・・・。
沙奈とのシーンも妄想なのかと思っていたら、真実でギョッとしたよ。
『坂の上の赤い屋根』衝撃のイヤミス結末|一番得をした人物が黒幕
『坂の上の赤い屋根』、これで終わりと思いきや実は黒幕が存在しました。
今回の一連の出来事で、一番得をしたのは誰か
一番得をした人物なんて・・・、そういえば、いました!小椋沙奈の編集者・橋本涼です。彼女と二人三脚で小説に関わってきた敏腕編集者。
「文京区両親強盗殺人事件」をモチーフにした小説は、世間が注目するような事件を引き起こしました。
ワイドショーも大騒ぎです。この一連の出来事を本にしたら得をするのは・・・。最後は編集者・橋本涼が練った計画が明かされていました。
裏で全てを操っていた黒幕。みんな橋本の手のひらで踊らされていたんだね。
けっこうすごい展開なんだけど、意外とドロドロ感はなかったです。真梨さんの『5人のジュンコ』や『6月31日の同窓会』の方がドロドロでした。イヤミスの免疫、ついてきたのかな、私。
最後の展開も面白かったけど、礼子のキャラが印象に残った一冊だったよ。