- 岡嶋二人さんの小説『クラインの壺』あらすじと感想
- 夢のシミュレーションゲーム
- クラインの壺の意味
- 消えた少女
- 仮想と現実
少しだけネタバレあります
あなたはもう、現実に戻れない
岡嶋二人さんの小説『クラインの壺』感想です。映画にもなっていますよね。レビューの評価が高く前々から気にはなっていたのですが、ようやく読めました!
井上泉さんと 徳山諄一さんによるコンビのペンネームのようです。2人で執筆とは珍しい。
『クラインの壺』あらすじ
現実が歪み虚構が交錯する恐怖―
上杉が関わることになったヴァーチャルリアリティ・システムの制作。ゲームだと思っていたそのシステムは、しかし・・・。
『クラインの壺』感想
これ、怖いですねー。特にラスト。仮想と現実がごちゃごちゃになり、どちらか分からなくなります。
1989年に刊行とのことなので、30年も前の作品。まったく古さを感じませんでした。読みやすくて1日で読んでしまいました。
ゲームの世界に入り込む!?夢のシミュレーションゲーム

夢のシミュレーションゲーム。本作は 疑似体験ゲームが出てきてテンションが上がりました!
ゲームマシーンの名前がK2、「クライン2」です。イプシロンの会社の人たちは「クラインの壺」と呼んでいます。
主人公の上杉が考案した『ブレイン・シンドローム』をもとに、イプシロンという会社が開発しているシミュレーションゲーム。ゲームの世界が現実となる!!ものです。
視覚、聴覚、味覚・・・と言った全ての感覚が現実と同じように体験できるバーチャルリアリティ・システム。仮想世界なのに現実のように体験できるものです。
まだ試作品で、上杉やアルバイトの高石梨紗が実際にプレイしてみて調節していくということですが・・・。

そういうのって、ちょっと不安がつきものです。もし戻れなくなったら・・・とか、いろいろ考えてしまうんですよね。
クラインの壺の意味
タイトル『クラインの壺』とは?
小説を読みながらネットで検索したことがあります。それはタイトルにもなっている『クラインの壺』です。
検索したものの、難しくてよくわかりません。わかりやすいものを探しているうちに、こちらのサイトにたどり着きました。
表だと思っていたら裏になっていたというような不思議な感覚に陥ります。

「クラインのつぼ」も同じようなものみたいですね。それがこの小説のタイトルになっているんです。最後まで読むと、なるほどと思いました。
内側だと思っていたら外側で、外側だと思っていたら内側で・・・。その性質を上手くミステリー仕立てにしているのが面白いです。
消えた少女
高石梨紗が行方不明になります。歯車が狂い始める。彼女はどこへ行ってしまったのか?
最初はテンション上がりながら読んでいましたが、後半にいくにつれて徐々に怖さが増してきます。ミステリーなんですね、と今更ながらに気づきました。
仮想と現実
ゾッとした文章があります。
ネタバレになりますが・・・、仮想と現実がごっちゃになってしまった状況です。
どうやって見分ければいいのだろう?今、僕の見ているものが、現実にそこにあるものかどうかを、僕はどうやって知ればいいのだ?この手は、壺の内側にあるのか、それとも外側なのか?
ツボの内側なのか、外側なのか。それは仮想世界なのか、現実世界なのかです。
「クラインの壺」や「メビウスの輪」は、内側だと思っていたら いつの間にか外側になっています。もしK2のようなマシーンがあって、意図的に操作されていたとしたら・・・。
でも逆に考えると、現実だろうがそうじゃなかろうが今いる世界が自分にとっては現実でなのであって、それ以外は現実ではありません。
「メビウスの輪」や「クラインの壺」のように、現実も仮想も裏表一体なのかもしれません。そう思うと怖さが少しだけ和らぐような気がしました。



