『向日葵の咲かない夏』あらすじ・ネタバレ感想文|物語は終わらない|道尾秀介

物語は終わらない・・・。
道尾秀介さんの小説『向日葵の咲かない夏』感想です。これまた凄い作品でした。後味悪いけどインパクトがある物語。
『向日葵の咲かない夏』あらすじ・評価
1度読むと忘れられない物語
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れたが、S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため事件を追いはじめた。
『向日葵の咲かない夏』ネタバレ感想文
ラストに近づくにつれてミチオの世界観が見えてきます。何度もあ然としました。決して後味が良い物語ではないけど、1度読むと忘れられない物語。
心の闇

9歳のミチオは級友のS君の死体を発見してしまいます。1週間後、S君は蜘蛛の姿に変えてミチオの前に現れるのだけど・・・。
S君の生まれ変わり。ミチオには蜘蛛のS君の言葉がわかるのです。
3歳の妹のミカも加わり、S君の消えた死体を探そうとします。この妹、やけにしっかりしてるなと思いながら読んでいたけど最後まで読むと納得。
途中ミチオがS君のことを信じられなくなったりして、心の中の葛藤が痛いほど伝わってきました。
ミチオは過去に起こったことをずっと引きずっていたのですね。
S君が抱える心の闇。楽しいストーリーではなく、人間の醜い部分を描いた作品です。共感は一切出来ませんでした。
『向日葵の咲かない夏』は人の悪の部分を描いています。
普段は眠っている心の闇。子供の視点なので純粋のようでいてクレイジーな怖さもあります。何かのきっかけで表面に現れるものなのかもしれません。
ミチオの世界観
ミチオは自分の世界観を壊さずに、でも何もかも壊してしまいたいと願っていたのかな。
悲しくなりました。自分が作り出してしまった世界だけど、結局そこで生き続けるしかないんですよね。
ラストは物語を終わらせようとする・・・かのようで、深読みすると物語は続くんです。新たに犠牲者を出して。


