「パッとしない子」 あらすじ・ネタバレ感想文|噛み合わない会話にヒヤリとする短編小説|辻村深月
- 『噛みあわない会話と、ある過去について』より 「パッとしない子」 あらすじと感想文
- 担任の先生
- 教え子自慢
- ある真実について
- 針の言葉
- 会話は心のコミュニケーション</li>
ネタバレあります。ご注意ください。
過去に向き合った結果は・・・。
辻村深月さんの小説『噛みあわない会話と、ある過去について』より、「パッとしない子」 の感想です。
「噛み合わない」というのがピッタリな1話だった。
『噛みあわない会話と、ある過去について』あらすじ
ヒヤリとする4つの物語
「過去」に向きあう人物たちを描く辻村深月さんの短編集。
「パッとしない子」 ネタバレ感想文
「パッとしない子」を読んで、読後は切なくなりました。
主人公・美穂の立場で読んでいると最後にガツンとくるんです。
担任の先生
小学校時代の担任の先生を思い出しました。
小学校低学年のときの担任だった2人の先生です。1人は生徒を平等に可愛がるA先生、もう1人は自分が可愛いなと思う子を特別に可愛がるB先生 (本書でいうところの主人公・美穂)
私は小学生の時も小さかったので、背の順で並ぶと1番前か良くて2番目でした。
小さいものは可愛い。たぶんその理由でB先生に可愛がられていました。担任がA先生に変わったとき、あれ?なんかあまり可愛がってくれない・・・。
このことを父に相談したら、父はこんなことを言いました。
「B先生は小さい子を特別に可愛がる先生なんだね。けどA先生はみんなを平等に可愛がる先生なんだよ」
幼ながらに、平等のA先生を尊敬したのを思い出した。
「パッとしない子」 では、特定の生徒を可愛がるB先生のような人・美穂が主人公のお話です。
教え子自慢
5人組男性アイドルグループ「銘ze」高輪佑の弟は、小学生のとき美穂が担当するクラスの生徒でした。
自分の教え子(の兄)が有名になったら嬉しいものですよね。自慢したくなる美穂の気持ちもわからないではないです。
今は有名で凄い子だけど、子供の頃はパッとしない子だった。・・・でも、これ褒め言葉でしょうか? 教え子のことを貶しているようにも聞こえます。
パッとしない子。
先生、ぼくのことを、当時はパッとしない子だったって、あちこちで言ってるって本当ですか?
佑が母校を再び訪れたとき、美穂に言った言葉です。・・・言われる側からしてみれば、あまり良い気持ちにはなりませんね。
物語が進むと心がザワザワしてくるよ。
ある真実
ある真実が浮かび上がってきました。
先生がかわいがっていたのは、ぼくでもぼくの弟でもない誰かだった。
これは痛いなぁ。可愛がっていなかった教え子のことを、さも可愛がっていたかのように話す美穂。
まさに痛恨の一撃。記憶違いや思い込みって 恐ろしい・・・。
針の言葉
深い意味はなく、なんの考えもナシに言った言葉でも相手を傷つけることがある。
おーなり由子さんの絵本を思い出しました。『ことばのかたち』です。もしも、言葉に形があったら?それはどんな形をしているのだろう・・・という絵本。
誰かを傷つける言葉は針の形をしていたらどうだろうというのがあって。佑を傷つける「パッとしない子」という言葉は、針のカタチのようですね。
言葉って目に見えないから、誰かを傷つけたとしても傷口が見えるわけではないんだ。
だから気付きにくい。でも見えないだけで、相手は傷ついているかもしれません。
もし言葉にカタチがあったのなら、美穂もこんなに相手を傷つけることはなかったのかな。
会話は心のコミュニケーション
4話すべて読んだあとで感想を書いています。「パッとしない子」と、ラストの「早穂とゆかり」は似た雰囲気のお話でした。
その2つを読んで感じたことがあります。
会話が噛み合わないのは、とても哀しいこと。
3話目の「ママ・はは」でも会話が噛み合っていない親子が登場しました。会話は心のコミュニケーションです。
噛み合っていないということは、気持ちも分かり合えていないということだ。
私もコミュニケーションは苦手です。過去を振り返ってみても、すれ違いのままで放置していること多いかも・・・。
この本のようなカタチで思い知らされることになったら怖いですね。