深すぎる闇、結末は・・・『沈まぬ太陽 会長室篇』ネタバレ感想とあらすじ|山崎豊子

- 『沈まぬ太陽 会長室篇』あらすじと感想文
- 国民航空の再建
- 権力とお金にまみれた世界
- 最も危険な動物
- 行天の最後
- 恩地のラストとモデルの小倉さん
少しだけネタバレあります。
深すぎる闇、そして結末は・・・
山崎豊子さんの小説『沈まぬ太陽』感想文です。「会長室篇」 では私利私欲にまみれたトップや政治家がうようよ出てきます。黒い世界でした。
このお話はずいぶん脚色しているのかなという印象を受けました。

けっこう深い話だったよ。


『沈まぬ太陽 会長室篇』あらすじ
闇はなおも深く
御巣鷹山の墜落事故以来、組織の建て直しを進める国民航空。恩地の異動先は、会長室だった・・・。
『沈まぬ太陽 会長室篇』感想 (ネタバレあり)
利根川総理にたのまれて国見会長が国民航空の再建に乗りだします。
国見会長には好感が持てました。人の痛みが分かる真面目な経営者という印象です。
国民航空の再建|国見会長が目指すもの

国民航空は組合が4つに分裂していました。まずはその統合を計ろうとするんですよね。そのために設立されたのが「会長室」です。
やっちゃって下さい!!・・・と思いながら読んでいました。恩地を側におき、行天を常務取締役にします。

いままで日陰だった主人公にやっとスポットが当たった!
でもうれしく思ったのも束の間・・・。事態はそこまで甘くはなかったのです。
権力とお金にまみれた世界
御巣鷹山 飛行機事故から1年。でも4つの組合は統合するどころか事態はいっそう悪くなるばかり・・・。裏には私利私欲にまみれたトップや政治家の腹黒い思惑がありました。
こんな世界はイヤだ!
思わず叫びたくなります。ドロドロすぎて何がなんだか分からない。10年の先物予約、ニューヨークのグランドホテルなど・・・。
人の醜い争いが見事に描かれていました。何度も絶望感に打ちひしがれる国見会長がかわいそうになります。

権力やお金がまじると怖い。
世界で最も危険な動物
固まってしまった場面がありました。恩地がグランドホテルの視察に来たときに立ち寄ったところ。ニューヨーク・ブロンクス動物園でのことです。
そこにある「鏡の間」には、こんな言葉が書かれていました。
THE MOST DANGEROUS ANIMALTHE WORLD(世界で最も危険な動物)
鏡に映っているのは自分自身、すなわち人間です。「鏡の間」は実際にあったらしいですね。ただ 今はもう取り壊されてないようだけど。
魑魅魍魎がうようよ登場するこの小説を読むと、ウィリアム・コンウェイ博士によって設けられた「鏡の間」の存在が的を得ている気がしてゾッとしました。

世界で最も危険な動物は人間・・・。
行天の最後

本書に掲載されているエッセイで、山崎さんは行天について語っていました。それも読みどころのひとつ。
最後は横領が発覚、行天は告訴されてしまいます。
大学の同窓でともに国民航空に入社した恩地と行天。恩地が海外をたらい回しされている時に、行天はエリートコースを順調に進んでいったのに・・・。一転、転落の人生になりました。

どこで歯車が狂ったんだろう。人生はわからないものだ。
恩地のラストとモデルの小倉さん
ラストはなんとも言えない結末を迎えます。やり切れなさと絶望感を感じました。これが世の中というものか・・・。無情です。
恩地は再びアフリカへ。
アフリカの夕陽ってすごいらしいですね。私は見たことないのだけど。1冊目の「アフリカ篇」を読んだとき見てみたいと思いました。
明日を約束する沈まぬ太陽。その夕陽を再び見て恩地は何を思うのか。
『沈まぬ太陽』を読み終わったあとに主人公のモデルとされている小倉さんが気になりました。
小倉さんは定年退職後、アフリカ研究家、動物写真家、随筆家として活躍したようです。理不尽な僻地勤務の傍らアフリカの大自然に魅せられたのでしょうね。

少しだけ救われた気分になったよ。


