『青の炎』あらすじ・ネタバレ感想文|壊れていく心と孤独な闘い|貴志祐介
- 『青の炎』あらすじと感想文
- 緻密な作戦
- すさんだ心
- 守られるべきはずの存在
- 切ない結末
少しだけネタバレあります。
切なすぎる殺人者―。
貴志祐介さんの小説『青の炎』感想です。これは切なくて悔しい。二宮くんが主演の映画にもなっていますね。映画は見ずに本を読みました。
最後は悲しかったです。
私が感じた「切なさ」について、本書の内容を交えながらのレビューだよ。
『青の炎』あらすじ
きっと切ない殺人者に涙する
秀一は、母と妹と3人で幸せに暮らしていた。そんなある日、かつて母の夫であった曾根が現れた。幸せな時間は壊される。警察も法律もあてにはならないと思った秀一は・・・。
『青の炎』ネタバレ感想文
こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか―
これは映画のキャッチコピーになっている言葉。「せつない殺人者」とは、主人公の秀一を指しています。
みんな本を読んだ後に感じるのは「切なさ」なんじゃないかな。
どの部分にそれを感じるのかは読み手によって違ってきそうです。殺人を犯してしまったことなのか、その後の彼の様子に対してなのか、彼の周辺の人物に対してなのか・・・。
切なさのオンパレードだね。
緻密な作戦
『青の炎』は殺人を犯す17歳の少年を描いています。
緻密に計画をたてる姿はとても不安定で危うさを感じました。彼は2人の命を殺めてしまうのです。
ある日突然現れた母のかつての再婚相手・曽根隆司。酒びたりで暴力をふるう最低な男でした。殺したくなる主人公の気持ちもわからなくはないけど・・・。
秀一がたてた緻密な計画 「電撃作戦(ブリッツ)」が、悲しいことに成功してしまう。
でも完全犯罪なんてありえません。一部始終を幼馴染みの石岡拓也に見られていました。やむなく「スティンガー」と名づけた計画をねり始める秀一。
徐々に壊れはじめる彼を見ていると悲しくなる。
秀一のすさんだ心
2つの犯罪を犯した主人公の心はすさんでいきます。罪悪感、いつ捕まるかもしれぬ恐怖を感じながら・・・。
守られるべきはずの存在なのに、1人で背負わなければならなくなったのは切ないです。もう後戻りは出来ないところまできてしまいました。
まだ17歳の少年なんだよね。
守られるべきはずの存在
なぜ秀一は1人で全てを背負いこんでしまったのか。
彼を守ってあげる存在がなかったからです。母親も相談に行った弁護士も、彼を守ってあげられませんでした。
その結果、彼はひとりで戦う道を選ぶことになります。全く不条理です。もうちょっと何とかならなかったのか・・・。
悔しさを感じた。
結局、弱い立場の人はどうすることもできないんですよね。彼は1人で頑張ってしまう性格の持ち主でした。まだ17歳なのに・・・。健気です。
切なさゆえか、主人公に肩入れしたくなる。
『青の炎』切ない結末
『青の炎』は悲しさや切なさ、悔しさといった気持ちが後をひく小説。
秀一の友達の優しさに触れて温かい気持ちにもなりました。とくに彼のことが好きな福原紀子とのやりとりは微笑ましくて。
最後の展開は、紀子に切なさを感じる人が多いんじゃないかな。
秀一は2件の容疑者になります。彼のとった行動に涙しました。たぶん彼はそうするという予感があったから・・・。
読み終わってからも、秀一が独りで戦わなくてはいけなかった現実に直面し、じわじわと切なくなりました。
とても心を揺さぶられる小説だった。