『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊かなえ【あらすじと感想・解説ネタバレ】衝撃の結末!毒親か聖母か―
- 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』あらすじと感想 (解説)
- テーマ 「毒親」 について
- 「毒親」 と 「聖母」 について
ネタバレあります。
私はあなたの奴隷じゃない!
湊かなえさん『ポイズンドーター・ホーリーマザー』表題作の感想です。「ポイズンドーター」 と 「ホーリーマザー」 。続きの2話でした。
テーマは毒親。
なかなか面白かったよ。
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』はWOWOWでドラマ化されましたね。ドラマは全6話です。
小説『ポイズンドーター・ホーリーマザー』あらすじ
彼女は毒親か、それとも聖母か
女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から同窓会の案内が届いた。母親に会いたくなかった弓香は欠席すると伝える。理穂とメールのやりとりをするうちに、思いがけない訃報を聞くのだった・・・。
小説『ポイズンドーター・ホーリーマザー』ネタバレ感想・解説
「毒親」 という言葉って いつからこんなに浸透したんだろう。
どこからどこまでが 「毒親」 で、どこからが違うのか。その境界線はどこからなのか。
きっちり線引きできるものでもないけどね。
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』はすれ違う親子が描かれていて哀しくなりました。
「毒」 は誰?
「ポイズンドーター」では、女優・弓香の視点で毒母が描かれています。
自分の母親を 「毒親」 だと思い込む弓香。そもそも 「毒親」 とはどういった親なのか。あまり馴染みがなくて検索してみました。
そういう意味では、確かに弓香にとって母は毒親なのかも。
あれもダメ、これもダメ。弓香は母に従うしかなくて頭痛薬が手放せなくなるのだから・・・。
「ポイズンドーター」だけを読むと彼女が不憫に思えました。・・・なんでもかんでも従ってしまう弓香にはイライラしたけど。
でも少し違和感。ふとタイトルの意味を考えました。
ポイズンドーターって・・・「毒娘」!!「毒」を持っているのは誰か?
続きの「ホーリーマザー」を読むと毒はどちらなのかがわかります。
「毒親」 と 「聖母」
「ホーリーマザー」は、弓香の同級生・理穂の視点で聖母が描かれていました。
実はこの2話で描かれている 「毒親」 と 「聖母」 は同一人物。弓香の母・佳香なんです。
視点を変えると 「毒」 にも 「聖」 にもなります。子ども目線では 「毒」 でしかないけど 「愛」 が隠れているかもしれません。
存在する愛情に気付かず、すれ違う母と娘。事態は取り返しのつかないことになります。
イヤミスたっぷりだね。
母の愛
どこからが 「毒親」 で、どこまでがそうじゃないのか苦しくなりました。
将来、こういう職業に就いてみれば? と提案してはいけないのでしょうか。親の職業を継いでほしい、と願ってはいけないのでしょうか
これが支配であり、毒親だというのなら、そうしない親は何と呼ばれるのか。
子どもの幸せを願うゆえの母の想いです。言われる方はウザイと思っちゃうかもしれません。でも子のことを想ってのことだと思うと切なくなりました。
世の中には愛情の欠片もない正真正銘の 「毒親」 もいるよね。でも弓香の母を同じ括りにしてしまうのは違う。
正真正銘の 「毒親」 が世間にあまりいないことを願いたいです。
切なさが後をひく結末
6つの短編集。どれも誰かとのすれ違いばかりが描かれているから、結末は切なさが後をひきます。
言葉で気持ちを伝えるのは難しいけど、とても大切なこと。
身に染みました。湊さん、読みづらいから一人称はもうそろそろいいんじゃないですか? と思うけど、これも魅力なのかな・・・。