『悪徳の輪舞曲 (ロンド)』あらすじと感想文|悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズ4|中山七里
- 『悪徳の輪舞曲 (ロンド)』あらすじと感想文
- 悪辣弁護士・御子柴礼司について
- 母は殺人者なのか?
- 疑惑
- 結末について
少しだけネタバレあります。
犯人は、御子柴の母!?
中山七里さんの小説『悪徳の輪舞曲 (ロンド)』感想です。悪辣弁護士・御子柴礼司 (みこしばれいじ) シリーズ、『贖罪の奏鳴曲 (ソナタ)』『追憶の夜想曲 (ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲 (レクイエム)』に続き4作目。
御子柴の家族が登場。しかも実の母親が殺人!?
これは気になる。大好きなシリーズなんだ。
『悪徳の輪舞曲』あらすじ
最凶のどんでん返し!
14歳で殺人を犯した悪辣弁護士・御子柴礼司を妹・梓が30年ぶりに訪れ、母・郁美の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫を自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されたという。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は 肉親とどう向き合うのか。そして母も殺人者なのか?
『悪徳の輪舞曲 (ロンド)』ネタバレ感想文
『悪徳の輪舞曲 (ロンド)』では、今までになく御子柴の心が揺れ動きます。
彼の家族が登場するんですよね。御子柴 (かつての園部信一郎) の犯罪によって壊れてしまった家族。母の郁美、妹の梓、自殺した父親・・・。
切なくなっちゃった。
このシリーズの魅力は、なんと言っても御子柴礼司、・・・彼にある。
少年時代に殺人を犯し、「死体配達人」と世間を騒がした主人公です。
少年法のため罰せられず、御子柴礼司と名前を変えて弁護士となりました。彼の悪辣ぶり、最後のどんでん返し、そして贖罪・・・。
感情がたくさん揺れ動いたよ。
母は殺人者なのか?
冷静な御子柴が戸惑う様子が描かれていて、人間味を感じました。
自分が犯した罪により一家がバラバラになっても、謝罪もしなければ冷たく突き放す御子柴。かつてないほど当惑していました。・・・何か思うところがあるのでしょうね。
母、郁美は 本当に再婚した夫を殺めてしまったのか?
郁美は否認しているけど、見過ごせない証拠が次々とあがってきます。有罪か無罪か―。
冒頭から郁美が夫を自殺に見せかけて殺害するシーンが描かれていました。やっぱり彼女はクロ? この母にこの子あり・・・ということなのか。
七里さんのことだから、最後はどんでん返しが待っているんだろうな。
鑑定センターの氏家と御子柴が “犯罪気質の遺伝” について話しているのが印象的でした。
犯罪気質は遺伝するのか。
氏家の言葉がさっぱりしていて、心なしかホッとします。親がサイコパスだから子もサイコパス、親が殺人気質だから子も・・・なんてことはなくて。
でもこれだけ世の中に犯罪があふれているから、一歩間違えれば同じふうになるかもしれないという恐怖は常々もっています。
このシリーズを読むと、いろんなことを考えてしまう。
郁美に浮上した疑惑
郁美に、もうひとつの疑惑が持ち上がります。御子柴の父が自殺したときの状況と、郁美の再婚相手が自殺した状況が酷似していました。
彼女は前の夫も今回と同様に自殺に見せかけて殺害していたのか?
悪徳は輪舞曲のように同じ旋律をくり返すのかー
『悪徳の輪舞曲』このお話にこのタイトル、ピッタリだと思った。
真黒に染まった状況を御子柴弁護士はひっくり返すことができるのか。残りページ数も少なくなり、ドキドキが止まらなかったです。
ラストは感動!
ラスト、郁美のことばに泣きました。
あなたが殺人を犯そうが、世間から怪物と言われようが、お父さんとお母さんはあなたのために必死だった
家族と縁を切り、まったく切り離して生きてきた御子柴だけど、両親は彼を見捨てていなかったのですね。心が温まると同時に、父親の決断に切なくなりました。
このシリーズを読むと、少年Aの事件を思い出す。
小説だから御子柴にも好感が持てるわけで。実際に極悪非道な犯罪を犯して、社会に出てきた人が身近にいたら好感が持てるはずがない・・・と、複雑な心境にもなりました。
『悪徳の輪舞曲』大どんでん返し、最凶の結末
大どんでん返し、ありました!!
法廷シーンも圧巻なんですよね。ラストのどんでん返しは法廷でくり広げられます。御子柴礼司の弁論がすごい。
郁美の冒頭の殺害シーンは、なんとなくこういうことかな? と想像ができたのだけど、再婚相手の思惑にはビックリしました。
本当に最凶のどんでん返しだった(←最強じゃなくて最凶)。
御子柴がかつての犯罪を犯さなかったら、今回のことも起きなかったのかもしれません。実父の自殺も。そうであれば郁美も再婚しなかっただろうし・・・。
一つの犯罪がまた犯罪を呼ぶ。
犯罪の連鎖は恐ろしいね。