『あの日、君は何をした』ネタバレ感想文・あらすじ|家族が抱える闇と衝撃の真実|まさきとしか
- 『あの日、君は何をした』あらすじと感想文
- 息子を亡くした母の狂気
- 真実の追求
- 三ツ矢&田所ペアの掛け合い
- あの日、大樹は何をしたのか?
ネタバレあります。ご注意ください。
わからないから知りたいのです。
まさきとしかさんの小説『あの日、君は何をした』読書感想です。ラストは悲しくなったけど、面白くて一気読みでした。
母と息子、母と娘・・・。
これは母子の物語だ。
お互いを理解しているようで、でも心の奥底にあるものには気づけなかったりするんですよね。歯がゆい気持ちと切なさを感じた物語でした。
『あの日、君は何をした』あらすじ
家族が抱える闇と愛
北関東の前林市で暮らす主婦の水野いづみ。平凡ながら幸せな彼女の生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって一変する。大樹が深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていたのはなぜなのか。15年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心な妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は必死で辰彦を捜し出そうとする。捜査に当たる刑事の三ツ矢は、無関係に見える2つの事件をつなぐ鍵を掴み、衝撃の真実が明らかになる。
『あの日、君は何をした』ネタバレ感想文
『あの日、君は何をした』は2部仕立てで描かれたミステリー小説です。
- 【第1部】2004年、女性連続殺人の容疑で逮捕された林竜一容疑者が警察署から逃走し、自転車に乗った不審人物(中学生の水野大樹)がトラックに激突して死亡する
- 【第2部】2019年、アパートの一室で殺された女性の事件を、刑事の三ツ矢秀平&田所岳斗が捜査する
「あの日、君は何をした」の「君」は中学生の水野大樹を指しています。
夜中に家を抜け出した大樹は職務質問した警察から逃げ、トラックに激突して死亡。読後感はあまり良くなかったけど、面白くて一気に読みました。
- 母の狂気にヒヤリ
- 真実を追求する三ツ矢の姿勢
- 三ツ矢と田所の掛け合い
- 最初から最後までの謎「あの日、大樹は何をしたのか」
このあたりが面白かったよ。
「あの日、大樹は何をした」のかを最初から最後まで追求していく物語でした。彼の母親や姉、田所刑事など、様々な登場人物の視点で描かれているのが興味深かったです。
視点が違えば思いも様々ですね。
毒親?息子を亡くした母の狂気
インパクトが強かったのは狂っていく母親たち、大樹の母・いづみと、辰彦の母・智恵です。
彼女たちが登場することでイヤミス感もあり、怖さが増しました。毒親・・・とはちょっと違うけど、息子を思うあまり危険な方向へズレていくのは恐怖しかありません。
序盤から、何か変だなと思ったんだ。
第1部では
まだ大樹が生きている頃の幸せな家族の風景が、いづみの描写ひとつで、うん?と違和感を抱く。
みんなに見てほしい。みんなに見せつけたい。私がこんなに幸せだということを
・・・幸せなら、見せつけなくても良いじゃん。
誰かに見せつけて優越感を味わう。いづみの心理描写に危うさを感じました。大樹が死んでからは彼女の心が壊れていきます。
第2部では
辰彦の母・智恵も息子が行方不明になった辺りから、おかしな方向へ狂い始めました。
「恐ろしい女よ。私の息子を殺したの。証拠ならあるわ。ほら!」
疑心暗鬼になって息子の妻・野々子を疑い、孫を彼女から引き離そうとする。・・・思い込みって怖いですね。誰も正してくれないから尚更です。
子どもを失うと、こんなふうになってしまうものなのかな。
真実を追求する三ツ矢|わからないから知りたい
中盤から大樹がトラックに激突した事故と、アパートの一室で殺された女性の事件が繋がっていきます。
事件を調べていて大樹に行き当たった三ツ矢刑事の言葉が印象的でした。
「彼はなぜトラックに激突しなくてはならなかったのか。なぜパトカーから逃げなくてはならなかったのか。死に至るまでの理由がわからない。わからないから知りたいのです」
三ツ矢刑事、とても素直で正直な人だと思ったよ。
「わからないから知りたい」
当たり前のことだけど、それを言葉にして何の恥じらいもなく言えちゃう三ツ矢が素敵です。
「すべての人間は、生まれつき、知ることを欲する」とはアリストテレスの言葉でしたっけ。人は知らずにはいられないんですよね。
- 「あの日、大樹は何をしたのか」
- なぜ夜中にこっそりと出かけたのか
- なぜパトカーから逃げなくてはならなかったのか
- トラックに激突するまで何をしていたのか
彼が何をして、なぜパトカーから逃げなくてはならなかったのかは終盤で明かされます。大樹の思いとともに・・・。
三ツ矢&田所ペアの掛け合い
刑事の三ツ矢&田所ペアが良い味出してました。田所の視点で描かれた三ツ矢は、掴みどころのない何を考えているのかわからない人物。
俺なんかいないみたいにふるまって、勝手にどっか行っちゃうし、なにを見てなにを考えてるのか大事なことは全然教えてくれないし。三ツ矢さんってみんなにそうなんすか?
田所の怒りが頂点に達してしまいました。でも確かに彼の気持ちもわかります。三ツ矢はひとりで行動して田所は置いてきぼりだったから・・・。
無視をしているつもりはありません。ほんとうです。ただ、僕にはまわりが見えなくなることがよくあるのです。わからないことや知りたいことにぶつかると、それ以外のことは考えられなくなるのです
きっと不器用なんだね、三ツ矢は。
この言い合いを経て、ぐっと相棒らしくなった2人。三ツ矢のキャラが良くて、もしシリーズ化されることがあればまた読みたいです。
・・・と思っていたらシリーズ化していました。
あの日、大樹は何をしたのか?|心の闇と真実
- 「あの日、大樹は何をしたのか」
- なぜ夜中にこっそりと出かけたのか
- なぜパトカーから逃げなくてはならなかったのか
- トラックに激突するまで何をしていたのか
終盤になり、謎がようやく明かされます。母親のいづみも、刑事の三ツ矢もずっと知りたかった真実が読者にだけ・・・。
生前の大樹の言葉にゾッとしました。
「どうしようもなくなにかをしたいっていう衝動に駆られたことある?」
大樹が亡くなった頃、もうひとり亡くなった男性がいたという事実を照らし合わせると、彼がその人を殺したという真実が浮かび上がってきます。
だから大樹は、パトカーから逃げたんだね。
殺人衝動という大樹の心の闇が明らかになるラストは後味悪い・・・。いづみは知らないままで終わったから、それが救いかな。
後味悪かったけど、最初から最後まで面白く読めて三ツ矢のファンになりました。おすすめです。