- 小説『水晶の鼓動 警視庁殺人分析班』あらすじと感想
- 不可解な謎と爆破事件
- 如月搭子の成長
- 深みのあるキャラ
少しだけネタバレあります。
その紅い部屋が意味するものは―
警視庁捜査一課十一係 如月搭子シリーズ『水晶の鼓動 警視庁殺人分析班』麻見和史さんの小説です。
『石の繭』『蟻の階段』に続き3作目。如月&鷹野ペアが大活躍でした。WOWOWドラマ原作小説。
以前書いた 「石の繭」 のレビューはこちら。
『水晶の鼓動 警視庁殺人分析班』あらすじ・評価
小さな女刑事・如月塔子
本の評価
おすすめ
かんどう
いがいさ
サクサク
【あらすじ】
真っ赤に染められた「赤い部屋」で殺人は起こった。小さな女刑事・如月塔子と相棒の鷹野は、捜査を開始するが・・・。
『水晶の鼓動』感想・レビュー
女刑事・如月搭子の成長を感じました。深みのある鷹野のキャラが良いですね。2人のやり取りは面白く微笑ましかったです。
ラッカースプレーの「赤い部屋」

殺人現場は真っ赤に染められた赤い部屋。ラッカースプレーが使われていました。猟奇殺人を思わせる現場ですね。・・・連続殺人へと発展していきます。
連続殺人の他に爆破事件までおこり、同時進行で捜査をしていく様子が描かれていました。
事件は次々と起こるから警察も大変ですね。爆発と殺人。どこかで1本に繋がるのかなとハラハラしながら読み進めました。
不可解な謎と爆破事件
捜査で浮かび上がる様々な謎。
- 赤いラッカースプレーで染められた屋内は何を意味しているのか
- 書棚から全ての本を取り出し、アルバムやノート、メモ、手帳、ノートパソコンを持ち去ったのはなぜか
- カレンダーの9月分を切り取ったのはなぜか
- 遺体を玄関先に放置したのはなぜか
- 被害者が見た映画『赤い絨毯』は事件に関係しているのか
切り取られていたカレンダーに書いた文字が判明します。そこには「図書館」の文字が書かれていました。
不思議に思った鷹野&如月ペアは麻布図書館へと向かいます。そこで思わぬ手がかりが手に入るのです。1枚のメモのような手紙でした。
T→K狐が騒いでいる。注意を。連絡は極力控えること。資料は問題なし。
謎が気になり一気に読んでしまいました。
時を同じくして爆破事件がおこります。日本革命的協同武装戦線のメンバーと名乗る者から犯行声明がありました。
搭子の成長と父の面影

この小説で1番こころ惹かれたのは 搭子の心理描写と彼女が成長していく姿でした。
いつも見守ってくれている父の面影があったんです。警視庁捜査一課の刑事だった父。搭子は父の意志を継ぎ警視庁に入りました。
本書のタイトル『水晶の鼓動』というのは、父親の形見である腕時計に関係しています。
正確に時を刻む時計と心臓の鼓動。
彼女は父の形見の腕時計をつけることで父が傍にいるような安心感を感じていました。そんな時、爆破事件を目の当たりにして腕時計が壊れてしまいます。
もう父に守ってもらうことはできないと感じた搭子。感情がわき起こってきます。「怖い」というごく当たり前の感情でした。彼女は今まで精一杯がんばってきたんですね。
一旦わき上がった感情は、そうそう消えるものではありません。
しかも彼女は1作目『石の繭』で爆発に巻き込まれるという恐怖を体験しています。その時の感情がよみがえり、犯人に逃げられるという大失態をしてしまうんです。
でも最後には立ち直る。成長したなぁと思います。
深みのあるキャラ
本作『水晶の鼓動』は 鷹野のキャラに深みがありました。マイペースな彼ですが 鋭く後輩思い。
搭子とのやり取りが面白くて顔が緩んでしまいました。
事件解決のために公安も会議に参加します。刑事部と公安部って同じ刑事でも目的が違い、折り合いが悪く描かれていることがほとんどですよね。
この小説もそうだったのですが、吉富刑事部長の発言で協力し合うようになります。
繋がる事件と結末
最後は全てが繋がり晴れ晴れとしました。悲しい事件。『石の繭』ほどの衝撃はなかったですが、搭子&鷹野ペアが捜査をする過程が面白かったです。
小さな彼女をこれからも見守っていきたいです。
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