- 東野圭吾さん『カッコウの卵は誰のもの』あらすじと感想文
- 遺伝子パターンと育成計画
- その才能は努力か遺伝か
- 父の苦悩と愛情
少しだけネタバレあります。
スポーツ遺伝子は誰のもの?
東野圭吾さんの小説『カッコウの卵は誰のもの』感想です。WOWOWでドラマ化されましたね。親子の絆を感じるスキー選手の物語です。主人公は土屋太鳳さん、父役は伊原剛志さんが演じていました。
スポーツと親子愛、さらには科学を混じえた物語です。
『カッコウの卵は誰のもの』あらすじ
その才能は努力か遺伝か―
「新世開発スポーツ科学研究所」はある計画を進めていた。そのためにスカウトした選手、アルペンスキー選手・非田風美とクロスカントリー選手・鳥越伸吾。やがて、その計画が重大な事件を引きおこす引き金となり・・・。
『カッコウの卵は誰のもの』ネタバレ感想文
カッコウって他の鳥の巣に卵を産み落とし育ててもらう習性があるそうです。
『カッコウの卵は誰のもの』は、そんなカッコウの習性を匂わせているタイトルですね。この物語で注目したのは、スポーツ遺伝子の分野です。
遺伝子パターンと育成計画

『カッコウの卵は誰のもの』で描かれているのは、才能があるとされたスキー選手たちです。それも遺伝子レベルで見て。
才能ってあったら嬉しいですよね。もちろん努力なしでは成功しないと思うけど。
「新世開発スポーツ科学研究所」に勤める柚木が進めていた計画が目を引きました。
遺伝子からスポーツに向いている人を見つけて育成する。
柚木はFパターンとBパターンという遺伝子の組み合わせを見つけ出します。優れた能力を持った子を発掘して育成する・・・。聞こえは良いけど様々な問題があるんですよね。
幸か不幸か、そんな遺伝子の組み合わせを持ってしまった2人の選手。1人はアルペンスキー、もう1人はクロスカントリーです。
- Fパターン・・・非田風美 (アルペンスキー選手) 視覚情報処理とボディバランスに優れている。瞬間的な状況変化への対応力もある
- Bパターン・・・鳥越伸吾 (クロスカントリー選手) 筋持久力や心肺能力が高い
その才能は、努力か遺伝か

その才能は、努力か遺伝か。
好きなことや自分がやりたいことの能力が優れていたら嬉しいですね。でも好きでもないのに才能があるとしたらどうだろう・・・。
ふたりの登場人物が印象的でした。非田風美と鳥越伸吾です。
Fパターンの持ち主・非田風美はアルペンスキーで才能を発揮します。トップスキーヤーだった父と一緒にオリンピックを目指して。彼女はやりたいことに恵まれて順調でした。
一方、Bパターンの持ち主・鳥越伸吾は、音楽が好きなのに断念しなければならないのです。才能があるという理由だけでクロスカントリーをやることに・・・。
才能ってのはさ、いわばカッコウの卵みたいなもんだと思う。本人の知らないうちに、こっそりと潜まされているわけだ
特に遺伝となると自分ではどうしようもないですね。好きで持ち合わせたものでもないし、まさに「カッコウの卵」です。
父の苦悩と愛情
『カッコウの卵は誰のもの』は、ミステリーというよりも親子愛に重点をおいたものになっていました。
明らかになる非田親子の血の繋がり。
風美と父の宏昌は本当の親子ではなかったのです。彼女は知らないけど、そのことで悩む父親の胸の内が苦しい・・・。
娘は誰の子か―。
出生に関係していると思われる上条に出会い、娘に話すことで救える命があることに思い至る。いろいろと複雑に絡みあっていました。
血の繋がりなんて関係ないと思ってしまうような・・・。確かな親子の絆を感じます。
才能はカッコウの卵だという伸吾の父の言葉が印象的でした。
才能は柚木のものでも会社のものでもない。本人だけのもの。
本のタイトルの答えが彼が言ったことばに表れています。才能は他人のためにあるものではないんですよね。
真実の行方と優しい結末
最後の方で風美の出生の秘密が明らかになります。
それと同時に解決する事件。・・・動機は優しさ半分、悲しさ半分と言ったところかな。
そのとき宏昌はどうするのか。真実を伝えるのか。結末は娘のことを考えた優しいものでした。



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