『希望の糸』あらすじ・ネタバレ感想文、解説|加賀恭一郎シリーズ|東野圭吾
- 『希望の糸』あらすじと感想文
- テーマ 「家族」 について
- 萌奈と行伸の苦しみ
- 松宮刑事の葛藤
- 【解説】タイトル『希望の糸』の意味
- 家族が再生される結末
少しだけネタバレあります。
死ぬまで、その糸は離さない
東野圭吾さんの小説『希望の糸』あらすじと感想です。加賀恭一郎シリーズ、松宮刑事が大活躍でした。
東野さんの小説は安定感がありますね。読みやすいし安心して読める。
泣いた。おすすめの1冊だよ。
『希望の糸』あらすじ
家族の物語
閑静な住宅街で喫茶店を営む女性・花塚弥生が殺された。捜査線上に浮上した常連客だった男・汐見行伸。災害で2人の子供を失った彼は 深い悩みを抱えていた。容疑者たちの複雑な運命に若き刑事・松宮脩平が挑む。
『希望の糸』ネタバレ感想文
『希望の糸』は、家族の物語です。
温かな気持ちがあふれてきて泣きました。大切な人を思う気持ちは尊いですね。
『希望の糸』テーマは「家族」
『希望の糸』は加賀さんの従兄弟・松宮刑事にスポットが当たっています。死んだと聞いていた松宮刑事の父親が生きていた!?
テーマは「家族」です。
様々な家族が描かれていました。思わぬカタチで発覚した花塚弥生の家族、汐見夫妻の家族・・・。
カギとなる人物は汐見夫妻の娘・萌奈。
汐見行伸、花塚弥生、綿貫と多由子。別々に描かれていた登場人物たちが萌奈を中心に繋がっていきます。
それぞれ相手を思いやる気持ちが伝わってきてジーンとしました。血の繋がりなんて関係ないんですよね。
家族の絆は強い。
そういえば、前作の加賀恭一郎シリーズ『祈りの幕が下りる時』は加賀さんの家族にスポットが当たっていました。
加賀恭一郎&松宮脩平コンビ
加賀恭一郎&松宮脩平のからみが好きです。
加賀さんは松宮の上司になっていました。ほんの少しの描写だったけど、鋭い推理で犯人を引っぱってきたのはさすがです。
加賀恭一郎シリーズ、ドラマでは阿部寛さんが演じていますね。
私が思い描く加賀刑事のイメージは違うんだけど・・・。小説の加賀恭一郎が好き。
萌奈と行伸の苦しみ
汐見夫妻は2人いた子どもを震災で亡くしていました。やがて不妊治療の末、体外受精で生まれたのが萌奈です。
待ち望んでようやく授かった娘。夫妻が彼女を大切に育てる気持ちはとてもよく分かります。
でも萌奈にしてみたら、両親の愛情は重かったみたい。
あたしは生まれた時から身代わりだった。二人の子供が死んで、パパとママが自分たちの悲しみを紛らわせるために作った子供。そうでしょ?
中学生になった萌奈。母親は亡くなっていました。父・行伸との暮らしにギクシャクする毎日です。
親子のすれ違いは悲しい。
行伸は家族に関する秘密を抱えて悩んでいたのです。弥生と共有し、綿貫と多由子をも巻き込んだ秘密。
やがて弥生が殺されてしまう悲しい事件へと発展していきます。
松宮刑事の葛藤
真実を知った松宮は悩んでいました。
他人の秘密を暴くことは正義なんだろうか。警察に、そんな権利があるのだろうか。
松宮が言った言葉を受けて「いい刑事になったな」と、彼を案じている加賀さんの姿が温かい。
最近、父親が生きていたと知った松宮刑事は「他人の秘密を暴くこと」と、自分を照らし合わせて悩んでいたのですね。
事件の裏に隠されていた真実と松宮の父親に対する複雑な思いが重なって、ため息をつきました。
でも悩んでいる姿は素敵だと思った。
悩む先には相手を思う温かい気持ちがあるからです。何も悩まずに淡々と仕事をこなすより、たくさん悩んで出した結果の方が重みがありますよね。
【解説】タイトル『希望の糸』の意味
『希望の糸』表紙のイラストは糸が描かれています。絡みながらも切れることなく、誰かと誰かを結ぶ糸。
タイトルに込められた意味が素敵でした。
たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せだって。その糸がどんなに長くても希望を持てるって。だから死ぬまで、その糸は離さない
大切な人と目に見えない糸で繋がっている。たとえどんなに糸が長くても(遠く離れていても、会えなくても)。
松宮刑事も見えない糸で父親と繋がっていたんだと思うと泣けてきました。
素敵なタイトルだね。幸せな気持ちになったよ。
家族が再生される『希望の糸』結末
一見バラバラだった人たちが繋がっていきます。それがわかってるから、東野圭吾さんの本は安心して読めるんですよね。
すれ違っていた家族が再生されていく様子は心地が良かった。
相手を大切に思う気持ちと、切れずに繋がっている希望の糸に温かな気持ちになりました。