『六番目の小夜子』ネタバレ感想文・あらすじ|呼びかけ芝居が圧巻!恩田陸の青春ミステリー小説
- 『六番目の小夜子』あらすじと感想文
- 「サヨコ」とは?
- 謎の転校生・津村沙世子
- 2つのカギと2人のサヨコ
- 圧巻だった呼びかけ芝居
ネタバレあります。ご注意ください。
そう、六番目のサヨコはあたしよ。
恩田陸さんの小説『六番目の小夜子』読書感想です。だいぶ昔に読んでまた再読しました。サヨコ、恩田さんのデビュー作だったのですね。
ミステリー感がある青春小説だった。
内容を全く覚えておらず、ドラマを見て読みたくなりポチッと。ドラマと小説は別物でしたが、どちらも面白かったです。
『六番目の小夜子』あらすじ
「サヨコ」とは?
津村沙世子―とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。
『六番目の小夜子』ネタバレ感想文|ミステリー・青春小説
『六番目の小夜子』はミステリー感がある学園青春小説でした。
伏線の回収はなく、謎は謎のままという・・・。デビュー作だからか荒削りの印象は否めないけど、それでも面白かったです。
学校という特殊な場所で繰り広げられる「サヨコ」。もはや行事と化しているそれはいったい何なのか。
結局、何だったのかよくわからなかったな。
今年は「サヨコ」の年|「サヨコ」とは?
一番目を引いたは、生徒たちの間でひっそりと行われていた行事「サヨコ」です。
- 3年に1度必ず行われる
- サヨコは、前回のサヨコがいる代の卒業式当日に引き継がれる
- サヨコは始業式の朝、自分の教室に赤い花を活けなければならない
- サヨコは、自分がサヨコであることを知られてはならない
不気味な感じなんだよね。
一種のゲームと言えばそれだけだけど、ゲームの範疇をこえたものになっている雰囲気が怖かったです。3年に1度の行事。
なぜこんなしきたりを守り続けるのだろうか。いちばん最初の『サヨコ』は、いったいどんなつもりでこんなことを始めたのだろう
カギと手紙を受け取った人が今年の「サヨコ」です。疑問を持ちながらも、カギを受け取った生徒は「サヨコ」を演じずにはいられないんですよね。
「サヨコ」が何をするのかというと、まずは始業式の朝に自分の教室に赤い花を活けます。それから学園祭で一人芝居を演じなければいけません。
「サヨコ」ゲームに失敗すると、その年は良くないことが起きるとか・・・。
こういうのって、「学校」という特殊な環境だから続けられていたのかもしれませんね。子どもたちで構成される外から閉じた閉鎖的な世界です。
ちょっと怖くてホラー感があるけど、全体的には青春小説に重点をおいた物語。・・・学校って楽しかったと思いを馳せました。
謎の転校生・津村沙世子
前半は、謎の転校生・津村沙世子の存在が不気味さを増していました。
進学校から移ってきた彼女は、美人で何でもできそうな雰囲気の女の子。サヨコという名前が目を引きます。しかも、
「そう、六番目のサヨコはあたしよ」
・・・なんて言うのだからヒヤリとします。彼女が今年のサヨコ!? 転校生なのに、なぜ「サヨコ」行事を知っていたのか。今年はいつもと違うようです。
彼女はカギを持っていたんだ。
2つのカギと2人のサヨコ
今年の「サヨコ」は、複数人存在していました。カギも手紙も2つ。
前回の「サヨコ」から引き継いだ正当の「サヨコ」は加藤です。でも加藤が不登校になり、カギは秋に託されることに・・・。
ドラマでは山田孝之さんが演じていました。小説『六番目のサヨコ』のヒロインの一人です。
もう一つのカギを持つのは津村沙世子。なぜか担任の黒川先生から託されていたのです。
ということは、今年のサヨコは秋と沙世子ということになるんだね。
なぜ黒川先生が沙世子にカギを託したのかは、よくわかりませんでした。・・・謎すぎる先生。
『六番目のサヨコ』は、前半は雅子と由紀夫がヒロインのような感じで進みます。でも物語が進むにつれて秋と沙世子にスポットが当たるんですよね。
全体を通してみると、主役は秋と沙世子なのかなと。ちょっと不思議な気分を味わえます。
『六番目の小夜子』呼びかけ芝居が圧巻だった
一番面白かったのが、学園祭で全校生徒が行った呼びかけ芝居でした。
ちなみに、呼びかけ芝居とは全校生徒が区切られたセリフをリレーのように読み上げていく方式です。
芝居のタイトルはズバリ「六番目の小夜子」。
「試しにそこの教室を覗いてごらんなさい」「何が見えますか」「たくさんの同じ大きさの机と椅子」「どれも同じ形をしているがらんとした四角い部屋」「この部屋は何」「そう、これは容れ物なのです」「何を入れるのでしょう」
これはほんの一部ですが、何となくゾワリとしてきませんか?
「何を入れるのでしょう」のあとは「そう、人間です」と続く。
ここ、ゾワゾワゾワーとしました。学校が恐怖の「容れ物」と化した瞬間。圧巻です。すごすぎて息が止まりました。
このあと「サヨコ」展開になって、ますます目が離せなくなるよ。
恩田さんはこういう舞台描写が上手いんですよね。『チョコレートコスモス』や『蜜蜂と遠雷』を読んだときと似た興奮を味わえました。
今までアクが強い(←良い意味で)のが恩田作品の魅力と思っていました。でも、こういう舞台で描かれるスピーディーな展開や心理描写も恩田作品の魅力です。
読者を物語に引き込む力がすごいや。
『六番目の小夜子』は学生時代に戻りたくなる小説
雅子と由紀夫、秋と沙世子を見ていると、もう一度学生時代に戻りたくなりました。・・・青春ってやつですね。
ミステリー感を伴いながらも、どこかほっこりする。読み終わってみれば、「サヨコ」ゲームも良き思い出です。
『六番目の小夜子』、面白かったよ。