- 恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』簡単なあらすじと感想
- 恩田陸さんが描くピアノの音
- 芳ヶ江国際ピアノコンクールと登場人物
- 「春と修羅」のカデンツァ
- 風間塵は「ギフト」か「災厄」か
- タイトルの意味
少しだけネタバレあります。
素晴らしき音楽に満ちているこの世界。
恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』感想文です。面白いという言葉では足りないくらい面白かった。恩田さんの『チョコレートコスモス』のピアノ版と言ったところですね。
『蜜蜂と遠雷』は、ピアノコンクールが舞台のお話です。
それぞれの才能や音楽にかける思いが描かれていて胸が熱くなりました。恩田さんが描く「音」が素晴らしかったです。
『蜜蜂と遠雷』簡単なあらすじ・評価
興奮が止まらない!!
私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
『蜜蜂と遠雷』ネタバレ感想文
読者を引き込む圧倒的な文章力を感じました。
ピアノが関係した本で、これまで読んだものは宮下さんの『羊と鋼の森』、中山さんの『さよならドビュッシー』です。2冊ともそれぞれの作家さんの持ち味がでていて楽しく読めました。
『蜜蜂と遠雷』は、その2冊とは違う雰囲気でド肝を抜かれました。恩田さんが描くピアノの音です。
恩田陸さんが描くピアノの音がすごい!

コンクールで風間塵が奏でたドビュッシー「版画」、三曲目の「雨の庭」の表現がステキでした。
こんな音の表現もあるんだ。恩田さんならではの「音」ですね。
音から情景が伝わってきました。みんなと演奏を聞いているような、本の登場人物と「音」を共有している気持ちになるんです。それがとても心地良い。
たくさんの曲と、たくさんのイメージが描かれています。もっとクラシックに詳しかったら、より楽しめたのかもしれません。そう思うと、少し残念な気持ちになりますが・・・。
一気読みしちゃったけど、本に出てくる曲を聞きながら読んでも楽しめそうです。
芳ヶ江国際ピアノコンクールと登場人物
優勝を手にするのは誰か?
舞台は芳ヶ江国際ピアノコンクール。エントリーから始まり、第一次予選、第二次予選、第三次予選と続き本選へ・・・。個性的な登場人物たちでした。
- 風間塵・・・今は亡きユウジ・フォン・ホフマンを師としていた。
- 栄伝亜夜・・・小さな頃から天才少女とされてきたが、母の死をきっかけにして舞台から姿を消した。
- マサル・カルロス・レヴィ・アナトール・・・何をやっても様になる。
- 高島明石・・・働きながら必死に練習をこなす。
お気に入りは亜夜です。母が亡くなり、ピアノの舞台から姿を消した天才少女。様々な想いが描かれていて泣きそうになりました。
彼女の演奏は1番最後。他の3人と出会い、彼らのピアノを聞くことで成長していく姿が眩しかったです。
エントリーから本選まで彼らの演奏を次々と読んでいくのだけど、全く飽きずに読めました。登場人物たちと一体感が味わえるんですよね。
「春と修羅」のカデンツァ

第二次予選の「春と修羅」のカデンツァが好きです。4人それぞれの「春と修羅」が楽しめます。
カデンツァとは・・・自由に即興演奏できる部分のこと。
風間塵は「ギフト」か「災厄」か
本書に出てくる重要な人物・風間塵。彼がキーマンになってきます。今は亡きホフマンに師事していました。
彼は劇薬。彼の演奏を体験すれば自ずと分かる。「ギフト」にもなり得るし「災厄」にもなり得る少年です。
どういうことか気になりますよね? 実際に読んで「体験」してみて下さい。
興味深い表現。
少年のピアノの演奏を聴いて「恐怖」や「ゾッと」などの言葉が頻繁に出てくるんです。
美しいピアノ演奏のはずなのにこの表現は面白い。
得体の知れないものを目の前にした時のような気持ち。この表現だけでも少年は天才なんだなと分かります。思わず背筋を伸ばしてしまいました。
『蜜蜂と遠雷』タイトルに込められた意味
『蜜蜂と遠雷』というタイトルには2つの意味があります。
1つはそのまま風間塵を表しています。
養蜂家の父を持ち、観客からは蜜蜂王子と言われているジン少年。
第三次予選の直前に遠雷を聞き、天国にいるホフマンに語りかけるように弾くピアノはすごかったです。亜夜にとって彼は紛れもない「ギフト」となり得ました。
もう1つは「音楽に満たされた世界」です。
こんな文章がありました。
明るい野山を群れ飛ぶ無数の蜜蜂は、世界を祝福する音符であると。そして、世界とは、いつもなんという至上の音楽に満たされていたことだろう
遠雷のように世界はあらゆる音楽で満たされています。雨や風の音、誰かが歩く音、汽車の音、ご飯の炊ける音・・・。
世界に音が満ちているから安心して生活していける。もしも、それが消えてしまったら・・・と思うとゾッとしました。
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