「エトワール」感想文|エドガー・ドガは、なぜバレリーナを描き続けたのか?|原田マハ
- 『エトワール』あらすじと感想文
- エドガー・ドガと踊り子
- 印象派・女性画家、メアリー・カサット
- 彫刻作品 「十四歳の小さな踊り子」
- エトワールに込められた思い
少しだけネタバレあります。
バレリーナを描き続けたエドガー・ドガ
原田マハさんの短編小説『ジヴェルニーの食卓』より、エドガー・ドガを描いた』エトワール』のレビューです。
バレリーナの画家。
『ジヴェルニーの食卓』あらすじ
画家たちの物語
マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、モネ。新しい美を求め、時代を切り拓いた巨匠たちの人生が色鮮やかに蘇る。『楽園のカンヴァス』で注目を集める著者が贈る、“読む美術館”。
エドガー・ドガと踊り子
『エトワール』で描かれている画家、エドガー・ドガ。初めに彼の絵を紹介します。
エドガー・ドガの絵はバレエを描いたものが多い。それもかなり緻密・・・というか、立体的で今にもバレリーナが絵から出てきて踊りだしそうな雰囲気です。
踊り子たち、ひとりひとりの動きが細かいね。
舞台だけでなく、その裏側や練習風景も描いているのを見ると、よほどバレエが好きなんだと感じました。
エドガー・ドガの絵を、原田さんはこんな風に書いています。
あまりのリアルさに、見てはいけないものを見てしまったような気分になる。
本当にリアルですよね。ここに書かれていることがよく分かります。マジマジと絵を見てしまうけど、その後に少し後ろめたい気持ちにもなったりする。
ドガはなぜここまで踊り子たちを描き続けたのか?
『エトワール』を読むと、それがよく分かるんです。
「エトワール」 ネタバレ感想文
エドガー・ドガについて、読後は検索して絵を眺めました。
絵画って、何も知らずに見るのと、背景や作家の思いを知ってから見るのとでは大違いだよね。
今まで原田さんのアート小説を何冊か読んできたけど、本当に素晴らしいです。
印象派・女性画家、メアリー・カサット
『エトワール』ではエドガー・ドガの他にもう一人、女性画家がでてきます。
メアリー・カサットです。
ドガの友人。彼と彼女は恋人だったのか? ・・・定かではないけど、『エトワール』ではお互いを認め合う友人としての親交が描かれていました。
女性画家って珍しいよね。当時はあまりいなかったから、彼女はそうとう苦労したようだよ。
メアリーの絵も見てみました。母と子が描かれているものが多く、眼差しに温かな印象を受けます。
彫刻作品 「十四歳の小さな踊り子」
ドガの作品に彫刻 「十四歳の小さな踊り子」 というのがあります。
彼は絵だけでなく、彫刻も作っていたんだ。
踊り子にポーズを取らせて何枚もスケッチしていたエドガー・ドガ。それだけでは不十分と思い、絵を描くためのマケット (模型) として作ったのがきっかけでした。
その彫刻 「14歳の小さな踊り子」 をめぐり、メアリーの葛藤が描かれています。
気になるのは彫刻のモデルになった少女。進んでモデルになる踊り子と彼女たちを描くドガには、さまざまな思いがありました。
エトワールに込められた思い
『エトワール』とはフランス語です。どんな意味があるんだろうと検索してみました。
何ごとにも1番になれるのは気持ちの良いことです。
でもそこまでの道のりは辛く長い。血のにじむような努力をしなければならない時もあります。ここで描かれている踊り子たちのように・・・。
なぜ踊り子たちは、進んでモデルになるのか。
それが1番になることへの近道だからです。有力者の愛人になって、たっぷりとお金をもらう。彼女たちは必死。
必死なほど美しく見えるものだよね。
本書を読んだあとに、ドガが描く彼女たちを見ると感慨深くなります。優雅だけど、どこか力強さも感じました。
踊り子たちと芸術家は同じ。ひょっとしたらドガは、彼女たちに自分を重ねて見ていたのかもしれません。
だから踊り子たちを描き続けた?
真相はわからないけど、ドガの描くバレリーナの絵を見ながら本人に聞いてみたくなりました。
「瞬間」 を描きとる画家たち
原田マハさん『ジヴェルニーの食卓』より、『エトワール』のレビューでした。ひとつ感じたことがあります。
画家という人は 「一瞬」 や 「瞬間」 を描きとることに長けているということ。
だから彼の絵は躍動感を感じるんだね。
『エトワール』で描かれている画家、ドガだけではありません。『美しい墓』のアンリ・マティスもそうです。後のお話に登場するセザンヌ、モネもみんな 「瞬間」 を描きとることに熱心でした。
「一瞬」 を逃さず捉える視線、そしてそれを正確に描けるのは天才です。『ジヴェルニーの食卓』は、その 「一瞬」 に情熱を捧げる画家たちの物語でした。