『ジヴェルニーの食卓』あらすじ・ネタバレ感想文|クロード・モネ「睡蓮」|原田マハ
- 『ジヴェルニーの食卓』あらすじと感想文
- クロード・モネ 「睡蓮」
- 2つの家族
- ブランシュから見たクロード・モネ
- オランジュリー美術館 「睡蓮装飾画」
- 一瞬とて、同じ風景はない
少しだけネタバレあります。
私のアトリエは、この空の下
原田マハさんの短編小説『ジヴェルニーの食卓』感想文です。1話ずつレビューを書いてきました。表題作 「ジヴェルニーの食卓」 が最後になります。
ラストを飾るのはクロード・モネ。
睡蓮の絵が有名だよね。この小説の表紙にもなってるよ。
『ジヴェルニーの食卓』あらすじ
画家たちの物語
マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、モネ。新しい美を求め、時代を切り拓いた巨匠たちの人生が色鮮やかに蘇る。『楽園のカンヴァス』で注目を集める著者が贈る、“読む美術館”。
クロード・モネ 「睡蓮」
モネと聞くと、思い浮かべるのは睡蓮を描いた風景画です。有名な絵画ですね。
学校の教科書だったかな。初めて目にしたときは、きれいと魅入ってしまった記憶があります。
暖かなひだまりの中に描かれた睡蓮を見ていると、気持ちまで優しくなる。
モネの家 (フランス、ジヴェルニー) の庭の睡蓮なんですね。原田さんの小説を読んで初めて知りました。
「ジヴェルニーの食卓」 ネタバレ感想文
『ジヴェルニーの食卓』はモネの絵が身近に感じられる小説でした。
2つの家族の物語だよ。
2つの家族
『ジヴェルニーの食卓』は2つの家族が描かれています。
モネと妻・カミーユの家族と、彼を支えるエルネストと妻・アリスの家族です。
全く接点のなかった2組の家族がモネの絵を通して知り合い、一緒に暮らし、恋に落ちる・・・。モネとアリスは結婚をします。
くっついたり離れたり、家族になったり・・・。その中で支え合う姿に感動した。
ブランシュから見たクロード・モネ
『ジヴェルニーの食卓』は実話を描いた小説です。
人物像はもちろん原田さんの創作。ネットで検索しながら読み進めていくと、これまでの3話と同様、実話に沿ったものになっていました。
ブランシュや、彼女の母・アリス (後にモネと結婚する)、友人のジョルジュ・クレマンソーなどの登場人物も実在するし、モネが白内障になったことも・・・。
ブランシュや、彼女の母・アリス (後にモネと結婚する)、友人のジョルジュ・クレマンソーなどの登場人物も実在するし、モネが白内障になったことも・・・。
『ジヴェルニーの食卓』は、モネの義理の娘・ブランシュの視点で描かれていました。
現時点のモネを見つめる彼女と過去の回想。ところどころこれはいつの話?と混乱したけど、彼を見続けたブランシュの想いが熱い。
私のアトリエは、この空の下
モネの言葉が印象的でした。アトリエというと部屋の中のイメージでだけど、彼のアトリエは空の下。素敵ですよね。
モネと聞くと、思い浮かべるのは睡蓮の絵。風景画のイメージが強い画家。
オランジュリー美術館 「睡蓮装飾画」
モネの睡蓮装飾画のために建てられたのがオランジュリー美術館です。完成は1927年でモネの死後。
「睡蓮」 を描いている頃のモネが書かれていました。なかなか筆が進まずに、期限が迫るなか白内障にかかったり・・・。
周りの人の支えがあり、手術をして、また絵を描きはじめた彼。みんなに愛されていたのですね。
原田さんの小説は愛がある。
一瞬とて、同じ風景はない
モネのことばが印象的でした。
目覚めて、呼吸をして、いま、生きている世界。この世界をあまねく満たす光と影。そのすべてを、カンヴァスに写し取るんだ
光と影。そのすべてをカンヴァスに写し取る。・・・力強いことばに圧倒されます。
妻・カミーユが亡くなってから、モネは外に出掛けなくなりました。でもブランシュに引っ張られるようにして久しぶりに外の景色を見る。
自然って一瞬なんだよね。雲も水も空気も光も影も一瞬先には同じでは有り得ない。
この一瞬一瞬が尊く思えました。すべてをカンヴァスに写し取りたいと思う彼の気持ちに共感です。
みんなでかこむ温かな食卓
食卓シーンが何度かでてきます。美味しそうなご飯のメニューとともに。印象に残ったところがありました。
モネと一緒に暮らしていたアリスやブランシュたちが、離れ離れにならなければいけない日の食卓シーン。
モネの温かなことばにジーンとしたよ。
別々の家族が、気持ちの上では1つの家族になった瞬間です。
やがてジヴェルニーに家と庭を作り、モネは晩年をそこで過ごすことに。庭の睡蓮を描きながら・・・。
小説を読んで絵画を鑑賞する
原田マハさんのアート小説『ジヴェルニーの食卓』は、小説を読みながら絵画鑑賞したくなる一冊です。
それぞれの画家の人生が垣間見えました。絵画にかける情熱も・・・。とても素晴らしい物語でした。
移りゆく「一瞬」が尊く思えたよ。