原田マハ「タンギー爺さん」あらすじ&ネタバレ感想文|リンゴの画家ポール・セザンヌ
- 『タンギー爺さん』あらすじと感想文
- リンゴの画家、ポール・セザンヌ
- おおらかなタンギー爺さん
- セザンヌの口ぐせ
- 印象に残ったシーン
少しだけネタバレあります。
どこまでも美を追求した画家、ポール・セザンヌ。
原田マハさんのアート小説『ジヴェルニーの食卓』。ポール・セザンヌを描いた『タンギー爺さんのレビューです。
リンゴの画家、ポール・セザンヌ。
『ジヴェルニーの食卓』あらすじ
有名画家の半生を描いた短編集
マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、モネ。新しい美を求め、時代を切り拓いた巨匠たちの人生が色鮮やかに蘇る。『楽園のカンヴァス』で注目を集める著者が贈る、“読む美術館”。
リンゴの画家、ポール・セザンヌ
リンゴの画家とも言われるポール・セザンヌ。リンゴをモチーフにした絵は60点ほどあるようです。
白いナプキンやお皿の上にたくさんのりんごとオレンジが描かれています。でもよく見ると、お皿、なんだか歪んでる?
原田さんの記述にこんな文章がありました。
あなたの絵の中のリンゴは、不思議にぺたっとしていて、それなのにこんもりやわらかく盛り上がってもいて、じいっとみつめるうちに、なんだか目を離せなくなってしまう
確かに、じぃっと見てると不思議な感覚になる。りんごに惑わされるというか・・・。
セザンヌは、さまざまな方向から見たモチーフを1番良い角度で描いているんです。・・・お皿が歪んで見えるのは、そこからみたリンゴが最も良く見える角度だから。
すべてはリンゴのために。
こんな描き方もあるんだと、びっくりしました。・・・おそるべし、セザンヌ。
『タンギー爺さん』ネタバレ感想文
ポール・セザンヌのリンゴに魅入ってしまいました。タンギー爺さんのおおらかさ、温かさを感じる1話です。
おおらかなタンギー爺さん
この1話は、タンギー爺さんの娘がセザンヌに宛てた手紙文で展開されます。
ジュリアン・フランソワ・タンギー
この時代の印象派画家にとっては、いなくてはならない存在。貧しい画家たちの絵と交換するかたちで絵具などの画材を提供していました。セザンヌにも、ゴッホにも・・・。
そのおかげでタンギーのお店は赤字続き・・・。家族の支えもあり、成り立っていたんだとしみじみします。
タンギー爺さんと言えば、フィンセント・ファン・ゴッホが描いたタンギーの肖像画が思い浮かぶ。
メインはタンギー爺さんだけど、背景に日本の浮世絵らしきものが描かれているのにも目がいきますね。
ゴッホを描いた、原田さんの『たゆたえども沈まず』にも彼が出てきました。『ジヴェルニーの食卓』の方を先に書かれているので、読む順番が逆だけど・・・。
『タンギー爺さん』のタイトルを見たとき、ゴッホを描いたお話なのかなと思っていました。セザンヌ・・・ってポール・セザンヌ?と意表をつかれた感じです。
セザンヌの口ぐせ
ポール・セザンヌ。リンゴの画家と言われたエピソードなども語られていて心が温まりました。その彼がたびたび口にしていた言葉があります。
リンゴひとつで、パリをあっと言わせてやる
まさにリンゴの画家。セザンヌの視点はすごい。
彼については、以前に原田さんの小説でお目にかかったことがありました。『デトロイト美術館の奇跡』。
油彩画「マダム・セザンヌ」が描かれています。ポール・セザンヌの妻・オルタンスを描いた絵でした。・・・その時はリンゴの絵をじっくり見ることなく読み終わってしまったのだけど。
今回『タンギー爺さん』で描かれたセザンヌを読むと、また違った発見があって面白いですね。
印象に残ったシーン
1番印象に残ったのは、周りの人たちが彼について語っているシーンです。
それを読むと、ポール・セザンヌって偉大な画家だと感じました。自分のことのように嬉しくなります。
リンゴが最もよく見える角度を丹念に描いたセザンヌ。この手法は高く評価されているんですよね。
まさに彼だけの表現だ。
ゴッホもセザンヌを高く評価しています。彼の絵は、今までの印象派画家とはひと味違う雰囲気を持っていました。
リンゴの絵からも伝わるように、モチーフの美に徹底的にこだわっているんです。
飽くなき美の追求
原田マハさん『ジヴェルニーの食卓』より、『タンギー爺さん』のレビューでした。
画家の視点は熱く鋭いです。ポール・セザンヌはどこまでも美を追求し続けた画家なんですね。それもそのモチーフの本質の美です。
リンゴはリンゴ以外の何ものでもなく、でもリンゴゆえに美味しく美しい。
角度を変えても本質は変わらないけど、美しさって見る角度で変わってくる。モノでも人でも。