『ダブル・ファンタジー』あらすじ&ネタバレ感想文|すれ違う男女とファンタジーの結末|村山由佳
- 『ダブル・ファンタジー』あらすじと感想(ネタバレあり)
- 恋する気持ちについて
- ジョン・レノン&オノ・ヨーコの「ダブル・ファンタジー」とタイトルの意味
少しだけネタバレあります。
男女がそれぞれ見ているものはまったく別の幻想―。
村山由佳さんの小説『ダブル・ファンタジー』感想です。複雑な読了感。読むのに時間がかかってしまいました。
共感はできなかったけど深い小説。
久しぶりに恋愛小説をよんだ。
『ダブル・ファンタジー』あらすじ&登場人物(キャスト)
すれ違う男女を描いた官能の物語
35歳、脚本家の奈津は 尊敬していた彼に誘われ浮気をしてしまう。もう後戻りはできない。これから先、どれだけ恋愛ができるのか。そのためなら誰を傷つけようがかまわない―。
WOWOWドラマで映像化された『ダブル・ファンタジー』。主な登場人物&キャストをまとめました。
小説『ダブル・ファンタジー』感想 (ネタバレあり)
『ダブル・ファンタジー』、言葉の表現が美しかったです。
官能小説(?)って、初めてよみました。4分の1くらいのところで読むのを断念しようと思ったのだけど・・・。
他の人はどんな評価をしてるのか気になり、レビューを読んでみると評価はみごとに真っ二つ(←Amazonです)。
読むのをやめようと思いつつもズルズルと・・・全部読んじゃった。やめられなくなる魅力というのがあるだよね。
共感はできなかったけど・・・
残念ながら、誰ひとりとして登場人物が好きになれませんでした。
主人公の奈津をはじめ、夫の省吾、友だちの杏子、そして奈津と恋愛関係になる男たち。
次々と浮気 (恋?) をくり返す彼女の気持ちも共感できません。友だちの杏子にしてもあまり人間味が感じられなくて・・・。
もしかしたら、1番恋愛にかまけていた時期に読んでいたら、また違った感想になったかも。
そして志澤がキモイ(←思わず本音が出てしまいました)。キリンに似た岩井も。
前半は志澤とのメールのやり取りで進んでいきます。メールの言葉づかいから彼を想像するのだけど、どうしてもお爺ちゃんを連想してしまう・・・。カッコ良いオジサマではなく。
でも奈津の恋の行方が気になり読むのをやめられません。
読み進めるうちにだんだんと面白くなってくるから不思議なんだよね。
奈津に共感はできないけど、気になってしまうんです。彼女のことが痛々しく思えてしまうからかも・・・。
浮気から始まる「恋」
『ダブル・ファンタジー』は、浮気から始まる「恋」を描いています。
不倫ともいう。夫の省吾がいながら奈津は志澤と恋をし、岩井、大林と、捨てられ捨ててをくり返す・・・。
恋、なんだろうね。それでも。
人を好きになる気持ちはどうしようもない感情です。そして一旦好きな人ができたら最後、前の彼を好きだった気持ちは色褪せていくんです。
奈津の夫・省吾に魅力は感じなく、別れを切り出されてもしょうがない。
彼女が別れを告げるシーンが潔くて好きです。省吾にとっては唐突かもしれないけど、奈津は前から思い悩んでいたことで。
もうダメだと思った限界だったんだね。
『ダブル・ファンタジー』に込められた意味
『ダブル・ファンタジー』にはどんな意味があるのかと不思議な気持ちで読んでいたら、あるアーティストのアルバムがでてきました。
ジョン・レノン&オノ・ヨーコの「ダブル・ファンタジー」です。
このアルバムは聞いたことがないのだけど、彼らが名前を呼び合う曲は、過去に学校の授業で聞いたことがあって。ジョン・レノンというと、あの曲の印象が強く残っています。
タイトルにもなっている「ダブル・ファンタジー」を聞いてみたよ。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコが交互に歌っていて、会話をしているような雰囲気のアルバムです。それを本書ではこんな風に書いていました。
どれほど愛し合っていても男と女はじつはまったく別のものを見ているのだという真実を、あんなにもくっきり浮き彫りにしてみせたアルバムはなかったのではないか―
“どれほど愛し合っていても男と女はじつはまったく別のものを見ているのだという真実”というのに共感。
村山由佳さんの『ダブル・ファンタジー』で描かれている男女の「恋」は、まさにそんな感じです。同じものを見ているのは、ほんのひとときのことで あとはすれ違いばかり・・・。
奈津と志澤の恋愛に至っては、すれ違いしかなかったのでは?と思うほどです。
男女がそれぞれ見ているものはまったく別の幻想。
だからダブル・ファンタジーなんだね。切なくなるけど。
満たされない心
結局、奈津の心はずっと寂しいまま。夫がいても自分の思うままに恋愛をする。
でもそれって全く幸せな気がしません。恋愛体質な彼女でも、心が満たされてはいないような気がしました。
きっと大林ともそのうち別れるんだろうな。そして寂しさから、また恋をくり返す。・・・痛々しく思えてきた。
恋する気持ち
前半は気持ち悪さがあとをひいたけど、読みおわってみると、深い物語なんじゃないかと気づきました。
読み終わるのに時間がかかっちゃったけど、分厚いながらも読みやすかったです。複雑な心境にもなりました。でもそれはそれで良いのかなと。
奈津のようにはなりたくないけど、いつまでも恋をする気持ちは大切にしたい。